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ゆるい説明回

今日中にあと二話投稿します。

俺は起きるように、生き返った。


体感ではただ起き上がっただけである。しかしながら、あの時死んだのは忘れようもない。


生き返った。その次の瞬間に考えたことは「ゲーム」であった。ゲーム、ゲーム以外で何をすれば良いのか分からない。


手元にスマホは……ない。そもそもここは何処だ?


横を見渡しても上を見渡しても目に入るのは岩ばかり。しかし人の手が加えられている。


一語で言うならば「神殿」だ。


綺麗に岩が並べられているだけで別に神棚がある訳でも神の像がある訳でもない。ないのだが何故か神秘的という言葉を思い出させる。勿論見たことない場所である。


「あ、あー」


産声ではない。いや、生き返ったのだから産声で合ってるのかもしれないが……とにかく違う。俺の声だ。久しぶりに声を出すので確認だ。マイクチェーマイクチェー。


引きこもりあるあるに「声の出し方を忘れる」というものがある。これをいうと「引きこもりエアプかよwww」というリプが大抵の場合つくが、事実だ。少なくとも俺にとっては。経験がある。


これはどうでもいい思考だった。


次に確認するのは身体。包丁が刺さってないのはなんとなく分かっているが、一応ね。


「なんだこれ……」


目線を身体に向けると、そこには驚きの光景が!なんとゲームのキャラになっていた!びっくらぽん!


脳が処理できずびっくりで思考停止した。


「えーっと」


ゆっくり考えていこう。


この衣装は最後にプレイしていた七つの大罪を取り入れたストーリーで人気(笑)の『seventh heaven』というゲームで使用していたキャラ『月見草』のものだ。毎日見続けたのだから見間違えるはずがない。


ここで考え得るのは異世界転生、夢、死後の世界。まぁ異世界転生なんだろうな。こういう展開の作品をいくつか知っている。


つまりだ。ここは異世界だとして、『月見草』の能力を持っているとして、チートだとして、無双だとして、その先は、ハーレム……!


落ち着け。欲望にのまれてはいけない。まだそうと決まった訳では無いしな。慎重に、石橋を叩いていこう。


よし、確認の続きだ。ステータス画面を開いてみよう。


ステータスオープン。


心の中で呟くと目の前に情報が表示された。


勘でやったらできちゃった。


隅々まで確認する。名前『月見草』、レベル百、ジョブ『求道者』、そして見慣れたステータス。うん。弱体化などはされてないようで一安心。


次に顔。いやー趣味丸出しでキャラメイクしたからなー。期待しちゃうなー。


アイテムボックスから防具『メイデンシールド』を取り出す。


勘でやったらできちゃった。


何故これを取り出したかというと『seventh heaven』に鏡というアイテムはなく、『メイデンシールド』の説明文に「鏡のようにうんたら」と書かれていたのを思い出したからだ。


その記憶は正しかったようだ。


『メイデンシールド』には怖いくらいのイケメンが映っていた。昨日までの顔と比べると……やめよう。顔の話題はなしだ。なーし。


はい次。お待ちかね、魔法ですね。


俺のプレイスタイルは基本的にバランスタイプだ。そうしないと一位を保持しつづけられないからだ。『seventh heaven』でも同じ。バランスタイプ……全てが高水準の。


これには一晩では語り尽くせないほどのあれやこれがあるのだが割愛。


とにかく、バカ強い『月見草』は魔法も肉弾戦もできる。


物理は後でも良いだろう。今は魔法が撃ちたくてうずうずしている。


取り敢えず虚空に『ファイアーボール』でも撃っとくか。


「『ファイアーボール』」


掌から火の玉が生成され、ゴウォと音をたてて発射される。距離たった五メートルの軌道を経て消える、はずだった。


「何!?」


火の玉は五メートル、六メートル、七メートル……と飛んでいき、最終的には天井部分に当たり岩を砕いた。


「これはおかしい。明らかにおかしい」


バグ……ではないだろう。ここは異世界。つまるところ現実だ。バグなんてものはあってはならない。となれば……。


「ゲームの魔法が現実に則しているのか」


その後すぐに他の魔法も試してみた。


結果分かったのは、込めるMP、魔力によって威力が変わること。MPの込め方はなんとなく感覚で分かること。飛距離もなんとなく決めれること。一部魔法の効果が変化していること。HPが削られれば……痛いこと。


まずいなぁ。これはまずい。


もし、異世界人が俺と同じくらい魔法を使えて自由自在に魔法を操れたら。もし、俺と同じく異世界転生してきた人がいて俺より適応するのが早かったら。負ける、つまるところ死ぬかもしれない。


今まで積み重ねてきた常識が通用しない。定石やコンボが出来ない。むしろ枷となる。


何度も言う。まずい。


俺は死が怖い。死や生身の人間を前にすると冷静でいられなくなる。キョドる。


恐らく、この異世界には人や亜人や魔物が住んでいて、そいつらは勿論生身の生物だ。そして殺し合うこともあるだろう。その時俺は動けるだろうか。少しは動けるかも知れない。しかしゲームならば負けるはずのない相手にも負ける。そんな未来が見える。


ハーレムなんて言ってる場合じゃない……必死に、一生懸命生きければならない。


舐めていた。浮かれていた。


仕方の無いことだとは思う。異世界転生なんて夢にも思わなかったことだ。以前固執していた勝ち組にもなれるかもしれない。未知にワクワクした。


それらはハッキリと今、打ち砕かれた。堅実に生きよう。一位は後回し。安全地帯からフルボッコにできる状態じゃないと戦わない。決めた。


俺は心に強く刻む。深層にも届くように、しっかりと。



あれから数時間魔法を練習し、ある程度納得がいったので外に出ることにした。


岩の間……神殿と呼ぼう。この神殿には出口と思しき扉がついている。一度開けてみて出られることは知っていたので放置していた。


「よし……」


気合いを入れる。


ここから新たな俺の人生がスタートする。その第一歩だ。思えば、何年家の外に出ていないだろう。逃げていたものに向き合わなくてはならない。社会との接触を覚悟する。


扉に手をかけ、押す。


ゴゴゴ、という音をたてて扉が開いてゆく。


そして、一歩。あっけない。小さい一歩だ。しかしこれを積み重ねていかなければならない。


嗚呼、途方もないな。俺がゲームをしている時間、皆は積み重ねていた。着実に。その頂きは高く見えなかった。


逃げたくなる。が、死はもっと怖かった。今度は死の近くに佇むのではなく必死に逃げよう。死の反対方向に社会人の道がある。


鬱病治して社会復帰した人達、すげえなあ。

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