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第13話 片付けなさい!

「さあ、片付けやるわよ」


 一時間ほど経って、勢いよく扉を開けてリディアとキャサリンが入ってきた。キャサリンはリディアの頭の上に乗っている。


「えっ……。もうゆっくりさせてくれよ。疲れてんだよ」


 俺はぐっちゃぐちゃになった部屋の片隅でベッドの残骸を集めて寝転んでいた。


「ほら、言ったとおりでしょ」


 キャサリンが勝ち誇ったように言った。


「やっぱりだね、キャサリン」


 リディアは笑っている。


「なんの話だよ」


「ふふふ、こっちの話よ。ねー」


 二人は顔を見合わせて笑った。随分と仲のよろしいことで。


「さあ、始めましょう」


 キャサリンは今度は俺の頭に乗っかってきた。


「しっかり働くのよ、奴隷!」


 こいつ、一体なんなんだ!


「嫌だよ。ちょっと寝かせてくれよ」


「ダメよ。あんたまた噛みつかれたいみたいね」


 キャサリンは口を開けて構えた。鋭利な前歯が光っている。


「やめろ!お前に噛まれたら死ぬわ!この殺人リスが!」


「大袈裟ねー」


「何が大袈裟だ。お前の歯、さっきの化物の皮膚まで貫通してダメージ与えるんだろ!俺が箪笥のカケラ持って突っ込んで行っても効かなかったのに」


 キャサリンはため息をついた。


「あんたホント何も考えてないわね。私が何の考えもなくかぶり付いてたと思ってんの」


「どういうことだよ」


「あいつの皮膚の薄そうなところ狙って攻撃してたのよ。毛細血管がいっぱい走ってる脇とか」


「え?どこって」


 キャサリンは俺の耳元に移動してきた。


「毛細血管がいっぱい走ってる、わ!き!」


 声がデカ過ぎて逆に聞こえにくい。


「え?だからどこだって?」


 キャサリンは俺の髪の毛を一本抜いた。


「痛え」


「なんで聞こえへんねん!この距離やぞ!」


 急に関西弁使い始めました。フリーダム過ぎてどうにかして欲しい。


「あんた、なかなかやるじゃない。さあ、楽しくなってきたわ」


 俺はちっとも楽しくないです。




「こ、これは……一体どういうことですか」

 爺が絶句している。


 爺は俺が襲われている時ちょうど出掛けていたらしい。家に帰ってきて、この状況を初めて見た感想だ。


「こっちが聞きたいぜ」


 俺は一人で部屋の片付けをしている。リディアとキャサリンはあらかた作業が終わったところで、俺を置いて遊びに行ってしまった。


「何をしておいでですか。そんな掃除などメイドにやらせて下され。おい、誰か!」


 爺が階下に声をかけた。


「ああ、いいよ、だいぶ片付けたから。それより窓壊れちゃったから早く業者呼んで直して」


「かしこまりました。すぐに手配します」


 メイドたちが俺の部屋にやって来た。


「ああ、ありがとう。ゴミはこっちにまとめといたから持って行ってくれる?」


「はい。え?ど、どうされたんですか?」


 メイドたちもびっくりしている。どうやらメイドたちもあの時に家に居なかったようだ。


「あとで説明するよ」




「それで窓の外にそのグランドオークがぶっ飛んで行ったということでございますか……」


 片付けが終わった部屋で爺にこれまで起こったことを説明した。ついでなので、俺の体からクリスタルが出てきたことも言っておいた。リディアが吸い出してくれたことも言ってしまった。


「しかしなぜグランドオークがここまでやって来たのでしょう」


「それが分かれば苦労はないな。でも俺が狙われてんのは間違いないよな」


「そのようですね……。私は犯人を探してみます。旦那様からあと一週間ほどでお戻りになるとご連絡がありました。それまでの間に何とか探し出したいものです」


 一週間で犯人が分かるもんなんだろうか。


「まあ、犯人探しは爺に任せるわ」


「かしこまりました。ダヴィド様は出来るだけ外には出ないようにお願いします」


「分かったよ」


「では、失礼致します」


 爺は立ち上がって部屋を出て行った。


「あと、もう一つよろしいですか」


 再び首だけをヌッと差し入れて言った。


「な、なんだよ」


「兄妹で口を吸い合うなどは以ての外でございます。お気をつけ下さい」


「分かったよ。もうしないよ」


 では、と言って爺は去った。やっぱりダメですよねー。

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