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トゼンサウ  作者: ナルサワパン
疾風!!小田原陣の章
223/3029

Ex. ひよこれある


まど屋さんに、ひよこさん。

やってきました。

「やあ、これはこれはこれはひよこさん。ようこそおいでくだすった。」

いなせな親方さんが、ひよこさんをむかえます。

「レアルマドリードに、ちょうせんしたいです。」

ひよこさんが言います。

「へえ!れある…?まど、リード。」

親方さんは、感心した顔。

「そいつぁすげえや。さすがはひよこさんだ。」

うんうんと、頷きます。


「レアルマドリードには、どうすれば、ちょうせんできますか。」

ひよこさんがききます。

親方さんは、ちょっとこまった顔。

「れある、れある、うーむ。れある、ってなぁ、英語?ですか、ねえ。」

腕組みして、あたまをひねります。

「おいヤス!おめぇ、大卒だから英語くわしいだろう。れある、てなあなにか、知らねえか。」

親方さん、お店の奥へ声をかけます。

「へぇ。」

若い衆の、生返事。

「なんか。サッカーとか。そういうやつじゃあ、なかったですかねぇ。」

「サッカー?」

親方さん、眉毛をへの字にさせて。むーんとだまって、しまいます。

サッカーだとか。そういった若者文化、親方さんは、苦手なのです。

親方さんは、苦手なのですが。

じっとみている、ひよこさん。その期待、むげに裏切るわけにもいかず。

なにより。「まど」のことで退いたとあっちゃあ、この、まど屋の名がすたる。ってなモンで。

「ようがす。あっしにまかせてくだせえ。」

どんと胸をたたいて、きもちよく引き受けます。


その日から。親方は苦手な英語や、サッカーのことを一生懸命、勉強しまして。そして、1か月後。

ついに、サッカーボールのような白黒まだらの、まん丸い1枚のまどが完成しました。

白い部分と、黒い部分。2色のガラスを組み合わせ、接合部は滑らかに、かつ、脆くならぬように。

色ガラスの透過光は冬はあたたかく、夏はすずしく。ほどよい加減、よい加減。

そういった機能性の高さに加え、中世のステンドグラスのような、芸術的な外観を有し。

長らくまど屋を続けてきた、親方さんの、渾身の、一作。

それはそれはすばらしく、完成度の、高いまどです。


「これが、レアルマドリードですか。」

ひよこさんがまどを、見上げます。

「さいです。こいつがれある、まど、リードでさあ。」

なかなかのもんでしょう。親方さんは、満足げな顔。

まん丸まどから午後の陽ざし。床に白黒、まだらの影。

うーん。

れある。まど、リード、かぁ。

惜しいようで、近くない。

この人たちは、結局。

とんだ勘違いで、とくにやらんでいい努力をしてしまったわけですが。

どうもぼくは、こういったものが、きらいではない。

らしい。


のだぜ?






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