第5話 おい、メイド!
「しかし誰が俺の命を狙ってるんだろうな」
俺はメイドが持って来てくれた飯を食いながらリディアに聞いた。
リディアは俺のベッドで飛んだり跳ねたりして遊んでいる。
「そりゃー、たくさんいるんじゃない?お兄様はゴルロフ家の次男だし」
うーむ。これは作戦を立てないとな。
「ところでさ、リディア」
「なに?」
「俺、熱出して起きてからなんかもう全然記憶が戻らないんだよ。色々教えてくれないか」
「うん、いーよ。ていうかお兄様何か覚えてることある?」
俺は家族の名前を言った。
親父はグレゴリー、お袋はアリーナ。
一つ上の兄貴がレオン、そして弟のメルフ。それに妹のリディア。
あと執事のセドイフにメイドが五人。
「それ以外に覚えてることは?」
「ないんだよな……」
「ここがどこかとか?」
俺は首を振った。
「うーん、重症だね……。あんなでっかいクリスタル入れてたからしょうがないけど。そんなに記憶が飛んじゃってるなら、本読んだりアルバム見たほうが色々思い出すんじゃない?」
確かにそうだな。
「じゃあ、一つだけ聞いてもいいか」
「うん、いいよー」
「俺のこと狙ってる奴って心当たりある?」
「うーん、そんなのいっぱいいすぎて分からないよ。まず魔族軍の人たちはだいたいお兄様のこと嫌ってるし。出入りの商人たちもお兄様の無茶ぶりに困ってたって聞くし」
嫌われっぷりがハンパないな。
「ああ、分かったよ。とりあえず本とか読んで思い出すわ」
「うん、じゃーねー、お兄様」
そう言ってリディアは部屋を出て行こうとした。
「あ、一つ言い忘れた」
リディアが扉から顔だけ差し込んできて言った。
「わたしがお兄様の口吸ったのナイショね」
「ん、ああ、分かった」
「でもなんか気持ち良かったよ。お兄様の口の中」
リディアはイタズラっぽく笑った。
「そ、そうか?よ、よかったな」
俺はドギマギしながら答えた。
「うん、じゃあバイバイ、お兄様」
リディアが行ってしまってから俺はリディアとキスしたときのことを思い出していた。
目的はあのクリスタルとかいう石ころを取り出すことだったが、ファーストキスにしてはかなり刺激的だった。
「あー、もう一回やりたいな、あれ」
しかし相手は妹だ。非常手段としてのキスであって日常的にするものでもないだろう。
いや、この世界ではキスなんて普通のことなのかもしれない。別にやらしい意味などないなら、挨拶するみたいにあたり構わずチュパチュパやってもいいんじゃないか。
「あ、やべえ……」
エロい妄想で俺の下半身は硬化し始めた。
「よし、記念日すべき異世界での一発目だな」
俺はティッシュの箱を探したが、見当たらない。その辺にあったタオルのような布があったのでこいつを代わりに使うか。
俺はタオルを持ってベッドに潜り込んだ。
「ふう。スッキリしたぜ」
とりあえず二発やってしまった。俺の息子はこっちの世界でも絶好調だ。というか、妄想のオカズが良かっただけかもしれない。
俺はベッドの上に座った。そして、目を閉じて、もう一度リディアとのキスを思い出すことにした。
リディアの顔が近づいてくる。リディアの吐息が俺の顔にかかるくらい近づく。唇と唇が触れる。そして舌がヌルリと入ってくる。舌は生き物のように俺の口の中を動く。俺の舌とリディアの舌がダンスを踊るように絡み合い、そして溶け合って……
「……ダヴィド様……」
え!
俺の目の前にいたのはメイドのペーシャだった。
「な、なんだよ!びっくりしたじゃないか!ノックくらいしろよ!」
「も、申し訳ございません。何度もノックしたのですがお返事がなくて心配になって……」
ペーシャは今にも泣きそうだ。
「わ、分かったよ。泣くなよ」
「は、はい。お料理がお気に召しませんでしたか?」
「いや、そんなことないけど、何で?」
「いえ、先ほどから目を閉じて口を開けて舌だけ出しておられたので、お料理に何かあったのかと思いまして」
見てたのかよ。もうこっちの世界でもお嫁に行けないな。
「気にしないでくれ。俺はもう大丈夫だ」
「はい、分かりました。お皿お下げしますね」
そう言ってペーシャは片付けを始めた。
「それでは失礼します」
ぺこりと礼をしてペーシャは扉を閉めた。
今後メイドには気をつけよう。
タイトル、あらすじを変えました。