第2217回 武士の言い分
9月10日
いや、最初はフツーに一本だったんよ。
アレね?
刀ね。
だってさ。
足りるじゃん、一本で。
一本あれば十分じゃん。
いらないじゃん、予備とか。
折れた時の準備とかさあ。
俺たちはほら、武士なワケじゃん。
刀折られた時点で負けっつーか。
折られてんじゃねーよってハナシなワケでさ。
士道不覚悟ってやつでさ。
だから最初一本だった。
俺らが武士はじめたころはね。
まあ、いたけどね?
中には二刀流とかいって。
二本もってる宮本とかさ。
あれはあれ。
あいつはいいんだよ、天下無敵だし。
ていうかさ。
重いんだよ、刀って。
2kgくらいあるんよ。
だって鉄の塊だぜあれ。
そんなんねえ。
二本も腰に差してたら。
骨盤歪むわ。
寿命縮むわ。
だから戦前の日本人は背が伸びなかったんじゃね。
だからね、イッポン。
最初はフツーにみんな一本。
一本しか差してなかったワケよ。
俺らが武士になった頃はね。
で、なんでもそうなんだけどさあ。
いるわけよ。
後からきて、なんでもかんでも文句言うやつ。
一本差しとかださくないすか。
なんで二本じゃ駄目でござるか。
二本じゃ駄目なんですか?
いや、いらんやろ。
いらんやろって言ったんだけどね。
俺はね。
でもそういう若いやつらってのはさあ。
ダメっていったらいけないんだよね。
なんで駄目でござるか。
それってあなたの感想ですよね。
何かそういうソースでもあるんですか。
とか言い出して、まるで言うこと聴きやしない。
なんでもかんでも噛みついてくる。
脳ミソ火炎兵スラッグかよ。
おれスラッグなんでもかんでもきらいだ。
もうね、自分の意見が否定されたー!ってことしか頭にないのね。
だって、いらんやろ。
重いし。
骨盤歪むやろ。
元気な赤ちゃん産めなくなるでーって。
そしたら今度はセクハラだーと、きたもんだ、みのもんた。
もう勝手にしろや。
そのうち重くてやめるやろ。
そう思ってと放っておいたら、アホみたいにずっと差してる。
二本ね。
重いのに。
意地なのかねえ、ああいうのは。
その頑張りはもっとほかの、仕事でみせろと思うんだけどねえ。
まあ、俺たち武士だし?
毎日城行ってござるとか言ってるだけで、頑張る仕事もしてないけどさあ。
で、なんでもそうなんだけどさあ。
いるんだよね、『上』の人に。
まあ、俺らの場合はフツーに上様なんだけどさあ。
そういう、若い連中の意見を一方的に否定イクナイ(・A・)。
俺は若者の意見に理解あるよぶりっこしたいやつね。
まあ、上様なんだけどね?
秘密な。
こんなこと言ってるのバレたらクビだし。
リアルに打ち首だからね、俺ら武士だし。
で、上様が決めちゃった。
二本差してもええんちゃう?って。
上様がそう言っちゃったからさあ。
若い連中は我が意を得たとばかり。
ほら見ろ、上様がええよ言うとるやないけ。
俺らの方が正しいやんけ。
はい論破。
てなもんや具合で『差してもいいよ』だったのが、『差さなきゃアカン』に変わっていった。
そういう空気に変わっていった。
そこが日本企業のダメなとこ。
同調圧力ちゆうかさあ。
村社会っちゆうか。
まあ、俺武士でござるし。
海外企業に勤めたことないからワカランですけどね?
どんなアホみたいなことでも、『みんな』がやりはじめたらそれがルールになっちしまう。
朝、おはようでござるおはやいでござる。
言わなきゃ無礼で打ち首くらい。
刀は二本差すもんだ、みのもんた。
それが社会のルールで常識。
そういうことになっちしまった。
なった以上は俺も武士だし。
二本差すから重いわけ。
挙げ句に『それってなんで二本なん?一本でいいじゃん?重いやろ』。
そういうふうに聴かれるし。
うるせーよって。
こっちも好きで二本差してねえよって。
ああ、ごめん。
気ィ悪くせんといて。
別に君に文句言っとるんと違う。
不思議に思うもんね、そりゃあね。
武士じゃない人たちから見たらね。
はあ。
でももう、なんかヤになってきたなァ。
いい加減武士なんかやってると、チョンマゲあたまで因循姑息。
歌とか歌って馬鹿にされるし。
君らはいいよなあ、刀は背中に背負っていいし。
一本だし。
卑怯な手とか使っていいしね。
え、そうでしょ。
だって士道不覚悟とか言われないじゃん。
違うの?
ふん、こっちはこっちでいろいろある。
なるほどねえ。
で、そっちの暮らしはどうよ。
カナダでしょ。
日本より楽?
いいなあ、俺もそろそろ武士なんてやめて。
カナダでニンジャになろうかなあ。
え、そんないいもんじゃない?
ニンジャもモンジャも苦労はあるよ?
そうだよねえ。
世知辛れえなァ。
あ、そろそろスマホの充電切れそうだから。
またデンワするわ、またね。
はーい。
はーい。




