表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トゼンサウ  作者: ナルサワパン
里緒奈の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/3083

Ex. アンティキティラ

すごくすごく、かつてないほど昔のことです。

カミサマは、とてもすばらしい機械を人々にお与えになりました。

すばらしい機械は、それはそれはもう、すばらしい機械でしたので。

掃除、洗濯、ビデオの予約、思いつくかぎりのことは、なんでもできましたし。

どんなものでも、造ることができました。

人々は、すばらしい機械をそれはそれは便利に使い。

それはそれは、便利に暮らしておりました。


しかし。

便利になればなるほど、より多く。

より速く、より様々なモノを際限なく求めてしまうのが、人間の困った性分というものでして。

すばらしい機械はもちろん、カミサマがお造りになられたそれはそれは、すばらしい機械だったので。

手入れ要らずのメンテナンス・フリーに造られておりましたが、それはあくまで、適切な使用法で適切に使用した場合のお話。

欲に駆られた人々は、次第に無茶な使い方をするようになり。

やがて、いつしかすばらしい機械は、めきき、ばききと異音を立てて動くようになっていきました。


古代のハカセはメガネをクイッとやりながら。

このままではきっと、すばらしい機械がこわれてしまう。

そう、人々に訴えました。

しかし、古代のえらい老人たちは、まだ動くから、問題ないべい。

ただちに影響はない。

ハカセの訴えをゆとり世代特有の悲観的展望と断じ、すばらしい機械により高い生産性を求め続けました。

すばらしい機械はいよいよ。

時折、ガタン、バタンと止まるようになり。

とてもとても、すばらしい機械とはもう呼べないありさまとなってしまいます。

えらい老人たちは、この機械のことはよくわからんが。

油でもくれてやればよく動くようになるべい。

そう判断し、機械が止まる度にやたらと油を射しました。

機械の中にはどんどん質の悪い油が溜まっていき、複雑な内部の歯車はアッという間に腐食して。

ついに古代のとある風の強い日、機械は完全にこわれてしまいました。


もう二度と動くことのない、それはそれはすばらしい機械だったものを、それでも人々はまだ。

これはカミサマのお与えになった、すばらしいものなのだから。

そういって後生大事に抱え、なんとか便利に使おうとします。

これ、ここ、ここ。

このハンドルがまだ回るから、これを回して粉を挽こう。

ああ、便利、便利。

これ、ここ、ここ。

ここのフタがパカパカするから、これを使ってモチをつこう。

ああ、便利、便利。

あげくの果てに人々は、かつてはすばらしい機械だったものをヘルメット置き場として、便利に使い始めました。

そんな人々の姿を見て、古代のハカセは眉をひそめ。

愚か。

メガネをクイッとやります。


やがて何百年もの時が過ぎ。

地上の人々がすっかり、すばらしい機械のことを忘れてしまった時代のこと。

長い長い長い間、ずっと土の中に埋もれたままだった、すばらしい機械が掘り出される日がやってきました。

現代のハカセはメガネをクイッとやりながら。

これはなんとすばらしい、絶後の大発見だ。

古代では、ヘルメットが流行っていたことがわかったぞ!

現代の人々は、すばらしい、すばらしいとハカセの発見を讃えます。

現代のハカセは、そんなことはありませんよ。

メガネをクイッとやりながら、謙遜するのでした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ