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第66話 物語と力!

「追え!」


「俺たちは魔王様を保護する!」


 ベリルたちは俺たちを追ってきた。トップ選手たちは魔王のほうへ向かっている。ラピスはすごい勢いで魔王のほうへ向かっている。結局全員で魔王のほうへ向かっている。


 下の方でメガバーミンが暴れまくっている。もう会場には俺たちと魔王しかいなくなっている。


 ラピスが先に魔王のところへ着いた。


「魔王様、失礼いたします」


 ラピスは魔王の背後に回る。ラピスは剣を魔王に突き付けた。


「何をする気だ!」


 ベリルが叫ぶ。


「動くな!」


 ラピスも叫ぶ。


 魔王の背後にはラピス。俺は魔王と向かい合っていて、俺の後ろにベリルたちやヒースたちがいる。


「フフフフ……」


 魔王が突然笑い出した。


「フフフフ、フハハハハ!」


 魔王はさらに大きな声をあげて笑っている。


「な、何がおかしいんだ!」


 俺が言った。


「全く愚か者ばかりじゃ!」


 魔王は吐き捨てるように言った。それを聞いてベリルやヒースたちはすくみ上っている。


「ゴルロフ家のガキよ!貴様何の目的でこんなことをしておる!」


「何?」


「魔王になりたいのか。魔王になろうとしてこんな手を使うのか。愚かな。仮にワシを殺して魔王になれるとでも思っているのか」


「あんたをぶっ殺してレースの正当なポイントを申告させる。これ以外に何が必要だって言うのよ!」


 キャサリンが頭の上から叫んだ。


「何も分かっとらんようだな。魔王に必要なものが何かを」


 ラピスに剣を突きつけられながら魔王は全くの余裕に満ちている。


「良い機会だ、教えてやろう。魔王に必要なもの、それは物語と力だ」


 どういう意味だ?魔王の真意が掴めない。


「フッ、まだ分かっておらぬようだな。貴様の言う通りワシを殺してレースでの勝利を宣言しても貴様は王にはなれぬ」


「いい加減なこと言うんじゃないわ!」


「ではやってみるがよい。恐らく貴様は逆賊として捕らえられ死ぬまで頭のおかしな奴というレッテルを貼られるだけじゃ」


「やってみないと分からないわ!」


 キャサリンは抗弁する。


「その昔、この大陸が侵略され多くの人が殺され奴隷となり海を越えて行った。この危機を救ったのは魔族ではなく竜族であった。竜族たちは自らの名誉とこの大陸に生きる人々のために戦った。戦って戦って戦い抜き、そして気がついたのだ。自分たちが単に利用されただけであったことを。戦が終われば野蛮人扱いされ森に追いやられた。これは魔族だけの問題ではない。竜族自身の問題でもあったのだ」


「どういうことよ」


「ただ人々のために戦うだけではいかんのだ。民衆が求めるものは別のところにあったのだ」


 メガバーミンが後ろで暴れ散らかしているが皆魔王の話に聞き入っている。


「我ら竜族の貢献は物語として民衆の心に支持を得られなかった。我ら竜族の戦い方はとにかく侵略者を撃退するためのものであったからだ。侵略者の捕虜を見せしめに殺して敵の陣地に放り投げたりした。それは確実に向こうの戦意を喪失させることに成功していたが、民衆の求める美しい姿ではなかった。民衆が求めるもの、それは物語として完成されたヒーローだったのだ」


「だからってレースの正当性を失って魔王になってるのおかしいじゃない!」


 キャサリンが叫ぶ。


「ワシが竜族であることなど主だった大臣たちは皆知っている。知っていてワシを担ぎ上げ魔王に仕立てておる。ワシの父パール王は戦いの末に得られたものが虐げられた生活であることを知り、失意のうちに死んでいった。ワシは復讐のため、そして竜族の再び輝ける一族とするため血の滲むような権力闘争の中をくぐり抜けてきた!そして悪魔と契約したワシには絶対の力がある!今の体制でワシに刃向かう者などおらぬわ!旧貴族のガキが!神の啓示を受けたかどうか知らぬが、神の元へ帰るがよい!」


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