第47話 当日の朝!
そして朝を迎えた。
何だか気分が高ぶってあの後上手く寝付けなかった。寝不足でレースに向かうことになりそうだ。
コンコン。
扉がノックされる。
「おはようございます」
入ってきたメイドが朝食の用意を始めた。残念ながらペーシャではない。
「あれは夢だったのかな……」
何となく夢のような気がする。
「まあ、いいや」
俺はメイドが置いていった朝飯を頬張った。やっぱりパンが硬い……。
「本当によろしいのですね」
家を出ようとする俺に爺が念を押してくる。
「ああ」
「本当によろしいのですね!」
俺の気のない返事が気にくわないのか再度同じ質問をしてくる。
「俺はレースに出るよ!ゴルロフ家の誇りにかけて!」
俺は言った。というより言わされてしまった。誰に?キャサリン?爺?誰なんだ?
「分かりました。ではお送りさせて頂きます」
そして爺は馬車の用意をしに行った。
馬車に揺られながら俺はこれまでとこれからのことを考えていた。
これまで色々なことがあった。リコーダーで窒息死して異世界に転生して、いきなり誰かに命を狙われて、なんやかんやで魔王指名レースに出ることになって、竜族と戦って、そして今ここにいる。
これからどうなるんだろう。魔王指名レースに勝って魔王になるのだろうか。その前に生きて帰ることができるのだろうか。ヤリ過ぎて死ぬなんてことが本当にあるんだろうか。それはそれで羨ましいけどな。
この世界で死んだらどうなるんだろう。また別の世界に転生するのか。もしくは本当に死ぬのか。よく分からない。きっと俺の脳みそで考えても意味がないだろう。これ以上先のことを考えるのは無駄なことだな。
俺はどっかと馬車の中で寝転がった。街に着くまであと一時間はかかるだろう。寝不足だしちょっと寝ておこう。
そう言えばキャサリンの姿を見ていない。あいつがいないと静かでいいわ。俺の瞼はトロリと重くなってきた。
「ダヴィド様、着きました」
爺に声をかけられて俺はのっそりと起き出した。いつの間にか本当に寝てしまっていたようだ。
「ああ、ありがとう」
俺は馬車から降りた。目の前には野球場のような大きな楕円形の建物があった。会場はコロッセオのような闘技場で行われる。ここがそうなんだろう。
「でっけえな……」
プロ野球の試合でも始まりそうなくらい人が行き交っている。よく見ると屋台まであるじゃないか。これはもうまるっきりお祭りだな。
「ダヴィド様」
「ん?どうした?」
爺が神妙な顔をしている。
「本当に行かれるのですね」
「ああ、行くよ」
「これまで幼少の頃からずっとお仕えさせていただきましたが……」
爺は俯いている。声が震えている。
「爺?どうした?」
急に爺が俺の肩を掴んだ。号泣してるじゃないか。
「どうか。どうかご無事でお帰りくださいませ!」
俺はそっと爺の手を下ろした。
「分かったよ。じゃあ、行ってくる」
そして俺は闘技場のほうへ向かって行った。




