表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トゼンサウ  作者: ナルサワパン
葉月の章
7/2979

国際化社会をマスオに生きる。

8月22日


いつもすれ違うお兄さんが、今日は自転車に乗っていて。

外人になっていた。

真っ白い肌にブロンドのキンパツで、鼻タカダカ。

なんだろう。文明開花だろうか。

国際的ですね。

それとも、あれか。いつもすれ違うぼくが自転車に乗っているものだから。

くやしくなってしまったのだろうか。

自転車は文明的だからね。

しかし、だからといって外人になるなんて。

国際的ですね。


外人のお兄さんは自転車に乗りながら、半ズボンで。

色が白いものだから、ぼくはフランス人だとばかり思ってしまって。

「ユンヌボワチュール」とフランス語で思ってみたのだが、伝わらない。

こんなこともあろうかと、せっかくフランス語を勉強しておいたのに。

苦手なんだろうか。

スペイン人なんだろうか。


「ソモスヒターノス」と念のため、スペイン語でも思ってみたのだが。

伝わらない。

スペイン人でもないだなんて、いったいどこの人なのだろう。

昔は外国といえば、中国とインドだけだったものだが。

ちょっと前にフランスとスペインが増えて、今はスリランカとジャワもあるのだっけ。

国際的ですね。

ジャワというのはパンダがいる国だったかな。

さすがに華族のぼくでもそんな南の国の言葉はしゃぺれないよ。


そういえばいつもジャワ人は、いつも信号を無視して行ってしまうのだけれど。

今日はずいぶんと長居をしているな。

そんなに止まっていたら、根が生えてしまうよ。

こんなところにジャワの樹が生えたら、熱帯雨林になって異国情緒があふれてしまう。

地球の傾きがおかしくなって、日本が温帯から亜熱帯に移行しつつある今日この頃。あなたはいかがお過ごしです、か。

海の向こうでは戦争が始まり、空の向こうからはごらん、嵐の気配。

蒸した大気が熱い雲を運び、大地を叩くスコールは生きるものたちへ平等に恵みを与える。

夕暮れ、遠くにケチャの音。

笛とタイコにあわせてジャワ人が、トントン拍子をとりながら。

黒くてひょこひょこ歩くあいつらを。

ローキック。ミドルキック。

ローキック。ミドルキック。

次々と蹴り倒して行きます。

こら、やめないか。

気持ちはわからなくもないけど。

そんな酷いことをしたら、だめじゃないか。

いくらジャワ人だからって、やっていいことと悪いことがあるぞ。

やめたまえ。


信号が変わったので、ぼくは先に進むけど。

ジャワ人は蹴り倒した黒くてひょこひょこ歩くあいつらにすっかり埋もれてしまって、あれではもはや動けまい。

ああ、どうしてこんなことになってしまったのか。

もう、根が生えてしまうよ。

来年にはきっと、立派なジャワの樹が育つことだろう、それでも。


ぼくは、昔のあなたの方が好きでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ