第77話 壇浦の不吉な声!
「無駄だよ。尚くん」
壇浦の声が聞こえる。
「なあ、お前にも聞こえてるのか」
俺はキャサリンのほうを向いた。
「ええ。聞こえてるわ」
その間にも緑色の液体は少しずつ膨らんでいく。
「もう、手遅れなんだよ」
壇浦は半分笑いながら言った。
「何が手遅れなんだよ」
壇浦は堪え切れず笑った。
「ウフフ。ねえ、尚くんはなんでここにいるの?」
「えっ?そ、それは……神様に言われて……」
「まともに受け答えする必要ないわ!ほっときなさいよ」
キャサリンが吐き捨てるように言った。
「フン、仲良いんだね」
「うるせえよ、別にそんな感じじゃねえよ」
「だから黙ってなさいって」
俺は黙った。
「ねえ、もう一回聞くわ。なんで二人ともここにいるの?」
俺たちは黙っている。
「まあ、いいわ。黙ってるんならそれでいいけど。でもなぜ二人ともここにいるのか、なぜ私もここにいるのか分からないとどうにもならないよ。じゃあね」
壇浦の声がプツリと消えた。まるで通信回線でも使っているようだ。
「なあ、どうする?」
「どうするもこうするもないわ。とにかくあいつを吹っ飛ばしましょ」
キャサリンは言った。しかしその声はなんだかいつもの声ではなかった。
それから俺たちはもう一度積み上がっていく巨大な緑色の液体のタワーを潰しにかかった。しかし多くの人がその液体の中に引き寄せられるように入ろうとする。俺たちはそれを引き剥がすように止めた。その上、正気を保っている人の数よりおかしくなってしまった人の方が多く作業が上手く進まない。さらに具合の悪いことに正気だった人の中にもだんだんと液体の中に入ろうとする人が現れた。
「おい、これ、どうすんだ?」
「とりあえずもうさっきみたいに吹っ飛ばしちゃいなさいよ」
俺はさっきと同じ要領で液体のタワーを吹っ飛ばした。そして上空からパラパラと落ちてくる人を下から風を送って受け止めた。
「さっきと同じ展開だな」
俺は目を覚まさせようと人々の群れの中に行こうとした。
「……めて……」
頭の上でキャサリンが何かぶつぶつ話している。
「え?なんだって?」
「……もう……」
声が小さすぎて何を言っているのか分からない。
「おい、お前何言って……」
「もうやめてって言ってるでしょ!!」
キャサリンは突然大声を出して俺の頭の上から降りてその場にうずくまった。
「おい!どうしたんだよ!」
気がつくと周りから人が集まってきている。ここにはレースの関係者や観客の女たちだけだったはずなのに。皆ゾンビのような顔をしてフラフラと会場内を歩いている。
「こ、これ……なんなんだよ……」




