第73話 全員退避だ!
ヒースたちの一群は魔王の足元から上半身のほうへ移動した。ヒースたちの移動に伴ってラピスたちは下半身のほうへ移動した。一方、相変わらず魔王は時々雄叫びを上げてまるでハエでも追うように竜族の戦士たちを叩き落している。
ヒースたちはまるで織物の縫い針のように魔王の体を左右に飛び交いながら攻撃を仕掛けていく。しかし魔王はほとんど反応しない。魔王はまた雄叫びを上げ両手を上げてヒースたちを叩き落そうとした。
その瞬間!
魔王の上げた両手の間をスルリと抜ける影。影は通り抜けざまにキラリと剣を振るう。
魔王が体をよじらせる。雄叫びを上げジロリと周りを睨みつけた。
「き、効いてる!」
また魔王がヒースたちを叩き落そうと手を上げた。
その間を縫っていくつもの影が剣を振るう。
「グオオアアウオオ!」
痒いのか、痛いのか分からないが確実に反応がある。
「次のチャンスで行くわ!用意して!」
俺は魔王の頭の上まで上昇した。
「魔王が身をよじらせて吠えるタイミングでリコーダー突っ込んで!」
「分かった!」
魔王は頭に血が上っているのか、ブンブンも頭を振り始めた。
そしてまた手をあげる。
その隙間に竜族たちが攻撃を仕掛ける。
魔王はたまらず上を向いて吠えた。
「今!」
「伸びろ!リコーダー!」
俺はリコーダーをぱっくりと空いた魔王の口へリコーダーを向けた。リコーダーはブォンと光るとグイーンと伸びて魔王の口に一直線に伸びていった。
「さあ、吸い込んで!」
俺はリコーダーを咥えると思いっきり息を吸った。
ズオオオオオオオオオ!
凄まじい量の空気が俺の口の中に入って来る。
俺は構わずさらに息を吸い込んだ。
「グウオオオオオオオオ!」
苦しげに魔王は喉の奥に刺さったリコーダーを握った。しかしリコーダーはビクともしない。リコーダーが折れないと分かるや魔王は左右にリコーダーを振り始めた。俺はリコーダーを咥えたまま左右に大きく揺さぶられながらそれでもリコーダーを口から離さない。
ズズズズズズッ!
何かよく分からない物体を吸い込み始めた。
気味が悪いがこのまま止まれない。俺は構わずさらに吸う。
ズズズズズズッ……
かなり手前の方まで吸い上げた。
俺は思いっきりリコーダーを吸い込みながら引き抜いた。
スッポオオオン!
魔王の口から何かよく分からない物体が飛び出した。
その途端、魔王の体から蒸気が噴出してくる。
「な、何だ!全員退避だ!」
ラピスの叫び声が聞こえる。
「俺たちも逃げるぞ!」
俺は頭の上のキャサリンを確保しながら錐揉みして魔王の放つ蒸気の中を離脱しようとした。




