第67話 遅えよ!
魔王は懐から白い石のようなものを取り出した。
「見せてやろう!悪魔と契約して手に入れたクリスタルの力を!」
魔王はそれをゴクリと飲み込んだ。
「ハア、ハア、ハア、グヌオオオオオオオオ!」
魔王が激しく苦しみ出した。魔王は頭を抱えて転げまわっている。
「ま、魔王……様……!」
ラピスが声をかけた瞬間、魔王の背中がボコリと音を立てて大きく膨らんだ。
「ハア、グア、グムオアオオ……」
獣のような声を上げる魔王。さらに腕、足、そして全身が膨らみ始めた。さらに口が大きく裂けてキバが生えてきた。顔に毛が生えまるでオオカミ男のようだ。
「グ、グオオオオオオオオオ!!」
一気に魔王の体が大きく膨らんで天井近くまで達した。
「な、なあ、これ、ヤバイんじゃないか……」
「今さら言ったってしょうがないわ。ぶっ倒すしかないでしょ」
キャサリンはケロリと言った。
「な、何言ってんだ!逃げるぞ!」
「バカ!逃げてどうするのよ!魔王になるのあんたでしょ!」
「バカはお前だよ!殺されるだろ!」
グオオオオオオオオオ!!
巨大化した魔王は雄叫びを上げて両手を振り回した。
教会の大聖堂のような会場の天井が弾け飛んだ。
ラピスが俺に駆け寄って来た。
「なあ、魔王のこんな姿見たことあるのか?」
「ない。初めて見た」
ラピスの顔は青ざめている。
「ど、どうしたらいいんだろうな」
「分からん。気をつけろ」
ラピスはこんな時でも平常運転だ。
「魔王様!どうされたのですか!」
ヒースが空中を飛んで魔王の顔のところまで行った。他のトップ選手たちや竜族の戦士たちもそれを見て一斉に飛んだ。
「魔王様!おやめ下さい!」
「魔王様!我らの声が聞こえますか!」
「魔王様!」
竜族たちは飛び回りながら必死で魔王に声をかける。
「グオオオオオオオオオ!!」
魔王は理性を失っているのか、飛び回る竜族たちに向けてブンブンと両手を振り回している。
「グハッ!」
何人かが魔王に打たれて落下してきた。
「小竜巻!」
俺は落ちてきた竜族たちの下に小竜巻を発生させてクッションにした。
「グオオオオオオオオオ!!」
魔王が上を向いてさらに大きな雄叫びを発した。そして下を向いた。俺と目が合う。
「ゴ、ゴロズ!!」
そう言ったように聞こえた。
魔王は俺を踏みつぶそうと足を上げた。足が降りてくる!
「今!」
ラピスとキャサリンが叫ぶ!
「旋風脚!」
俺は旋風脚を使って思いっきり横っ飛びで魔王の足を避けた。
魔王の足は俺の元いたところを軽々と踏み抜いた。
ラピスも俺の避けた反対側へ避けたようだ。
魔王がキョロキョロして俺を探している。
「こんなのいつまでやるんだよ」
「うーむ」
キャサリンが腕組みしている。
「どうしたんだよ」
「これは……ちょっと無理ね」
今気付いたのかよ!




