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 あれから数ヶ月、耀とはたまにご飯を食べたりDVDを見たりと、友人関係を築いていた。

 汐里は、仕事帰り、コンビニで珍しくビールを買い、アパートに帰った。 

 お酒の弱い汐里は、半分くらいでかなりいい気分になってきた。

 うとうとしていたら、汐里の家のドアフォンがなる。

 今は十時半近く。

 人が訪れる時間帯ではない。

 汐里は、足音をさせないように、ゆっくりとドアに近寄った。覗き穴から覗いてみようとしたとき、

 いきなりドアがドンドン叩かれた。

 汐里は、かなりびっくりして、ドアの前でしゃがみこんでしまった。

「いるんだろ!なんで出て来ない!」

 男の人が何か叫んでいる。

 汐里は、耀にラインを送った。


 汐里:耀君、今どこ?

 耀:どうした?

 汐里:なんか、部屋の前で男の人が騒いでて、ドア開けろって、ドアフォンならしてるの。

 耀:まじで?出たら駄目だよ。

 汐里:怖くて開けれないよ。

 耀:今から行くよ。

 汐里:大丈夫、警察呼ぶから。ごめんね、変なラインして。


 汐里は、警察に電話しようとしたが、こんなことで警察を呼んでいいのかもわからない。少し待てば諦めて帰るかもしれない。

 今度こそ、覗き穴から見てみようと穴を覗くと、そこには赤い顔をした元見合い相手が仁王立ちになっていた。

 知り合いだったことが、より怖かった。間違いではなく、汐里に会いに来たということだからだ。

「汐里さん、君のことが忘れられない。出て来て、僕の話しを聞いてくれ!あんな若僧なんかより、僕のほうが君を幸せにできるんだ。君は目を覚まさなければいけない。」

「…あ、あの、近所迷惑です。騒がないでください。」

「汐里さん、開けてくれ。」

「帰ってください。」

「開けて!見せたいものがあるんだ!」

 ドアがドンドン叩かれる。

「止めてください。警察呼びますよ。」

 汐里は、チェーンまでしっかりかける。

 その音が聞こえたのか、元見合い相手はなお激しくドアを叩いた。

 汐里が警察に電話をかけようとしたとき、外で別の声がした。

「あんた、しつこいね。しおりんは俺の彼女だって言ったでしょうに。」

 耀の声だ。

「嘘だ!僕は調べたんだ。興信所を使っておまえのことをな!汐里さんの目は覚めるだろうよ!」


 耀君?

 興信所?


 汐里はチェーンを外し、ドアを開けた。

「汐里さん、こいつは女がいっぱいいるんだ。君だけじゃない!ほら!」

 耀の写真を沢山汐里に突きつけた。

 数人の女の子達と仲良く歩いている耀の写真…大学での耀そのものだが。

 腕をくんでいるものや、一瞬キスしているのか?と見えるほど近くに寄っている写真など、見ようによっては…というのもあるにはあった。

「えっと、通常の耀君だよね?大学ではこんな感じだし…。」

 わざわざ興信所を使ってこんな写真、お金の無駄遣いだ。

 後ろ姿だが、汐里の写真まで入っていた。

「こんな女にだらしない男がいいのか?」

 耀は、汐里と元見合い相手の間に入った。

「だらしなくないよ。みんな友達だしね。それにほら、うちに入るこの写真、これしおりんだよ。」

「あ、ほんとだ。」

 元見合い相手は、えっ?と写真を食い入るように見る。

 耀は、片手で汐里の肩を抱き寄せ、もう片方の手で顎に手をかけると、優しく触れるようにキスをした。

「俺としおりんは仲良しなの。邪魔しないでくれるかな?」

 汐里は、一瞬何がおきたのかわからなかった。


 飲み過ぎちゃった?


 元見合い相手は、写真を握り潰すと、床に叩きつけて走って階段を下りていった。

「あーあ、写りがいいやつもあったのに。」

 耀は写真を拾うと、丁寧に広げてポケットにしまった。

「しおりん、大丈夫?怖かったね。」

「え…、あ…、ううん。きてくれてありがとう。」

「ね、前にした約束覚えてる?」

「約束?」

「ほら、二十歳になったら飲もうってやつ。」


 一番最初に会ったときに、そんなことを言われた記憶も…。


 汐里は、頭が働かずにただうなずいた。

「じゃ、今から飲もう!俺、今日誕生日なんだ。買ってくる。」

 耀は、コンビニまでお酒を買いに行った。

 汐里は唇を押さえて、さっきの感触を思い出す。


 確かに触れたよね?

 でも、あれは元見合い相手を諦めさせるためにしただけで、他意はないんだ!

 そうよ、耀君の態度も変わらないし、なんの意味もないことなんだわ。


 汐里は、心臓がバクバクするのを飲酒のせいにした。




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