第32話 万事休す!
「よくもやってくれたな」
リーダー格っぽい奴が言った。俺は何も出来ずにただ奴らに取り囲まれた。
「隊長、息があります」
アズラとメノウは四、五人で抱き抱えられた。
「あんたらが先に仕掛けてきたんでしょ。何の目的でこんなことしてんのよ」
「本当に喋るリスがいたんだな……。その質問に答える必要はない。貴様らには消えてもらう」
「言えないような理由で人を殺すのね。これだから野蛮人は困るわ」
「貴様!」
何人かが剣を振り上げた。
「待て!」
リーダー格がそれを制止した。
「これは我ら種族の生存に関わることだ。軽々に話すことはできん」
「こいつがあんたらの生存を脅かしてるって言うわけ?こいつは性欲くらいしか能のないただの猿よ。それがどうしてわざわざ殺されないといけないわけ?」
「おい。何どさくさに紛れて言ってんだ」
「あんたは黙ってなさいよ」
久しぶりに髪の毛を引っ張られた。
「繰り返しになるがこれは我々の問題だ。貴様らに言う必要はない」
リーダー格はきっぱりと言った。
「もういいわ。野蛮人は人と話もできないみたいね」
「その減らず口はあの世で叩けばよい」
取り囲んでいる竜族たちは一斉に剣を構えた。
キャサリンは俺の髪の毛を一本抜いた。
「いてっ」
俺は右手の指で丸を作った。分かってるよ。
「死ね!」
リーダー格が剣を振り上げ突っ込んで来た。
「爆風旋!」
俺は地面に向けて強烈な風を送って自分の体を吹っ飛ばした。俺の体は地上高く吹き上げられて、木の上を超えて雲の近くまで飛んだ。下を見ると竜族たちが右往左往しているのが見えた。
「旋風脚!」
そこから旋風脚を横向きに出して空を飛んだ。空からだと森全体が見渡せる。
「ひ、広いな……」
見渡す限りずっと森が広がっている。どっちを向いたらいいんだろう。とにかくあいつらの目を誤魔化しつつ帰らないといけない。
「すっごい綺麗ね!」
キャサリンは興奮気味だ。夕暮れが近くなって赤い太陽の光が森全体を照らしている。
「おう、風景もいいけどどこに逃げたらいいんだろうな。そのうちあいつらも飛べるんだから追ってくるだろ」
「北に行ったらいいんでしょ。北に行きなさいよ」
「この状況で方位磁針どうやって見るんだよ」
「適当にどっか降りて見ればいいでしょ」
「変なとこに降りたらあいつらに見つかるじゃねえか!」
ふと目の前が急に暗くなる。俺は空を見上げた。俺の目の前には一人の竜族の男がいた。そいつは空を飛びながら俺の首に剣を当てて言った。
「動くな。余計な抵抗をせずについてこい」
どうやら詰んでしまったようだ。




