第124回 訣別
12月17日
きのうから左目に、なにかが入っていて。
きになるな。
ぼくは、マツゲがながいから。
よく入ってしまう。
たいていは、目をぱちぱちすれば、とれるのだけど。
心がかわいているせいか、とれません。
さいきんはやりの、ドライアイってやつじゃ、ないのかな。
ドライもん。
なんでもない。
きになるので、鏡でみてみます。
鏡のなかには、すごいハンサムが。
いつも通りです。
ハンサムを眺めていても、なにも解決しない。
つかえないハンサムだな。
そんなハンサムは、こうだ。
ぼくは左手で、ハンサムの左目をぐいと大きくひらげてやります。
うむ、ちょっとハンサムじゃなくなった。
ハッサムってかんじになりましたね。
ハッサムの左目には、くろい小さな点が、ポチリとついています。
ははあ、こやつだな。
きになっていたのは、こやつです。
ハッサム的には、はやくとってしまいたいのだけれど。
目にゆびをいれるとか、こわいな。
どうしたものだろう。
むしろ、どうしたものだれう。
ゆびをいれるのはこわいので、ハッサム水で洗いながすことにしましたよ。
水を、ぱひぱひ、かける。
とれません。
ふむ。
しつこい、くろい点だな。
水分がまだ、たりない。
心がかわいているせいですか。
お前は、ドライもんですか。
ハッサムちょっとムカついてきました。
左手に水をためて、そのなかで左目を、ぱちぱち。
左目のなかに、大量の水がはいってくるのがわかります。
鏡で、かくにん。
ハンサム。
左手で左目をぐいと大きくひらげて。
ハッサム。
くろい点は、下の方へ移動しています。
水を、ぱひぱひ。
とれました。
鏡のなかでは左目を濡らしたハンサムが、こちらをみています。
泣いてません。
顔を洗っただけです。
ぼくの心はかわいているから。
ハッサムとの別れに、涙もでてきません。
胸がなんだか、ぎゅっと苦しくなりました。