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第28話 妖幻の森!

「しかし、ホント今日もいい天気よね」


 キャサリンは俺の頭の上に座ってのんびりした調子で言った。俺とキャサリンはペーシャの案内で妖幻の森を目指している。


「ねえ、ペーシャ。この辺って雨降らないの?」


「そうですねえ。雨なんて一年に一回降るか降らないかですね」


「そんなに雨が降らないなら水の確保が大変そうね」


「そうですね。でも今から行く森の向こう側は結構雨が降るみたいですよ。そこで降った雨が地下水路を通ってこちらの方まで使えるようになっています」


「へえー。上手いことできてんな」


 ペーシャはなんだか不思議そうな顔で俺の方を見た。


「どうかしたか?」


「い、いえ。別に……何でもないです」


 さっきの会話になんか変なとこあったかな……。




「あそこが妖幻の森です」


 一時間ほど歩いたところに鬱蒼とした森が見えてきた。


「いつもお前が薬草取りに行ってるところはどこだ?」


「あの森を入ったすぐのところに小さな泉があります。そこで私は薬草を取ってるんです」


「よーし、とりあえず俺たちもそこへ行こう!イタタ!」


 キャサリンに髪の毛を引っ張られた。


「何言ってんのよ!もっと森の奥に行ってモンスターバシバシ狩るわよ!」


「そんなことしてたらレースの前に死ぬじゃねえか!」


「死なないようにすればいいじゃない」


 こいつとの会話にはいつも、どうやって、という発想が抜け落ちてるから分かりにくい。


「どうやって死なないようにするんだよ」


「そのための魔法の練習でしょ。あれだけあればちょっとやそっとでは死なないわ」


 確かに魔法はただ竜巻や突風を吹かせるだけではなく、それを応用して色々な技を開発した。でもそれだけで本当にモンスターと戦えるレベルに達しているんだろうか。


「お前さっきから景気のいいことばっかり言ってるけど、俺がやられちゃったらお前の身も危ないんじゃないのか?」


「私はあんたみたいに鈍臭くないから大丈夫。今あんたに今足りないのはハングリー精神よ。それを鍛えるためには環境の厳しいところで合宿しないとね。じゃあ、ペーシャ、ありがとう。私たちは二、三日ここにいるから」


「に、二、三日?おい待て。聞いてないぞ」


「当たり前じゃない。さっき思いついたんだから」


「メシはどうするんだ?」


「そんなのモンスターでもケモノでも何でも狩って食べたらいいじゃない」


 こ、こいつ、何でも勝手に決めやがって。


「あ、あの……」


「ん?なんだ?」


「私が採ってる薬草は傷にも効きます。もしモンスターとの戦いで傷ついたらそれで治療することができます。それに山菜も生えてます。一緒にそれがどこに生えてるのか見に行きませんか」


 さすがはペーシャ。うちのメイドは気が効くねえ。どこかのリスとは大違いだぜ。




 妖幻の森の中に入ると昼間でもかなり薄暗くてちょっと怖い感じがする。時々鳥の鳴き声がするくらいで結構静かだ。しかし視界が悪いので急にモンスターが出て来られると即応するのが難しいかもしれない。


「これは危険だな」


「何が危険だな、よ。あんたが言うと緊張感がないわ」


「やかましいわ」


「えっと、ここです」


 ペーシャが指差した場所には木がなくてちょっとした広場みたいになっている。広場の奥に泉が湧いていた。


「この泉の脇に生えているこんな形の葉っぱが薬草です。それからこっちが山菜で一応生でも食べられます」


 ペーシャに色々と教えてもらう。


「なるほど。よく分かったわ。ありがとう。もう大丈夫よ。あなたは先に帰ってて」


「あの……」


 いつもペーシャは何か言いにくそうに話をする。


「どうした?」


「森の中はとても迷いやすいので気をつけてください。どうしても分からなくなったらこれを使って下さい」


 そしてペーシャは方位磁針を取り出した。


「これで北を目指して歩いてもらえば、遠回りになることもありますが森は抜けることができます」


「ありがとうペーシャ」


 俺はペーシャから方位磁針を受け取った。ペーシャは俯いて顔を赤くしている。


「どうした?」


「いえ。あの……ありがとうございます」


「何がだ?」


 みんな5W1Hの足りない会話をする。困ったもんだ。


「いえ、いいんです。それでは頑張ってください」


 そしてペーシャはこれまで来た道を通って帰って行った。


「さあ、合宿の始まりよ!」


 全く。こいつだけが張り切っている。

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