第72話 脇!
俺が上空に飛ぶと竜族たちは三群に分かれて編成を変えた。それぞれの群はヒースとベリルとラピスが率いているようだ。
ヒースの群は足元を動き回り剣を使って攻撃を仕掛けている。ラピスの群は火を吐き胴体を攻撃し、ベリルの群はそれらをサポートしたり魔王の気を外らせるような動きをしている。彼らの連携はなかなか見事なものだ。
「さあ、俺たちはどうしようか」
俺はキャサリンに聞いた。
「その前に本当にそのリコーダー伸縮自在なわけ?試してみた?」
言われてみれば確かにテストはしていない。
「やってないな……」
というかそもそもどうやったら伸びるのかが分からない。
「伸びろー、って魔法使うみたいにイメージしたらいいんじゃないの?やってみてよ」
俺は言われたとおりリコーダーが伸びるところをイメージしてみた。とりあえず自分の身長くらいかな。
「うお!伸びたぞ!」
リコーダーがブォンと光って伸びた。結構簡単にできたぞ。俺はリコーダーをもとの大きさに戻した。
「さあて、あとはラピスたちが何とかしてくれるのを待つだけね」
「そんな簡単に行くのかよ」
「行ってもらわないと困るわ。でも大丈夫でしょ」
何の根拠もないキャサリンの自信に俺は不安になった。
「うーむ……」
しかしキャサリンの楽観的な見通しとは裏腹になかなか魔王の隙を作ることができない。というか竜族たちの攻撃が全く効いていないようだ。ヒースたちの剣は魔王の皮膚にすら到達していないようだし、ラピスたちの吐く火にも全く効果がないようだ。
「狙い所が悪いのよ。ねえ、ヒースたちのところへ行って」
「あいつに言っても聞かねえだろ」
「いいから行って」
俺はヒースのほうへ近づいて行った。
「なんだ?貴様らは?あっちへ行け!邪魔だ」
ヒースが怪訝な顔をして俺たちを見た。
「ねえ、さっきから攻撃してるけどそれ効いてるの?」
キャサリンの問いかけは相変わらず喧嘩売ってるようにしか聞こえない。
「確実に魔王様には通じている!」
ヒースは力強く言った。
「ねえ、足じゃなくて脇を攻撃しなさいよ」
「脇だと?何故だ?」
「何故でもいいから。とにかく今のままじゃあんたら全滅するわよ」
「大きなお世話だ!」
ヒースはこの場を去ろうとした。
「あんた本当に魔王になる気あるの!」
ヒースは振り返った。
「なんだと!」
「今のあんたじゃ魔王になれないわ!」
「もう一度言ってみろ!」
藪から棒に言ったキャサリンの言葉にヒースが食らいついた。
「何回でも言ってやるわ!あんたは魔王になる資格ない!」
「貴様!」
ヒースは剣を振り上げてこちらに向かってきた。
「私たちを殺すのは簡単だわ。でもこの光景を見てる人がいるってことを忘れないでよね」
「どういうことだ」
「下でさっきから応援してる人がいるってことよ」
キャサリンは入口のほうで手を振っている女たちを指差した。
「このまま魔王に何のダメージも与えられずボロボロになる気?そんな姿みんなに見せてそれでも魔王になれると思う?」
「ぐぬぬ……」
ヒースは歯噛みしている。
「あんたたちの動きをさっきから見てるけどずっと同じところばかり攻撃してるわ。攻撃が通ってないなら他の場所を攻撃すべきよ。脇は一度も誰も攻撃してない」
「……分かった。やってみよう……」
ヒースは肩を怒らせながら魔王の脇の方へ飛んで行った。
「さあ、私たちも移動するわよ」
「でもさ、お前よく脇に攻撃仕掛けてないって分かったな」
「え?そんなの適当よ」
キャサリンはキョトンとして言った。
「えっ?それじゃ何で脇を攻撃しろって言ったんだ?」
「脇ってさ、誰でも触られると弱いでしょ。それに毛細血管がいっぱい通ってるし」
「な、何言ってんだ!」
もう知らねえよ!




