第282回 ハンコウ鬼
5月24日
目線のさきに、しばいぬがいて。
ぎょっ、として、見直します。
なんだ、ガードレールか。
ガードレールが、しばいぬにみえるなんて。
世界もいよいよ、おしまいです。
否。
ガードレールのくせに。
しばいぬになるなんて、やるじゃないか。
ぐうぜんですが。
ぼくは正体を、みぬいてしまった。
ガードレールは、しばいぬです。
ガードレールにそってすすむと。
ハンコ屋の、カンバン。
うむ。
カンバンがあるのは、しっていましたが。
きょうはびみょうに、ガードレールがあいていて。
はいれます。
あれだ。
しばいぬになって。
どこかへいって、しまった。
ガードレールは、ハンコ屋の手下です。
うむ。
カンバンがあるのは、しっていましたが。
いつもはふさがっている、ガードレールの奥に。
ハンコ屋じたいがあるとは、知らなんだ。
ハンコなぞ、別にいらないが。
カバンに3コ入っているし。
ご招待されている気がするので、いってみます。
しかし、なんだ。
ずいぶん、ちいさいな。
ハンコ屋のほうが、カンバンよりちいさいじゃないか。
これでガードレールがしまっていたら。
ぜったい、気がつきません。
カンバンを出さなきゃいけないワケです。
これは、しっぱいだな。
構造的欠陥がある。
広告費、お高いでしょう。
ちいさなハンコ屋のなかでは、ちいさな鬼たちが。
一生懸命、ハンコをけずっています。
ハンコ、ください。
200円です。
なんだ、お金がかかるのか。
渡る世間は鬼ばかり。
せちがらい、よのなかです。
さて。
手にいれたハンコを、せっかくなので、おしてみたい。
おお。
ちょうどよいところに、ガードレール。
白が朱肉の赤に映えます。
おしてみよう、えいや。
柴犬
なんだこのハンコは。
ぼくは、しばいぬじゃないぞ。
こんなもの、つかえやしない。
きっとハンコ屋の鬼どもめ。
これしか漢字を、しらないんだ。
儲からなくて。
店がおおきく、ならないわけです。
ハンコをおされたガードレールは、しばいぬになってしまって。
こうやって。
しばいぬが、ふえるわけだ。
さいきんブームだしな。
かわりにガードレールが、へっていく。
交通事故が、ふえる。
鬼どもの。
人類を滅ぼす、遠大な計画はすすんでいます。
世界もいよいよ、おしまいです。