第33話 洞窟なう!
俺は首に剣を当てられたまま、竜族の男の指す方へ飛んでいた。
「あそこだ」
男が急に森のある地点を指差した。だんだん近づいてくると滝が見える。地図にあった滝と同じところだろうか。
「降りるぞ」
滝の真上くらいまで来ると男は急降下した。俺もつられて急降下する。
「もうちょっとゆっくり降りられないの!」
キャサリンのクレームは分かるが俺はずっと首に剣を突きつけられてるんですよ。
地面に降りると、滝の前は広くなっていて、滝から流れ落ちた水は小川となって流れている。
「こっちだ」
剣をずっと首に当てられたまま、俺たちは滝壺の方へ向かった。壁に張り付きながら滝壺の裏側に回ると、滝壺の裏側は洞窟になっていた。ここまで来て男はようやく首の剣を離してくれた。
「ここで夜になるのを待て。さすがに夜は誰も活動しない」
どういうつもりなんだろう。
「えーっと、俺たちのこと助けてくれるのか」
「そうだ」
竜族の男はこちらも見ずに言った。
「あ、ありがとう。でも何で?」
「リムドが街で世話になった」
リムドってあのイジメられてた子供だ。
「ひょっとしてあいつの父親か?」
「そうだ」
「あ、そうなんだ。いやー、やっぱり弱い者イジメは見ておけないからね」
「あんた何もしてないじゃない」
キャサリンが吐き捨てるように言った。
「おい、今そんなこと言わなくてもいいだろ!」
「お前が何も役に立っていないことは知っている。私はあの場で見ていたからな」
「な、なんだよ。じゃあ自分で助けたら良かっただろ」
「親があの場で手を貸すのは良くない」
「なんだよそれ。何のために見てたんだよ。手を貸さないなら放っておけばいいだろ」
「そういうわけにもいかない。貴様も子を持てば分かる」
子を持つどころか産んでくれそうな相手もいないんですけど。
「まあ、とにかく助かったよ。ありがとう。俺はダヴィド。名前は何ていうんだ」
「ラピスだ。礼を言われる筋合いはない。竜族は受けた恩は必ず返す。お前たち魔族と違ってな」
なんかトゲのある言い方するな……。
滝の裏側なんて入ったことなかったけど結構寒い。凍えそうだ。
「なあ、お前寒くないのか?」
さっきから平気そうなキャサリンに聞いてみた。
「え?そうかしら?あんた野生じゃないわね」
畜生め。ラピスの方も平気そうだ。俺はその辺を歩き回り始めた。
「何をしている」
「いや、寒くてさ。少しでもあっためようと思って」
ラピスは立ち上がり奥の方から枯れた木を持ってきた。そしてその木にそっと息を吹きかけると、木が燃え始めた。
「おお!ありがてえ」
俺は焚き火で手を炙った。
「火が吐けるんだな。竜族はみんなできるのか?」
「竜族の中でも厳しい訓練に耐え切った者だけができる技だ。軟弱な魔族にはできんだろう」
何というかさっきからラピスからトゲを感じて仕方がない。
「なあ、俺、なんか気に触るとこしたか?」
「別に何もされてはいないが」
「あ、そう……」
焚き火がパチパチ燃えている。暗い洞窟の中で焚き火の音はよく響く。
「夜に備えておくんだな。今夜は長い夜になるぞ」
そう言ってラピスは眠り始めた。
俺も一休みしますか……。




