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策士(一般枠)は黒幕ムーブを愉しむ  作者: 御丹斬リ丸
黒幕lv1 正体不明の敵
4/5

小悪党


本当は主人公視点で時間を進めようと思ってましたが、黒服の連中が謎過ぎるので今回と次回までは三人称視点です。


 ユナは彩南町に来る前から体の震えが止まらなかった。念力能力者であるユナには未来を見る力があるではない。彩南町という魔境へ赴くことへの恐怖でもない。ただあそこに入ってはいけないと、自らの本能が、超能力が訴えるのだ。


 今までもこんなことがなかったわけではない。拠点が襲撃される前、強者に鉢合う直前、仲間が死ぬ前日……ユナの予感はよく当たる。

 それは仲間も理解している。だからユナがやばいといえば、仲間も注意するし、なるべく行き先を変更した。

そのおかげで怪我を負ったり面倒ごとに巻き込まれずにすんだということも多かった。


 しかし、今回はユナの忠告が聞入られることはなかった。昔から一緒にやって来た仲間のミカが行方不明になったのだ。

 これは仕方ないのないことだ。

 大切な仲間がいなくなったのなら、危険だとわかっていても助けに行きたいだろう。

 行方不明……とはいえど、全く何処へ行ったかわからないわけでもなかった。

 ただ2週間前に『彩南町に用が出来たので出かけてくる』と言い残し連絡一つ取れなくなったのだ。

 ユナの他、一部の人間は組織を抜けるための方便だろう。そう考えていた。

 だが、事態は変わった。組織の創始者あてにミカが捕らえられた姿を映した写真が送られてきたのだ。


 何の意味があるのか、送った犯人が何をかんがえているのかわからなかった。組織を抜けたわけではなく誘拐されたと判断した創始者はユナ達を連れ、ミカが連れ去られたと思われる彩南町へと向かった。


 ところで、多くの組織において脱退は許されないことだ。しかしユナ達が所属し運営するこの組織を抜ける……という行為が行われるのは珍しくない。

 とても緩いのだ。

 『怪我を負って一緒に戦えなくなったから』『考えが合わないと思ったから』『ついていけなくなったから』『これ以上加担するだけの気力が失せたから』という比較的共感できる余地のあるものから、『好きな人が出来たから』『就職するから』など大学のサークルだというわけじゃないのに軽々と辞めて行く。そういう理由でやめる人間を怒るメンバーも多い。恩を忘れたのか?この裏切り者がという。しかしユナが止める気はさらさらない。


 そもそも、ユナたちが所属する組織もギリギリ組織として形をとっているだけでリーダーがいなくなれば何も出来ない烏合の衆に過ぎない。


 メンバーは末端まで含めれば500を優に超えるが非行に走る人間を保護し構成する……という組織の目的を知っている人間はほとんどいないだろう。だからある意味、就職や受験でやめるというメンバーこそ、組織の目的とて成功した人間だと言えよう。


 別にその目的を隠しているわけではない。初期メンバーであるユナが目的を直接、創始者から聞いたのが組織の創立時のみであったが、それを隠しているわけではなかった。

 しかし、非行に走る人達を更生するという目的を能力者が集まる組織に憧れて加入してくる非行少年少女に話すことは容易ではない。

 この組織は表向きはカラーギャングのような体制をとっていながも中では、メンバーが社会復帰できるように活動している。

 家も稼ぎ先もない人間を支えるため、組織の上層部はどっぷり犯罪に手を染めてしまっているが、まだ軽犯罪しかやってない多くのメンバーは復帰できる。

 殺人、強盗などの犯罪に手を染めて来たが相手は犯罪者であったが為に心情は軽かった。


 そんな上層部の努力も知らず、末端のメンバーが片っ端から更生が出来なさそうな極悪人を勧誘して来ているのだ。

 最近は、組織内に壁のようなものを感じて来ていた。それはユナに限らず、初期メンバーとそれ以外の壁だ。

 組織に所属しながら、更生どころか徒を組んで非行に走るメンバーが増えてきた。明らかに暴走である。

 もともと、ふんわりした理想を掲げ寄せ集めで始めた組織であり、まともなサポートを行える人間も、それを支える組織体制もなかった。創始者がいてそれを支える幹部と初期メンバー、その下に無数のメンバーがいて、さらにその下に管理外の非行少年少女が集まるという巨大グループを形成している。どういうわけか最近加入する末端や後から入ってきた中核メンバーは創始者を妄信的に信じている節がある。彼らは創始者に関わる機会などほとんど無いはずなのに、カリスマがどうとか、言っているのだ。

 さらに初期メンバーしか組織運営に参加できないというのが不満だという声を拾い上げ最近、設立された幹部という役職には8割が妄信な信者なのだ。

 創始者の言葉に"はい"と言うだけなら参加する意味はないと思っていたが、ハブられるのを良しとしない……ということなのだろうと、理由をつけて言葉を飲み込んだ。


 組織は大きくなった。それなりに適当な理由をつけて社会復帰をする人間もいる。しかし、それ以上に犯罪に走るメンバーも増えてきた。放任主義の創始者はやりたい奴はやらせとけと言うし、初期メンバーは古参というだけで組織を運営しているが能力が強いわけでもない。

 幹部は力でのし上がって来たが初期メンバーを敬う様子はない。むしろ傲慢で創始者以外に従う様子が見られない。


 この組織は終わってる……ユナは最近そう思い始めていた。




 組織の創設者にしてユナ達を率いるリーダーである妙月という青年には壮大な目標があった。


 彼が組織を作り仲間を集めたのも一人では立ち向かえない強大な敵にたちむかう為であり、それあまりいうことを聞かない寄せ集めのような"烏合の衆"と言えど構わなかった。"ゴミも500もいれば戦力にはなるだろう"と考えているなど露知らず創始者である妙月を崇めているメンバーさえいる。


 誰にでも優しくそれでいて強い。

 別に非行に走っていたわけではなかった初期メンバーを勧誘する際には非行に走る人間を更生して社会復帰を促し少しでも世界を平和にしたいと"馬鹿馬鹿しい"夢を語った。

 大人という強力な相手に虐げられた……と考えているような非行少年には、大衆を守るために弱者が虐げられる世界を変えたいから協力して欲しいなどと言って勧誘して来た。

 ある時は家庭の事情で非行に走らざる終えなかった彼らの話を献身的に聞き問題を解決してきた。

 恩を売り、夢を売り、地道に努力をしてきた。

 義によって、憧れで、共感で、様々な理由で組織に加入する人間は増えた。


 全ては計画通りだった。

 どんな理由があろうと非行走るような人間は信用するつもりはなかったし、家庭の事情を理由にしているような人間も軽蔑していた。献身的に話を聞いていたフリをしてイライラしていたし、ちょっと優しくすれば妄信する彼らはちょろいとすら思っていた。


 仲間が増えれば、新たに仲間を増やして行くのも簡単だった。

 今まで妙月が行なってきたことを信者達がやるだけだ。

中核メンバーほどなるとわざわざ非行少年や少女の御悩み解決などは行なっていない。彼らは組織の資金を集めるために非行をやめられないゴミどもを率いて遠征に行くのだ。言った先で殺人、放火、強盗などを行う。もちろんそれを初期メンバーが知ることはない。ただ万が一それが初期メンバーに発覚した場合、出頭しないように犯罪者と称した無関係の人間の殺害ミッションをやらせていた。


 非行に走る人間は我が強い。人の言うことを聞かない、規律を破りそれをカッコいいとすら思っている。だから仲間を集めても利益がない限り、新たな仲間を勧誘するなどと言う面倒なことはしない。しかし、過去に妙月が救ってきた人間達は、違う。

 積極的に、わざわざ言われずとも遠方へ赴非行少年や少女に救いを導くのだ。それは仔羊を導く宣教師のようである。

 別に妙月に精神に干渉する超能力があるわけではない。必要なのは神格化されたイメージと暴力性だ。

 超能力者に必要なのは力ではない。ただの力は恐怖しか生まない。そんな人間が人をまとめられはしない。

 真に必要なのはマインドコントロールだと妙月は思っている。

 マインドコントロールというのはそう難しい話ではない。元々綺麗な人を使って行う化粧品のCMや、絵画の品評など人間が個々にもつ価値観を塗り替える技術だ。名画と駄作の違いは何だろうか、その差はない。誰がいいと言ったか、世間がどれだけ評価したかが絵画の価値を決める。世界的な名画だって他を探せばより上手い、綺麗なものはある。当時は駄作と言われても後世で評価される時だってある。大衆は世間の素晴らしい絵だという評価に流され、それが素晴らしい絵だと感じる。


 妙月が行なっているのも同じである。

 子飼いの信者に妙月自身の逸話や伝説、素晴らしさを噂として流す。問題を起こしそれをささっと解決する。当てずっぽうで予言的なことを言っておき、事件が起きればそれを予言したと言う。

 馬鹿馬鹿しいがこれが上手く行った。

 周りが素晴らしいと言っているから素晴らしいと言っておくかと思っていた末端の人間もその環境に慣れる内本当に素晴らしい気すらして来ていたのだ。

 自分の所属する組織の上層部が馬鹿より、多少無理があっても凄い方がいいと思う。そんな心理もあったかもしれない。自分がそれだけ凄い組織にいる。というアドバンテージか。それとも他の組織へのマウント取りか。


 初期メンバーは組織を支えてくれているが創始者の意見を前面に聞くことはない。だから情報統制を行って末端が勝手に暴走していることにした。


 こうして組織は非行少年少女を更生する慈善団体から妙月という現人神(あらひとがみ)を讃える宗教団体と化していた。


 慈悲に溢れ、未来を予見し、社会に見放された人間を救ってきた素晴らしい人間。そんなイメージは妙月が自作自演とマインドコントロールで巧みに作り上げた印象に過ぎなかった。


 彼の本当の姿を知るものは殆どいない。知る人はいたとしても自作自演をやらせている信者以外は生きてはいない。

 慈悲深く誰にも優しい、心清らかであるというイメージ像を崩さないため、嘘を見抜く能力者や心を読むという天敵を処理してきた。

 テレホート能力という力は凄まじい。距離を関係なく移動する。もちろん技量は必要だし見えない地点に飛ぶことは出来ない。出来ないわけではないがはるか上空に転移してしまったり宇宙に投げ出されてしまう場合だってある。

もちろんそれは極端な話でありふつうに能力を使う分には壁の中や宇宙へ行くなどということはありえない。

 しかし初めて宇宙旅行をしたテレポート能力者だったというがそれは、宇宙を目指してテレポートしたからであり惑星が移動しているからテレポートした地点がずれて宇宙に投げ出されることは現状起きていない。

 こう行った科学では証明できない謎の修正力が"超"能力と言われる理由である。


 テレポートは信号待ちをしなくていい、遅刻しそうでも目的地に一直線。交通手段無しで旅行できると羨まれる能力だが悪徳非道、冷静冷血な妙月という男は思いつきもしないで能力の悪用を行なってきた。


 それは殺人である。あるいは粛清か。

 一般的に知られていることではテレポート能力は本人だけが移動する能力と思われているが厳格には違う。

 "本人しか"移動できないのだとすれば服は着ていたら移動できないし、そうなるとテレポーターは皆、裸じゃないと能力を使えないことになる。もしそうだとしたら変態である。

 だがそうではない。服を着ていてもテレポート出来るのだ。なら荷物や仲間を運べないはずがない。

 そう……手を握っていたり近くにいたりすれば仲間も一緒にテレポートすることができるのだ。

 妙月はまだ手を触れなければテレポートさせることはできなかったが味方だけをテレポートさせることもできるようになっていた。


 これは組織の仲間を遠方へ派遣する際に使っていた方法だが彼は、邪魔になった仲間を呼び出し人の目がない場所で上空にテレポートさせ殺してきた。

 謎の落下死。

 どうせ上空から落とせば助からないのだ、助かるように人間なら最初からテレポートさせない。


 危険地帯に突っ込ませて殺す。毒殺する。事故に見せかけて殺す。嘘の情報を掴ませて諜殺する。

 今まで作り上げてきたイメージを崩すような行動をする人間、妙月を嗅ぎまわる人間、真の目的を知る人間。それらを粛清してきた。

 ユナは組織がうまくいってないだとか、末端が暴走していると思っていたがそれは間違った認識であった。

 妙月は末端を暴走させているのだ。

 より仲間をたくさん集めるため、ネズミ式にこの組織の"良さ"を伝え信者を着々と増やしているのだ。

 ユナ達は初期メンバーでありながら長らく組織を支えて来たというのに全くと行っていいほど、妙月に信用されていなかった。


 信用されていないどころか、そろそろ邪魔になって来たと感じ、直々に粛清するため彩南町へ来ていたのであった。


なんだこの小説は……人格破綻者しかいないのか……

あ、長いので切りました。次回も続きます。


おまけ





※if ストーリーは本編とは関係ありません。

if 黒服の男女たちがtrpgの探索者だったら。

(道の脇から飛び出して道を塞ぎように広がるシーンから)


KP:敵対する組織の人間思われる白服と無関係と思しき男がいます。どうしますか?

PL1「無関係と思しき男がどんな様子か確認できますか?」

KP:えー、ではアイデアか目星で振ってください。

PL2「あ、どっちも初期値なんだが」

PL1「おま、何しに来たんだよw」

KP:それではダイスロールお願いします。

(コロコロ)

PL1→成功

PL2→失敗

PL3→失敗

PL4→成功

PL5→クリディカル

PL6→成功

KP:えーでは、失敗した2人は、何もわかりませんでした。

成功した皆さまは、その男が30後半の男で丸腰、リュックを背負っていることがわかります。

クリディカルだったPL5にはリュックの横ポケットに入った長いレシートが見えます。

PL5「買い出しか?」

PL3「武器はリュックの中かと思ったけど食べ物とか入ってのかしら」

KP:何かしたいことはありますか?なければこのまま白服の男と戦闘処理に入りますが……。

PL1「俺はこのおっさんが怪しいと思う!KP心理学振っていいか?」

PL4「疑いすぎだろwww」

KP:ま、いいでしょう。

PL2「俺はどうせ成功しないからいいや」

PL5「まさか、お前……心理学も振ってないのかよ。」

PL4「俺は25もあるから大丈夫だ」

PL2「25……結構あ、って俺と同じじゃねえかw」

※心理学初期値(25)


(コロコロ)


KP:え、えー


PL2「なんだその反応」

PL5「あー……これ誰かファンブったな」

KP:(お前だよ!)……ではPL1、PL3、PL4には、 その男は急に飛び出してきた貴方達に酷く怯えているように見えました。

続いてPL6にはその男が状況が飲み込めておらずただぼーとしているようにみえます。

そしてPL5ですが、その男が酷く上機嫌であるように感じます。

PL5「これはファンブりましたわ……」

PL1「この状態で上機嫌はねぇよwww目、腐ってんのか」


KP:もう戦闘処理入って大丈夫ですかね?


PL1「KP!PL2におっさんを人質に取らせることは出来ますか?」

PL6「おっさんに恨みでもあるの?笑」

PL2「いや待て待てなんで俺が人質とんだよ。戦闘技能しか取ってないから人質取るならほかのやつだろ」

PL1「いや、これは罠だ。うし、大丈夫大丈夫。お前ならなんとかなる。……行け」

PL5「今罠って……」


KP:戦闘処理入っていいっすかね?


そして拷問されるシーンへ繋がる……



と言う夢を見たんだ。

次回も三人称視点で進みます。

よろしくお願いします。


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