第87回 ハーレー和尚のメタル数珠
11月10日
村の住職、爽海和尚はハイカラで知られる進歩的なお方です。
今日もはげ頭にコルクのヘルメットを被り、愛車のハーレーを飛ばします
ハーゲーが、ハーレーに乗って、このハーゲー。
一句できたぞ、ヒッヒッヒ!
西で人死にがあれば、急ぎ向かって、ぼんじーソワカー。
東で喧嘩や争議があれば、急ぎ向かって、ぼんじーソワカー。
いやいや坊主、気が早い。
そんな爽海和尚の愛用の数珠が、最近ちょっと、弛んでしまったさうで。
ほんとうはびっちり、数珠玉がくっついていなきゃいけないものが、2コ分ほど、隙間があいてしまっています。
こういうのは、ちょっとした変化で使い勝手が変わってしまうもので。
お経を読んでも、いまいちノれません。
うまく、まわらない。
ヒモを切って締め直せば、物理的にはカンタンに直せるのですが。
数珠というのは108の煩悩を閉じこめた法具なので、おいそれとはヒモを切ったり、できないのです。
封印がとけてしまう。
数珠がいまいち使いからいので、なんとなくすっきりしない日々を送っていた、和尚。
ある日、本堂に朝の勤行へ向かいますと、入れ違いになんと、たぬきめが。
のそのそのそ。
はて。
首を捻りながら和尚、中へ入るや、経机の上に。
和尚の数珠が、スタンドバイ。
気のきくたぬきめじゃの。
拾い上げた和尚は、ややっ。
いったいどうやったのか。
数珠の弛んでしまった2ツ分の隙間に。
ピッタリと、2ツのパチンコ玉がはまって、銀ピカピカに光っています。
やれ、器用なたぬ公め!
さすがの和尚もたまげましたが、よく見てみれば、よく見てみるほどに。
逆にこれ、イマくね?
イカス。
気に入りました。
和尚はパワーアップした数珠をふりふり、木魚ポクポク、ぼんじーソワカー。
うむ、この数珠はいいぞ。
よく回るし、手に馴染む。
これなら経のノリもいい。
人生とは、そう、この数珠の如く。
めぐりめぐって、いずれは輝く日が訪れるものなのディス。
ナムナム、マグナム、ぼんじーソワカー。




