トロピカル学園高等部2年4組❷ワタチは阿保ダラ。ダラダラしているのがいいの
❷ワタチは阿保ダラ。ダラダラしているのがいいの
身長が百三十一センチ胴長短足でポッチャリ顔の女子高校生がダラダラダラダラと歩いています。
この女子高校生こそ、時間の概念がない琉球王国出身の阿保ダラなのです。
担任の大泉京慶先生がその後ろから何も言わずに我慢、我慢。付き添っているのでございます。
そうしていると、当然ながら、同じトロピカル学園高等部の女子生徒が次々とこの二人を追い越していくわけです。
その追い越す際には、大泉先生には必ず挨拶をしていきます。
「大泉先生、おはようございます」
大泉先生の空手三段、合気道四段、柔道二段は伊達ではございません。
大泉先生は、男性教諭よりもコワ~い存在なものですから。
ですから、大泉先生に逆らうなど愚の骨頂なのでございます。
二十人くらいに追い越された頃でしょうか。
昨日、中国の南京から転校してきたばかりの安本丹がやって来ました。
「アチョー! トロトロしないで早く、早くぅ。遅れるわよ~。アイヤー! イライラするわねー」
と言って、阿保ダラを担ぎ上げて走り出しました。
大泉先生は、あっけにとられて、
「あの娘、一体、何なの?」
と叫んでおります。
大泉先生も負けじと走って、阿保ダラを担いだ安本丹をひとまず追いかけます。
しかし、昨夜のお酒が祟ってか大泉先生は校門に着くや否や、お腹が痛くなってきてトイレへと一目散に。
もう安本丹や阿保ダラどころの話ではございません。
大泉先生はとりあえずトイレに入ったまでは良かったのですが、この時、肝心のトイレットペーパーが切れていたのでございます。
大泉先生が、
「誰かいないの? 誰かいないの?」と大きな声で連呼しますと、
「何かございましたか?」という野太いおっさんの声。
大泉先生は誰か居たことにひと安心したようで、
「すみません。あの、ティッシュペーパーが切れているの。このご恩は絶対に忘れませんから。お願いします」と懇願しました。
「もしかして、大泉先生ではございませんか? ハハハハァ」と何とも奇妙な笑い声。
大泉先生は恥も外聞もなく、
「そうよ。大泉よ。笑っていないで早く~」
と言ってのけました。
「分かりました。今回の件は校長先生にはご報告しませんので。ハハハハァ」。再び奇妙な笑い声が聞こえてきました。
それからすぐに、大泉先生のいる個室トイレの便座の方へコロコロとティッシュペーパーが転がって行きました。
「今の声の主は、もしかして……」
それよりも、大泉先生がトイレから出て来てビックリ。
なんと大泉先生が用を足した場所が、職員専用の男性トイレだったのです。