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マカネ  作者: いずみ
13/22

炎の剣13

王城・王の間


アルフレッドがアイを肩に担いで、王の間にやってきた。

腕を縛られて身動きの取れない王の隣に、乱暴に降ろす。


「きゃっ!」


「…アイ!無事だったか」


「…お父様!お父様もご無事でなによりです」


親子の再会も束の間、アルフレッドが口を開く。


「さあ、マカネの在処を教えてもらえませんか」


「マカネは私は持っていませんわ」


「宝物庫から持ち出したのはあなたでしょう」


「そうだとしても、あなたが乱暴に扱うから、どこかに落としたのではなくて?」


アイがプイッとそっぽをむく。

はあ、とため息をつくアルフレッド。


「言いたくないのなら仕方ありません。おおかた、一緒にいたあのお世話係が持っているんでしょう」


「少々面倒ではありますが、お世話係に聞きにいくとしますか」


「リンはわたしを守ってくれただけです!マカネとは関係ありませんわ」


アイが語気を強める。自分たちの命運は目の前にいる男に握られていると言うのに、一歩も引かないこの心の強さはさすが王族といったところか。


「まあ関係あろうがなかろうが、どっちでもいいんですが」


アルフレッドが窓から城の外を見渡しながら言う。


「…ほら、そうこう言っているうちに向こうからやってきたみたいですよ」


「!」


窓に駆け寄ると、城に向かってくるリンの姿が見えた。


少しホッとするその反面、リンだけ城にやってきたと言う事実に少なからず、落胆するアイだったが。


(リンも無事でよかった…ケイさんたちも本来ならわたしたちとは無関係の方ですし、これ以上巻き込むわけにもいきませんものね…ケイさんたちは無事なのかしら…)


「ケイなら来ないと思いますよ」


「!?」


アイが驚く。

アルフレッドはそんな様子を気に止めることもなく、昔話を始めた。


「ケイとは幼い頃からの友達でした。歳が近いこともあって、稽古の相手にちょうどよかったんです。昔のあいつはとても泣き虫で、稽古でも、私に勝てたことは一度もなかった。そんなあいつが、なんであなた方と行動をともにしてたかはわかりません。が、あいつでは私には敵わないでしょう。それはケイ自身もよくわかっていることだと思います」


「…全てお見通しですのね」


「ケイさんには、ボディガードをお願いしただけですわ。まさか、あなたとケイさんがそんな関係だったとは…」


「…そうですか」


「今の私を見ればがっかりするでしょうね、あいつも」


「なぜ?」


「自分で言うのもなんですが、私はケイの憧れだったようです。でも今は…」


「なにやってんだよ、って言われてしまうかもしれません」


「…少し喋りすぎました。とにかく私は私の目的を達成するまでです。そろそろここに着く頃じゃないですか?」


言い終わるのと同時に扉をドン!と勢いよく開けて、リンが飛び込んできた。


「…アイ様!王様も!よくぞご無事で」


2人に駆け寄るリン。アルフレッドが行手をはばんでいる。


「…おっと。きたばかりで悪いが、マカネ、持ってるんだろう?こちらに渡してもらえるかな」


「持ってるけど、先に2人を解放しなさい。マカネはそれからよ」


「…いいだろう」


解放したところで、リンが素直にマカネを渡すわけがないが、この小娘に自分をどうこうできるわけもない、とアルフレッドは考えた。


別に逆らおうがなにしようが、力ずくで奪えばいいのだ。


素直に渡すならそれでよし。そうじゃなくても面倒ごとが少し増えるだけ。


どう転んでもアルフレッドが優勢なのには変わらなかった。


リンの希望通りに2人を解放してやる。


「さあ、解放したぞ」


「わかってるわよ。これでしょ」


リンがポケットから袋を取り出す。マカネだ。アルフレッドにはわかった。オーラのようなものを感じる。


「えいっ」


窓に向かって袋を投げた。コツンとぶつかって転がる。


「なんの真似だ」


「あんたのことを信用してないだけよ。自分で拾って。あんたが剣を振るえば、わたしたちはなすすべがないわ。なるべく近づきたくないのよ」


「…ふ」


思わず笑ってしまった。アルフレッドからリン達のところまで、数メートル。この程度の距離、アルフレッドにとってはなんの意味ももたない。何か変なことをしても、一瞬でリン達を斬れる。


「わかったよ」


窓まで向かっていき、マカネを拾うためにしゃがんだその時。


窓の向こうからガラスを突き破って何かが飛んできた。


それはアルフレッドの顔面を直撃し、アルフレッドはその勢いで床を転がる。


「…よう、久しぶり。アル兄」


その声の主は、ケイだった。

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