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トゼンサウ  作者: ナルサワパン
里緒菜の章

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今日も缶コーヒーは飲めない

10月15日


夜中に目が覚めたので、たまには夜を歩いてみようかと。

思ったのに目が覚めたら、いつのまにかすっかり朝じゃないか。

さむいとどうも、眠りがふかくてこまります。

こんなことでは、宇宙人が来たって気づかないぞ。

夜を歩けなくてくやしいし、雨もざぶざぶにふっているし。

濡れたくないのでもう出歩くのはやめにして、トイレにいきます。

そうだ、トイレに行くついでに缶コーヒーを買いに行こう。

昨晩は眠くて、缶コーヒーが飲めなかったから。

思いついたので、コンビニのトイレにいきます。

なにかまちがっている気がするけど、コンビニのトイレにいきたくなってしまったのだからしかたない。


コンビニのトイレには貼り紙がしてあって。

詰まりやすいので、あまり流さないでください。

今どき、めづらしいな。

むかしの電車のトイレなんかは、そうだった。

電車の進む方向と反対側に加速のGがかかるからね、水洗式だと、水が下にあまり、ながれない。

慣性の法則ってやつだ。

宇宙船でボールペンが使えなかったりする、あれですね。

きまりだから、しょうがない。

ぼくらが若い時分には、電車のトイレではがんばって、ちょっとづつ流したものです。

でも今は新幹線の時代だから、技術の進歩でカイゼンされたはずなんだけどな。

ふむ。

このコンビニのトイレは、国鉄なんだろうか。

いや、どうやら違う。

いかにも怪しいパネルがあるから、コックピットだ。

あれでコントロールするんだ、知ってる。

さてはこのコンビニ、宇宙船だな。

航宙時は水が貴重だから、こうやって、セツヤクしているんだ。

いつも同じ人しかいないから、おかしいとは思っていた。


ぼくがトイレを操縦していると、このトイレにはあまり居座らずにはやく出ろという貼り紙が目にとまります。

うむ、長居は無用だ。

変な星につれていかれては、たまったものではないからね。

ぼくはライチティーだけを買って、そそくさとコンビニを出ました。

外はまだ雨が降っているから、どうやら地球にいるようだ。

ちょっと期待していたんだけどな。

やっぱり、地球がいちばんです。

さあ、家に帰って午後まで寝よう。

宇宙人が来ると困るから、忘れずに鍵もかけよう。









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