第22話 ゆっくりしてるヒマはない!
俺は自分の部屋に戻った。
「どうしようかな……」
本当にあのレースに出ないといけないのだろうか。しかし、仮に今出る判断をしなかったとしても、いずれまた家族から俺の覚悟を確認されることになるのだろう。となれば今出なければ問題を先送りにしただけだ。レースに出ることでペーシャを助けることになるのだから……。
「出るしかないんだろうな……」
あとはリディアの件だが、さっきせっかく話しかけたのにより疑惑が深まってしまったような気がする。とは言え話せば話すほどドツボにハマりそうな気がする。
「放っておくか……」
放っておいても問題は解決しないだろう。リディアは俺にとって貴重な味方の一人だ。というより唯一と言っていいかもしれない。その信頼が揺らいでる。何とかしなければならないが今の俺に何ができるというのだ。
「しょーがないな」
ベッドの上に寝転んだ。
「何寝てんのよ」
頭の上から声がした。
「おい、いつからいたんだよ。びっくりするじゃねえか」
「あんた、そんなのんびり構えてられる時間ないわよ」
「ちょっと考え事してただけだよ」
「どうせレース出るのやっぱり止めとこうとか、リディアと話したけど上手くいかなかったとか、そんなとこでしょ」
図星すぎた。
「あんたは余計なこと考えなくていいのよ。私の奴隷なんだから私の指示に従ってなさいよ」
「分かったよ」
とりあえずはこいつの言うことに従っておくか。
「さあ、見せてみて」
庭に出るとキャサリンは俺の頭の上から言った。
「何をだよ」
こいつの話はいつも唐突でよく分からない。
「決まってるじゃない。魔法よ」
魔法だったようです。
「分かったよ。ちょっと待ってろ」
俺は前に竜巻で岩をぶっ飛ばした時のように目を閉じてイメージを集中させた。竜巻の大きさ、強さ、形、色、スピード、そしてそれが岩を吹き飛ばしているところ。
ある程度のイメージが固まりつつあるところで俺は両手を前に出した。手にエネルギーが溜まっているのを感じる。そうだ、前もこの感じだった。そしてもうこれ以上細かくイメージできないというところまで考えてから目を開けた。
「行けっ!」
ズオオオオオオ!
この前と同じような竜巻が出て岩を吹き飛ばした。
「ふーん、なるほどね」
珍しくキャサリンが感心している。
「どうだ!」
俺は得意げに言った。
「時間かかりすぎね。もっと短縮できないの?」
早速ダメ出しですか。
「今はこれが限界だ」
「これじゃあ、いざって言うときに使い物にならないわね」
「いや、まあ、そうかもしれないけど」
「せめて2秒くらいで出せるようにならないとね」
に、二秒ですか。ハードル高めですね。
「急にできるかよ」
「でもできないとあんた死ぬわよ」
「い、いや、でも……」
「言い訳多いわね。死にたくなかったら全力でやりなさいよ!」
「痛え!」
キャサリンは俺の髪の毛を抜いた。
「できなきゃ晩御飯抜きね」
「勝手に決めてんじゃ……痛え!」
パワハラで訴えたいです……。
「……一日中やってこの程度なの」
今日一日中やってたが、結局最短で五分くらいだった。
「まあ、仕方ないわ。明日もビシバシやるから覚悟してなさい」
キャサリンは俺の頭のから降りた。
「あ、あと言い忘れたけど」
「今度はなんだよ。晩メシの次は何を抜いたらいいんだ」
もう何を言われても驚かない自信がある。
「あんた夜自分のチンチン触って遊んでるでしょ。あれ禁止だから」
「な、な、な、なんでだよ!!」
早速驚いてしまった。抜くのは晩メシだけで勘弁して欲しい!
「だって子作り選手権やるんでしょ。溜めといたほうがいいじゃない」
「いや、あれは溜めるよりも定期的に出して練習しておかないと……」
「そんなわけないでしょ。私今日からあんたの部屋で寝て監視してやるから。覚悟しときなさい。じゃあね」
キャサリンは尻尾を振りながら家の方へ去って行った。




