百舌鳥の声
9月11日
家の前に、尖った三角が3つ、並んでいて。
なんだろう。
こわいな、きっとあれだ。
捕まえた獲物を刺しておくやつ。
保存食とか、宗教的な生け贄とか、諸説ある。
ほら、案の定、ロボットがうわばきの入った袋を吊るして処刑してる。
忘れ物です。なんて紙をつけて。
洒落た真似をする無機物だ。
持ち主も処刑してやるぞとか、そういう意思表示に違いない。
ロボットがこっちにきたのでぼくは隠れて見ていると、家の横には白くて光る、丸い頭の人がいて。
さては、処刑人だな。
がんばれ、ロボット。
がんばれ、ロボット。
ロボットが勝ったので、安心して仕事に行けます。
空にはなぜか、七匹くらいくじらさんがならんでいます。
くじらさんだと思うのだけど。
カツオには見えないから。
ぼくを迎えに来てくれたのかな。
そっちへ行こうとすると、くじらさんはどんどんうしろに行ってしまって。
追いつけやしない。
風が吹くと、灰色がどんどんちぎれて。
ちぎれたくじらさんたちは、どんどんバックオーライ、バックオーライ。
くじらさんがいなくなった空は、意味もなく青く、澄んでいて。
くじらさんに見棄てられたぼくたちの世界は、無機物の支配する静かで美しい星になることででしょう。
かなしくなったぼくは、ロボットを処刑してしまいます。
三角が3つ埋まったから、これでしばらくは誰も処刑されない。




