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トゼンサウ  作者: ナルサワパン
里緒奈の章
105/3021

Ex. [第100回記念特別稿 ] 京の都に百鬼、夜を行く。

夜に唄を唄っては、ならない。

唄は夜の闇に何処までも、響き。その深淵から魔なる者達を呼び集める。

古来、唄とは、(うた)い。

言葉は節に乗ることで術となり、この世の(ことわり)から外れた者たちへ働きかける、力を得る。

夜に唄を唄っては、ならない。



京の都の朱雀大路。宵闇に一人行くのは江戸から来た旅のサムライ。

ナンジャモンジャエモンである。

東国出身のモンジャエモン、一人旅の途上で辿り着いた、京の都。見るもの珍しく、聞くもの面白く。

ついつい、食べ、呑み、遊び。夜の都を回るうち、すっかり暮れた、夜の闇。


―さて。宿は、どちらであったか、のう。


ほろ酔い加減のモンジャエモン、上機嫌な足取りで。格子の通りを、練り歩く。


流行りの店から、流行りの唄が。三味に乗って、サノヨイヨイ。

浮かれ気分のモンジャエモン、こちらも合わせて、サノヨイヨイ。

夜の闇に、朗々と。声高々に、響く唄声。

やがて。モンジャエモンの背後に、蛇や蜥蜴や、機械人形。南蛮渡来のきゃべつなど、唄に呼ばれし、闇に属する妖し共が。

一ツ、二ツと集まって、列を作りて、練り歩く。

そうとは気付かず、モンジャエモン。驚き逃げる、猫殿に。


―や。やあやあ猫殿、驚かしてすまぬ。


礼を失せぬ、この振る舞い。酔っても武士は、武士であれ。

威風堂々、歩を進む。


都の通りに響く跫音、ぺたぺた。ぎしぎし。ずるずる。

流れる唄の中を、ぺたぺた。ぎしぎし。ずるずる。


やがて、暁。朝陽は昇りて。


―や、これは、面妖な。


振り返れば、己の来た途。ただ、多数に(のこ)る、異形の足跡。

足許には、きゃべつが、一ツ。

陽のある内には歩けぬ()れを、拾い上げ。

不思議と見詰めるモンジャエモン、朝陽の中で、欠伸を一ツ。





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