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マカネ  作者: いずみ
12/22

炎の剣12

一旦頭を整理しよう。


アル兄がクーデターを起こす。

アイとリンが、おじさんを頼りに王都から逃げる。

アル兄がおじさんに協力を求めにくる。で、断られておじさんを襲う。

アイがアル兄にさらわれる。


まとめてみたはいいけど、どれも信じられない。

ほんとにアル兄の仕業だとして、なにが目的なんだろう。


「あ、そういえば、なんでアイはマカネを持っていたんだよ?持ち出した、とか言ってたけど」


「…これは王宮の宝物庫に保管されていたものなのよ。このマカネには言い伝えがあって、『救世のマカネ』と呼ばれてるの」


しまったマカネを取り出しながら説明してくれる。


「これを使える人ももう何十年と現れてないみたいだから、実際どんな力があるかはわからないんだけど」


「救世って言うくらいだからね、危機的状況でしか反応しないのかも」


「私も以前、それを手にしたことがあったが、なんの反応もなかったな」


「…そうでしたか。また状況が変われば違う結果になると思ったのですが」


「アルフレッドにも負けてしまったしな。力になれず申し訳ない」


おじさんが頭を下げる。


「いえ、そんな、こちらこそ…。身勝手なお願いをしてごめんなさい」


リンも慌てて頭を下げた。


「…なあ」


「?」


みんなの注目が集まる。そんなに見られるとちょっと恥ずかしい。


「アル兄はその救世?のマカネを手に入れたかったってのと、国を建て直すために、おじさんに協力を求めたかった。この2つの目的が偶然にも一致して、今回のことが起こったってわけだよな」


さっき、頭の中でまとめた考えを話す。


「…そうね」


「おじさんの協力は得られなかったけど、そのマカネを持ち出したと思われるアイをさらった」


「もし、アイがマカネを持ってないと知ったら?」


「…あ」


リンがハッとする。

そうだ。マカネを手に入れるためにアイをさらった。でも持ってないことがわかれば。


「…わたしたちをまた襲撃に来る?」


「そうかもしれないし、アイも危ないだろうな」


「…!!」


「…あんまりしたくない想像だけどな」


でも自分の親を襲ったんだ。もう昔のアル兄じゃないのかもしれない。マカネを持ってないことに逆上してアイを傷つけたりすることも、十分考えられる。


「どうしよう…」


しまった、リンが落ち込んじゃったよ。


「それはない。とは言い切れんが」


とおじさん。


「アルフレッドにその気があるのなら、あの場で私達を生かしておかずに、マカネだけを奪い取れば済む話であろう」


「そうか、わざわざさらったってことは…」


「そういうことだ。言葉は悪いが、アイ様にまだ価値があると、アルフレッドは考えているだろうな」


「じゃあ、早く助けにいかなきゃ!!」


リンは今にも飛び出しそうだったが。


「落ち着きなさい。マカネは私達のところにある。それはアルフレッドも、いずれわかるはずだ。もうわかっているかもしれないが」


おじさんがなだめる。


「もう一度、アルフレッドと接触するチャンスはある。あちらが来るか、こちらから行くか。そのどちらかでな」


「…なんでそんなことがわかるんですか?」


リンの問いにおじさんは、


「私達が生きているのが何よりの証拠さ。アルフレッドは誰も殺したりはしていない。様子はおかしかったが、根っこのところでは私達のよく知るアルフレッドなんだろう」


おじさんの言うことにも納得はできる。できるが…。


俺たちはアル兄がきっとそんなことをするはずがないと、心のどこかでそう思っている。むしろ間違いであってくれと。身内びいきの願望がはいっている。


だがリンはそうじゃない。アイのことが心配で仕方ないはずだ。俺たちみたいな楽観的なことは考えられるわけもない。さっき飛び出そうとしたように、今すぐにでも助けに行きたいんだろう。


「…なあリン」


「…なによ」


よし、決めた。


「アイを助けに行こうぜ。ついでにアル兄にも会って、話聞きたいしな」


そうは言ってもなんの手がかりもなし。アル兄に会えたところで、状況が良くなるかどうかもわからないけど。


「…本気?」


「まだボディガードの役目も終わってないし。じゃないと報酬、もらえないだろ」


「…でも…」


「もしアル兄が間違ったことをしているようなら、目を覚ましてやらんとな」


そうだ。アル兄に文句の一つでも言ってやらなきゃ気がすまない。これは身内である俺の役目だろう。おじさんは怪我人だし、マリは危ないところには連れて行けないしな。


「…ありがとう」


リンが涙ぐみながらぺこり。


「いいよ別に」


少し照れくさいのでそっけなく返したが。

女の子が困ってるんだ。助けなきゃ男じゃないよな。それにアル兄なら絶対助けるはずだ。


…とカッコつけたものの。


もしかしたらアル兄とぶつかり合うことになるかもしれない。そうなったら俺はちゃんと戦えるだろうか。


そもそも、アル兄には一度も勝ったことはないし、なんなら一撃も当てたこともない。しかも、おじさんですら負けてしまっている。


…話して解決すればそれが1番なのだが。まあマカネを渡して、自分たちの身の安全を保証してもらおう。


などとダサい解決策を考えているのであった。


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