街とお金
本日中にあと二話投稿します。
洞窟から近い街はどこかとアヤフラッドに聞いたところ分からないそうな。おちょくりながら逃げてきた先が偶然あそこだったんだと。
どうするべと悩んでいたらふと思い出した。マップの存在を。心の中でマップと念じると視界上部にそれは現れた。グー○ルマップの要領でするする動かしているとここから北へ十キロ先にわりかし大きな街があることがわかった。
「ということで街の近くまで来たわけだが」
でけぇ!圧倒されたよね、俺は。
日本の町と比べてもきっと小さいのだろうが、街と外とがはっきり分かれていてなんというか、一体感がでけぇ。
「ほえー」
すっごーい。
「次の方ー」
あ、俺です。
大人しく検問へ向かう。
「どちらからいらっしゃいましたか?」
「南の村からっす」
俺の特技、口調を変える、だ。これは自分のキャラが定まってないからこそ上手く使える。
「お二人の関係は?」
「友人ってとこっすかね。今のところは。へへっ」
「アクターンへは何しに?」
「冒険者になりにっす」
「冒険?学者さんに師事するのかい?」
あれっ?冒険者、ないの?
「い、いやモンスターを狩ったり護衛したり……」
「あぁ傭兵かな。ふーん頑張ってね。行っていいよ。次の方ー」
いいの?しどろもどろだったけど?ザルだなおい。
そんな感じで街に入れた俺達。
街の中は中世ヨーロッパ風の街並み(中世ヨーロッパの街並みは知らないが『seventh heaven』の世界観設定に書いてあった気がする)。人通りは多く、治安は良さそうだ。
時は夕暮れ。空を見上げれば雲まで夕日の色に染まっている。
つまり、だ。朝から何も食ってねぇ!腹減った!
早く食いたい、が飯屋がどこにあるかわからん。
「アヤこの国の文字読めるか?」
アヤというのは人間の街に溶け込んで暮らすための偽名だ。目立たないよう服も適当なのに着替えさせている。
「分からない」
「そっかー」
しかしあれからアヤフラッドは無表情&無口になってしまったな。こんな酷い没個性を見たことがない。
まぁそれは置いといて。
じゃあ仕方ない。やるしかないのかぁ。あれを。いきなり難易度たっけー。よし、やったる!
「もし其処な御方」
俺が話しかけたのは買い物帰りと思われるいかにもな町娘。
「え、私ですか?何でしょう」
やったー自分から話しかけられた!
「このあたりにうまい飯屋はありませんかえ」
「うーんそうねぇ。ヤプーの食堂なんてどうかしら。ここを真っ直ぐ行って三個目の曲がり角にあるわ」
「さいですかさいですか。これはご親切にどうもありがとうございやす。こちら、ほんの気持ちでございやす」
俺は御礼に『金剛龍の逆鱗』を手渡す。
「あらありが……って何よこれ。光ってるけどこんなよく分からないのいらないわよ。じゃあね」
そう言い残すとスタコラと去っていってしまった。
うーん。やっぱ金剛龍は要らないか。次は極彩龍にしとこう。
まぁいいや。飯の情報が手に入った。
「三個目の曲がり角ね。ちゃんと覚えてるぞ」
情報をもとに歩いてゆくと、果たしてそこには食堂があった。夕餉時ということで大勢の客が座っていた。満員に近い。
俺は「オススメひとつ」とだけ頼み席に座る。
ちなみにアヤは食事が必要ない種族なんだと。これは驚いた。
「これで一安心だな」
やがて運ばれてくるパンとチキンステーキ。
大味だがうまいうまい。このチキン食べたことない味だがなんという種類なのだろうか。ま、うまけりゃいっか。
ペロリと完食。
「『支払い』お願いしまーす」
「はいよーお会計だね」
食堂のおばちゃんがやってくる。
「五銅貨ね」
うん?
「五銅貨?」
「そうだよ。五銅貨」
五銅貨ね……銅貨……ってなんじゃらほい。通貨は『コイン』じゃないの?
それに『支払う』アイコンがでない。
俺は思った。これやばいんじゃね、と。
俺はアヤにこっそり尋ねる。
「金持ってない?」
「持ってない」
デスヨネー。
おばちゃんが訝しげな表情をし始めた。
「あんたまさか……」
そう。そのまさかさんです。
「あい、すみません」
「衛兵さーん!」
俺はその夜冷たい床の上で寝た。
飯もまずかったです。ぐすん。