第158回 濃美砂漠
1月20日
おきまして。
おはようございます、お早いですね。
地上におりようとしましたら、足場がないじゃないか。
ゴミだらけです。
階段から、おりられない。
おりられなくてはなにも始まらないから、無理におります。
ほれ、そこ。
あと、そこ。
そことそこはゴミがないから。
右足は、そこ。
左足は、そこ。
無理な姿勢で、地上におります。
次、右手を赤。
左手ミドリ。
はい、そこで国家斉唱。
あーあー、偉大なるう、ガレム総統、さまー。
ヒザがめきり。
ぎゃあ。
朝からばかなことをやっているんじゃあない。
おかげで、ヒザをやられた。
まったく、なんでこう、地上にはゴミがふえるのでしょう。
たしか正月に、全部かたじけたはず、なのですが。
人が生きていくということは、ゴミを出すということなのでしょう、か。
人の存在そのものが、ゴミを産み出しているのでしょう、か。
人間とは、存在そのものがゴミ、なのでしょう、か。
なんだかぼくは、地球を守りたくなくなってしまいます。
ヒザがいたいし。
しかし、おきるたびにヒザをやられてはたまらない。
ぼくにはヒザは2つしかないのだ。
あと一回しか、チャンスはありません。
かたじけますか、しかたない。
ゴミ袋。
ビスケットしかないぞ。
こういうものはたいてい、必要とするときにはほぼ、かならずありません。
ファッデム。
ゴミ袋を買いに、町へ出ますが。
空は灰色で、ゴミのようです。
ぼくが、かたじけなかったものだから。
ついに空までゴミになってしまった、もうしわけない。
もう一度、いつもの真っ黒なキレイな空を見たいものディス。
いよいよ、ゴミ袋が必要です。
コンビニ。
あら、よさげなパン。
店長、パンをよこせ。
なに、ケーキを食べろ。
ふざけるな。
朝食には、重すぎるだろう。
ふざけていないで、店長、ゴミ袋をよこせ。
なんだ、お高いぞ。
足下見やがって、店長、パンをよこせ。
パンを焼きながら、ぼくは。
きのう買ってきた、本なぞながめていますが。
本のさきには、ゴミ砂漠がひらがるばかり。
さっきあいていたそこと、そこも。
パンのゴミと、店長のゴミで埋まってしまいました。
これでもう、おりられない。
まあ、いいさ。
ヒザはもう1つあるし。
あと一回、まだチャンスがあるってことだ。
ふと、なにかの焦げるにおい。
トースターのなかで、パンが溶けています。
しまった。
モチと、まちがえた。
さいきんは、モチばかり食していて。
パンなぞハイカラなものは、ついぞ食さなかった、ものだから。
パンは、焼かなくてよかったのディス。
文明開化ディス。
これ以上ゴミがふえるとアウトなので、ぼくは溶けたパンをおいしくいただきましたよ。