炎の剣11
「話を戻すが、頼みを断ったものの、しつこく食い下がってな。それでも頑なに首を縦に振らないでいたら、アルフレッドが剣を抜いたのだ」
「あいつが本気で襲いかかってきたかはわからんが、私も息子と真剣を交える覚悟が出来てなかった。結局はアルフレッドの猛攻を凌ぎ切れず、押し切られてしまった」
そうだったのか。じゃあ家の中で見た人影は、やっぱりアル兄だったんだ…。
「てっきりもう死んだものと思っていたよ。タイミングよくケイ達がきてくれなければ、今頃どうなっていたか。本当にありがとう」
おじさんが頭を下げる。
「いいんだ、おじさん。おじさんが無事でよかったよ」
でも、アル兄は実家に火をつけて、証拠隠滅でもするつもりだったのか?
おじさんごと燃やして、クーデターのことが漏れないように。
やっぱりそんなやつアル兄とは思えない。
「でもなんで家が燃えてたの?」
マリはわかってないようだ。
「それはな、マリーーー」
俺が説明しようとすると、
「マカネの力だ」
おじさんが答える。俺の予想と違ったようだ。
「アルフレッドは炎のマカネを持っている。その力を自在にコントロールしていた。マカネの扱いに限って言えば当時の私以上だったな」
「それが国の宝のマカネってことか?」
「ああ。マカネにも様々なものがあるが、ああいう強力なのが、他の国にもあるんだ。この国がたまたま持っていたのが炎のマカネだったんだ」
「…炎剣アルフレッド」
リンがぽつりとつぶやく。なんだそれ。
「アルフレッドの二つ名よ。実際に戦っているところを見たことないからわからなかったけど、これは予想以上に厄介ね…」
頭を抱えている。
「王国最強の剣術に炎。どうしろっていうのよ…うぅ…」
リンの目から涙がこぼれだす。
「おい、どうしたんだよ」
「アイ様が…どうしよう…」
「リン、落ち着けって」
「落ち着けるわけないでしょ、アイ様はアルフレッドにさらわれたのよ」
…まあそうなるよな。あの時、家にいたのがアル兄ならリン達を襲ったのも、アル兄がやったことなんだろう。
信じたくはないけどな。
リンが話し始める。
「ケイ達が家から脱出する前に、アルフレッドが先に出てきたの。アルフレッドの狙いはわたし達の持ってるこのマカネだったと思う」
「お嬢様がマカネを持ち出したことをきっと知っていたのね。まあマカネ自体はわたしが持っていたから無事だったんだけど」
「でも、お嬢様を目の前でさらわれてしまったわ。わたしも抵抗したけど…」
ああ、それはさっきも言っていたな。でも気になることがある。
「ちょっと待ってくれ、なんでアル兄がマカネを狙ってるんだよ。それにマカネを持ち出したって。お前らいったいなんなんだ?」
「…そうね、まだ話してなかったわね」
「…お嬢様は…アイ様はこの国のお姫様なの。わたしはアイ様のお世話係よ」
「おひめさま?」
お姫様。この国の。アイが。なんか上品だったもんなあ。
「…頭が追いつかない」
いろいろなことがありすぎて、頭の整理ができない。
全くいったい、なにがどうなってんだ。