自動人形
復活。
「あ、帰ってきたのです。アヤ様と二人にするのはやめて欲しいのです。気まずいのです」
部屋のドアを開けたとたん、フニが言ってきた。
確かに何かと賑やかなフニにはキツいだろうな。
「悪かったな。お縄は回避できたから、もう二人きりにはしねぇよ」
それを聞き、目に見えてホッとするフニ。
「良かったのです。買われて早々ご主人様が捕まって、『自動人形』みたいな人と部屋に詰め込まれるなんて最悪なのです」
人形て。
うん?
「おい。お前今『自動人形』って言った?」
「ごごごごめんなさいなのです!ご主人様のいい人に悪口を……。そんなつもりじゃなかったのです!」
慣れた動きで五体投地。多分プライドはない。
「いやそれは構わんよ。あと別に恋人ってわけじゃない。……『自動人形』について知ってることを全て吐け」
『seventh heaven』で『自動人形』といえば『オトモ』のことだ。メインストーリー序盤でとあるストーリーをクリアすると強制的にくっついて来る。その後のストーリー中では攫われたり壊れたりではっきり言って邪魔なのだが、『デウス・エクス・マキナ』との最終決戦時にプレイヤーを庇って死ぬ。そのシーンは典型的なお涙頂戴だが、普通に感動した記憶がある。
その『自動人形』なのか。それともこの世界特有のものなのか。
「一部の貴族や傭兵が連れているという謎の存在なのです。自分から喋らないし質問に答えてくれない場合もあるし夜の相手にしか使えんよ、とお父様のご友人が……本で読んだのです。帝国にあるゴーレムダンジョンを攻略すると手に入れることができるらしいのです」
ああ、そうだ。『ヴィヴィアンのダンジョン』を攻略すると着いてくるのだった。そのダンジョンは確かにゴーレムばかり出てきた。
つまり『seventh heaven』の『自動人形』だ。
この世界とゲームが一致しているのは魔法だけではない。それが証明された。
「よし。今後の方針が決まった。よく聞け。……これからフニにはレベルが三十になるまでモンスターを倒しまくってもらう。ビルドは俺が決めるから何も考えず剣を振り下ろしているだけでいい。それが終わったらゴーレムダンジョンへ行き『自動人形』を手に入れる。手に入れたら世界旅行しつつレベル上げ。最終的にレベル百になったら……それは今考えることじゃないな。まぁそんな感じだ。拒否権はない」
「分かったのです。よく分かったのです。フニはこのご主人様のもとで短い一生を終えるのです」
フニはちょっとアレな目で天を見つめる。
まぁ今はそれでも良いが。モンスターを前にして自暴自棄になられても困る。
「死にたくないんなら一生懸命やれよ」
と釘を刺しておく。
フニは力なくこくん、と頷いた。
まぁ任せとけや。