一限目
なりきりヒーロー学園
戦隊ヒーロー。変身ヒーロー。はたまた合体ヒーロー。なんでもいい。要するにヒーローである。簡単な辞書を引けば英雄、小説・物語の主人公。という意味合いを持つ単語だ。そしてそれらは何故かとてつもなく強い悪と戦わなければならない事になっており、そして何故か苦戦しつつもヒーローが勝つ事になっている。悪役にヒーローがやられる小説や漫画や映画なんて、俺は見た事も聞いた事もない。もしかしたら俺の知らない何かがあるかもしれないが、あったとしても微々たるものだろう。どうしてかは知らないが、ヒーローというものは強くて格好よいものと相場が決まっているからだ。負けるわけにはいかないのだろう。負けたら格好悪いしな。
そしてヒーローには他にも特筆すべき点がある。それは子供の夢の対象になりやすい事だ。子供たちが七夕の時に書く短冊の中に、必ず五つぐらいは何かしら流行のヒーローになりたいと願う短冊が混じっているはずだ。何を賭けてもいい。絶対に賭けに勝つ自信がある。
実際、俺も小さい頃はその頃に流行っていたヒーローになりたい、と短冊に書いた時もあった。事実、親に頼み込み、泣き落とし、ヒーローグッズもいくつか買ってもらった。無論、金さえ払えばいくらでも手に入る代物で変身など出来るわけもなく、中学生となった今では押入の肥やしとなり埃を被っている。
そういえば遊園地とかデパートでやっているヒーローショーに出演しているヒーローの正体が只のアルバイトのおっさんだと知って、幻滅したのも丁度その頃だったな。昔は本気で本物のヒーローが戦っている。俺達の町の平和を守っている、と思い込んでいた。短いピュアな時代だったな。
もちろん今、俺は中学生だからな。ヒーローになりたいなんて思わない。昔は暮らしの中心に陣取っていたこの格好良い英雄達も、端へ端へと追いやられた。格好悪い話だ。話題に出る事はあっても友達との話の中心になることはない。つまり偶にテレビを見てはいるんだが、グッズを買ったり、短冊の願いになる程ハマってはいない。その程度だ。
そんな状態の俺たちだったが、まさか今更なりたかったヒーローになれるチャンスを与えられるとは思ってもみなかった。きっとありがた迷惑って言う奴だな。いや、きっとではない。絶対だ。俺位の年齢で本気でテレビのヒーローになりたいなどと思う奴などいない。いたとしたら、それはオタクという奴だ。いや、オタクでも思わないな。彼等はヒーローの正体を知っている。それでいて憧れているのだから。ある意味ピュアだという事か。
俺の苦悩は新しく来た校長の一言から始まった。今にしてと言う程ではなく、見た瞬間から変だと思った。就任の挨拶の時に某アニメのモビルスーツを着て登場するんだからな。頭が狂っているのか、と思ったね。
そう思ったのは当たり前だが俺だけではなかった。クラス中、いや学校中の人間の頭にクエスチョンマークが無数に湧き出ただろう。校長が出た途端、静かだった校内が騒がしくなったんだからな。変な校長の変な所は格好だけではなかった。第一声があれだぞ、あれ。まともな事くらい思いつかないのかねぇ。
変人の校長の第一声はこれだ。
「この学校はヒーロー学園に変わりました。皆さん、頑張ってヒーローに、悪役になってください」
聴いた者全ての思考を麻痺させる迷言というのが存在している事を俺は、いや俺達はその瞬間に知ったな。とはいえ、言っただけなら痴呆症に掛ったのか、子供の頃の精神を持ったままの傍迷惑なおっさん。ほんの一握りの奴からは熱狂的な支持を受けても、俺を含む大部分のマトモな人種には相手にも為れない。無視される。ついでに馬鹿にされる。それで済む話だ。
だが、奴の恐ろしさは言葉だけでは終らなかった。しかしそれを俺達が悟ったのは、校長のとんでも発言の翌日からで、その性でこの世界の危うさと不確かさを覘かされてしまうとはこの時の俺達は知る術がなかった。知ってたら俺は、無断転校を決行したに違いない。
次の日、俺は運が良かったのか、はたまた運が悪かったのかは分からないが、そのお陰で校長の第一声の意味を学校に着くまで気付かなかった。ただ言わせてもらうなら、間違いなく俺は自分の事を運が良かったと思っている。あんな馬鹿騒ぎの中心に無理矢理入れさせられる奴なんて運が悪いと言うにはあまりにも簡単過ぎやしないか、と例え誰かに言われたとしても俺は巻き込まれた人々を運が悪かったとしか言わないだろう。それに思わないだろう。俺の脳はややこしい事を考えるのを随分前に放棄して以来、再び利用する目処が立っていない。
問題は翌日の学校、おまけに俺のクラスで起きた。俺は教室に入るなりすぐに異変に気付いた。そりゃあクラスのほとんどが某アニメに登場するキャラクターの格好をしていれば誰だって変だと思うだろう。あの日の俺も同じだった。だが変だとは思っても、まさか原因が変人の校長にあったまでは気付かなかったがな。気付くわけがないだろう。まさか前日の校長の台詞が冗談だったんじゃあない、なんて。
クラスメイトの中のコスプレをしている連中に話を聞いてまとめたのがこれだ。
どうやら彼彼等彼女等は朝起きて自分が夜寝る前に着ていたものとは別のものを着ている事に気付いたらしい。それがその某アニメのコスプレ衣装であり、何故かそれには手紙が付いていて、色々と指令が書かれていたらしい。
指令が書かれた紙を持ってきている人も何人かいたのでついでに見せてもらったが、バラバラだった。簡単に学校を救え、と書かれているものもあれば、何時に何をして何時にどこへ行く、等と事細やかに書かれているものもあった。何故か白紙のもあった。プリントミスという奴か。それとも炙り出したり、水に漬けないと文字が現れない、という奴か。
まあここまでも十二分に異常事態には変わらないが、大目の大目に見て、ここまでは良しとしよう。もしかしたら父母兄姉弟妹の誰かが、かなり悪趣味な悪戯を仕掛け、それがたまたま同時多発的に起きた。という見解を無理矢理成り立たせることは出来るからな。事実、俺はそう信じようとした。だが俺の僅かばかりの理性がそれを否定しやがった。どう否定したかって?誰だって思う様な事さ。
それを脱いで着替えればいいだろってな。
中にはヒーローだけでなく悪役や女装野郎もいたんだぜ。文化祭時期ならともかく、今時分にこんなまま歩いて学校まで来たらご近所中の噂になるし、精神を疑われるのはアウストラロピテクスでも猿でも分かる。何故彼等がそうしなかったのか。これって真っ先に浮かぶ当然の疑問だろ。
彼等彼女等曰く、これ以外の服を家中散々探しても見付からなかったんだと。有り得ないだろ。だが、彼等彼女等は口を揃えて、好き好んでこんな変な衣装で学校に行くわけがない。これ以外の服が見つからなかったら、これを着ていく以外に方法がないだろう。服がないから、という理由で欠席するわけにもいかないんだから、などと言う。
寝ている間に服が変えられていただと?目覚めなかったのか?しかも家捜しまでされてたのなら、普通気付くだろ!お前等全員熟睡過ぎねぇか?俺なら絶対起きるね。賭けてもいい。
千歩譲って着替えされていたり、家捜しされている時に目覚めなかったと考えてもいい。世の中には睡眠薬や催眠術というものがあるからな。それを飲まされて、掛けられていたとすれば、例え着替えさせられても、部屋でバタンバタンと音を立てて家捜しをされても気が付かないだろう。だがな、自分のがなかったとしても兄姉弟妹や両親の服はあっただろうし、例えなかったとしても彼等彼女等が着ている服を強奪してまでもそれを着てくるべきだと思うのだが、残念ながら俺より良心的な彼等彼女等の脳裏には浮かばなかったらしい。例え姉の分しかなかったとしても、例えそれが女物だったとしても俺はコスプレ衣装よりはましだと思うし、それを選ぶ。それ以前に俺だったら欠席するけどな、と思いつつも、彼らとの議論を諦めて俺は席に着いた。勿論、チャイムの音が聞こえてきたからだ。
この学校では何故かチャイムの音とほぼ同時に教室へと入る教師が多い。あまりのタイミングの良さに外で待ちかまえているのか、とも思ってしまうね。どうせならチャイムが鳴ってから教室に向かえばいい、なんて思ってしまうが、これがこの教師達の仕事に対するプロ意識なのだろうと思ってしまうと何も言えなくなる。
まぁ、そんなどうでもいい事をぼんやりと考えていた俺だったが、担任の教師(女)が入って来た時、一瞬思考回路が停止したね。なんでかというと、だ。その女教師はボンテージ衣装を身に纏っていたからだ。
彼女は恥じらいすら見せず、教卓の前に移動すると、俺たちに質問する暇を与えずに教卓を持っていた鞭で思いっきり叩いた。ビシィという痛そうな音が教室中に響き渡る。
「餓鬼達!これから校長の放送があるから、大人しく聞きな!」
俺は教師の口調を聞いて、思わず耳が狂ったのかと思ったね。その教師はとても大人しくて、間違っても俺達を餓鬼呼ばわりする人ではなかったからだ。
担任の女教師の格好や言葉遣いや態度に疑問を持ったのは俺ぐらいの様で、クラス中のほぼ全員の男子がグラマーな担任の、ある意味ハマり過ぎな格好に喜んでいるし、女子も悔しそうに見ているな。イメクラやコスプレ喫茶に馴染む衣装は、担任に似合っている。場所が場所なだけに浮いているがな。
グラマラスな衣装は、普段の地味な格好からでもスタイルの良さが分かる担任に、とても良く似合っていた。俺もそれは認めよう。だが、そこの臼田に喜多!何膝まずいてんだよ!?お前等。大体お前等は制服じゃないか。後ろで本来忠誠を誓わなければならない奴等が困っているぞ。少しは周りの空気も読め!それじゃあ、まるでお前等が悪の組織の構成員だろ!先生は女幹部か!?それに松尾!ファイティングポーズを取るんじゃあない!いくら某アニメのヒーローの格好をしているからって、それはないだろう。それは。教師に向かって戦いなんて挑むな!これが噂の学級崩壊ってヤツか??
ある意味的を射ているようだが完全に見当違いな俺の感想は、校長の『戦闘開始!』から始まった一連の放送により、尚混迷を極める事になった。担任がたった今下僕を誓ったばかりの即席構成員、臼田と喜多に命令を下したのだ。
「者共!彼奴らを倒しておしまい!」
BGMは未だ続く校長の謎で聞き取れない声。担任の号令の元、臼田と喜多対松尾の戦闘の火蓋がきって落とされたのだった!
始めに仕掛けたのは臼田だった。なんと奴はK1だのヒーローだので見かける度派手な技を使いやがったのだ。見事なコークスクリューパンチだ。だがな、時と場所、そして相手を考えろ。そんな大技出してもクラスメイトは引くぞ。
などと考えた常識ある生徒は残念ながら俺だけだったらしい。一部のクラスメイトは彼等の戦いを見てすらいなかったし、見ていたクラスメイトも引くどころか野次を飛ばしていた。プロレスの試合でも観戦しているのか、お前等。それどころか、いつの間にかクラスメイトの三分の一は教室から姿を消していた。一体どこにいったのだろう、と傍観者を決め込んだ俺がのんびりと考えている時だった。
「ジャンピングキーック!」
二人相手に苦戦していた松尾の声がクラス中に響き渡った。そして奴は叫びながら机に乗り、大きくジャンプした。
待て待て。どちらにとっても危ないし、臼田や喜多から離れているだろう、と思った時、不要な奇跡が起きた。なんと松尾の体が浮いたのだった。よく分からない力で浮いた松尾は、臼田の足下ぎりぎりの所になかなか鋭いキックを繰り出した。
それにしても一体どうやって浮いたのだ、という考えが一瞬俺の頭によぎった。が、それも松尾が大きく後ろに飛び去った時に嫌が追うなしにも気付いてしまった。松尾の服の背中には細くて丈夫なピアノ線が付いていたのだ。そしてそれは廊下へと延び、外に出て確認した所、教室から姿を消していた連中が握りしめていたのだ。
こいつら何をしているんだ、という疑問を持つ程度に常識人だと自負している俺だったが、今までの出来事が全てアリエナイ出来事ばかりだったので、こいつらは裏方かな、なんてアリエナイ発想に至ってしまった。いや待て、どうして裏方までいるんだ。それにどうしてこいつらは何の疑問も覚えずに、そして抵抗すらせずに裏方なんてやっているんだ。
アリエナイ一言で始まった一日だが、当たり前だがまだまだ終わらない。なんと上級生が乱入してきたのだ。
彼等彼女等はよく五人一グループで行動する、ちびっ子だけじゃなく一部の大人にも大人気の某特撮系戦隊ヒーローの格好をしていた。御丁寧に色もそれものの組み合わせだ。赤の衣装を身に纏っているのが女子で、ピンクの衣装を身に纏っているのは男子というのが気になったが、それ以外にも突っ込みどころ満載の先輩達だった。だが当たり前だが先輩達に突っ込むわけにもいかず、今までの流れからいって突っ込んでも無駄な事を学習していた俺は、やはり今日は傍観に徹しようと心の底から思い、必殺技が飛び交う教室の端を陣取り眺めていた。事実、俺の他に幸運にも謎めいていて、意味不明な役割を与えられなかったクラスメイトが端に固まり、傍観を決め込んでいた。そして俺達傍観者はヒーローが派手に攻撃を繰り出すのやら、裏方が汗をかき必死扱いてピアノ線を引っ張る光景を、頑張っている人々には申し訳ないのだが、欠伸をしながら見守っていた。
おっ先輩ズ。何かボールを取り出したな。何でこのタイミングで仲間全員でパス回しした後、敵にシュートするんだ?教室でサッカーをするのは礼儀知らずだぞ。机を投げた!反則技だろ!それに机にロープなんていつ付けたんだ!?本気で危ないだろ。誰か大怪我をしたらどうするつもりだ。
現実にヒーロー対敵の構図を見せ付けられると百年の恋も冷めるな。多勢に無勢。あれじゃあヒーローの方が悪者じゃあねぇのか?どんなヒーローものでも言える事だが、いくら後ろに何十だか何百の構成員がいても、闘う時は敵一人対ヒーロー複数ばっかだろ?それっていじめだろ。校長が率先してやる事じゃあねぇよな。教育に悪いぜ。未だに続く、意味不明な校長の放送演説にも呆れる。俺ん中では校長の評価は-500%だな。
学生の本文の勉強はどこに行ったんだ?日常よ。戻って来てくれ。普段は真面目に聴く気がこれっぽっちも無いが遠い日を懐かしむが如く、無性に授業が受けたくなった。これが校長の狙いなのか。いや絶対に違うな。が、それは無理なんだろうな。こんな状況じゃあ、教師がいるにも関わらず自習決定だろうな。教師自身が悪の幹部なんだし。
そう思って担任がいるであろう黒板の方を向くと、体のあちこちにチョークの粉を付けつつも教科書の解説をしていた。はっ?アンタが蹴仕掛けときながらそれってありか?しかも『テストに出ます』と赤字でデカデカと書かれているし。ちょっと待て!それは無いだろう。消すな、消すな〜!!
心の中で絶叫しながら黒板を見つめた俺だが、時すでに遅し、グラマラスな担任が書いた綺麗な文字は俺の心の声を無視して無情にも担任の手によって消されてしまった。今更遅いかな、と思いつつも慌ててノートやら教科書やらを取り出そうとしたが、俺はそれすら出来ずに固まってしまった。俺のノートや筆記用具一式が入れっぱなしの机は、頼にもよって戦闘の中心に置かれていたからだ。もしかして先輩達によって投げられた机は俺の机だったのか。
俺にどうしろと?あれは無理だな。諦めよう、と俺の頭に悟りにも似た想いが現れたのも無理はない。
先輩達と松尾対臼田と喜多という正義が一気に増えた戦いと言うよりもいじめという方が近い集団。そしてそれらを影ながら支える何人かの生徒。そしてそんな彼等を無視し、授業を進める担任とクラスメイト達。こんな状況に馴染むために、自分がどうすればいいのかを即座に判断出来るわけがない。
そんな時だった。どうやら先輩達と松尾は勝利したらしい。臼田と喜多は今時テレビの古臭い悪役でも口にしないような、黴が生えた所ではなく、化石化し、燃料になってしまったくらい古い台詞を吐いて教室から飛び出した。
おいおい待て。まだ授業が終わってないのに、教室から飛び出てどうする気だ?そして先輩達も!一仕事終わったと思うのはいいが、散らかった教室を放置して去るのはやめてくれ!先輩だからといっても、酷すぎるぞ。せめて自分達で散らかした部分は片づけて欲しいし、手伝って欲しい。というか手伝えよ!!
そして担任!何勝手に授業を終わらしてんだよ!クラスメイト達も!何で帰る準備をしてるんだ!まだ一限が終わったばかりじゃあないのか??
数々の俺の疑問はすぐに理不尽な校長の『従業終了!』という言葉で片づけられた。そしていつの間にか校長の演説が流れなくなり、静寂を取り戻していたチャイムが鳴り出したのだ。これは、蛍の光か。ってなんで蛍の光なんだよ。これじゃあどこかのプールとか公共施設みたいじゃあないか。蛍の光が鳴り止むと校長が一言だけ言った。
「本日の授業は終わりです。明日ヒーローに当たった人は精一杯善事に、悪役に当たった人は精一杯悪事に励むように。以上!」
以上!って、んなのでいいんかい!
「ちんたらすんな!さっさと帰りな!」
担任が鞭で床をビシバシ叩き、俺達を急き立てる。
はぁ…早く帰れるのがこんなに嬉しく無いなんてな…鞄を背負って廊下を重い足取りでトボトボ歩く俺を、さも嬉しそうに走って行く同級生や上級生達。制服と通すには無理がある色取り取りのヒラヒラのスカート。生地が伸びきったスーツに身を包んだデブ。あっちは怪人の着ぐるみか?どうやら、あんな馬鹿騒ぎをしていたのは俺のクラス以外にもあったらしいな。言い知れぬ虚脱感を全身に感じる。何でみんなあんなに普通に対応しているんだ?俺の方が異常なのか?自然と視線は下を向く。
そして下駄箱から靴を取り出し、踵を踏みつつ歩き昇降口を一歩出た俺の前に飛込んできたのは高さ十数メートルはありそうな巨大ロボ。まっ、まじですか?
俺は真っ直ぐに帰ろうとした臼田と喜多を捕まえた。彼等の謎の行動について聞くためだ。本当に聞きたいのは奴等だけではなく、ボンテージ衣装なんか着込んでいた担任、そんな担任に勝負を挑んだ松尾、その他諸々のクラスメイト。全員に話を聞きたかったが、聞きやすかったのが臼田と喜多だったので、俺は奴等を選んだ。
それに奴等はおそらくだが担任の格好を見て急にこの馬鹿らしいショーに参加したのだろうと思うし、その辺りも突っ込んだ話がしたかった。だれだって思うだろ。もし明日もあんな事態が起きて(実際校長はほのめかしていた)もし再び部外者だったとしたら自分はどんな行動をとればいいのだろうか、とな。
そんな変なことを考えていた俺だったが、臼田も喜多も俺の疑問を粉砕するだけの答えを持ち合わせてはいなかった。それどころか俺の中にあった疑問は最低三、四倍に膨れ上がったね。
奴等の答えはこうだ。担任がかなり色っぽくて、従いたかった。別に家に指令等の紙があったわけではなく、教室で担任を見て決めたことだ、と。例え明日も変な事態が起きてまた自分が部外者だったとしたら気に入っている女の子の味方に付く、なんて事を奴等はいけいけしゃあしゃあと言い放ちやがった。
踊る阿保に見る阿保。同じ阿保なら踊りゃな損損。ってか?お気楽性格野郎共が。まあいい。もし明日以降もあんな事があるとしたら、て恐らくあるだろうな。俺は通行人B、もしくは野次馬Dにでもなるさ。間違っても参加などしてたまるものか。
っと意味不明な決意表明をした俺だったが、それが次の日に打ち砕かれるとは思ってもみなかった。おまけに予想外の人物が関わっていたと、今の俺に想像出来るはずがなかろう。分かっていても、どうしようもないんだがな。