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トゼンサウ  作者: ナルサワパン
葉月の章
10/3019

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8月25日


へびがまるまっていて。

へびではなく、なんだ、あれはネクタイじゃないか。ならば落ちていると見る方が自然か。

いや、不自然だな。不自然にネクタイが落ちているなんて、なんだろう。

これがパンツであればねこの忍術だが、ネクタイならたぬきの節約術にでもなるのか。

未来の不思議な道具をなるべくポッケから出さないとか。


あれかな、嫌になってしまったんだ、きっとここで。

気持ちはわからんでもない、ぼくも時々、嫌になってしまうからね。

毎朝ワイシャッツをきてネクタイをしめて。同じ時間の電車に乗って。

ぼくも、かつてはそんなワイシャッツにネクタイをしめて毎日同じ時間の電車に乗る生活にプライドを持っていたものだが。

あれはよくない。そのうちにあたまがおかしくなって、嫌になっちまうよ。

たまにはパンツにネクタイ姿で同じ電車に乗るくらいの変化がないと、ダメだね。クールビズというやつだ。


そう、昨今、やたらとクールビズとかいうのが流行っているようで。

たぬきでもないくせに、節約だからネクタイをするのはよしなさいと言う。

ネクタイは環境破壊でシロクマが死ぬから、節約ではないそうで。

そんなふうに悪者にされては、嫌になっちまうよ。ネクタイだって。

シロクマが死ぬのはネクタイの責任ではないだろう、ぼくはネクタイをしているシロクマなんてみたことがないぞ。


ちょっと行くと今度はおじさんが「タクシー」とか言いながら立っていて。

おじさんはだらしないな、ネクタイをしめていない。

それどころか、素肌にパンツじゃないか。腹も出ているぞ。

そんな格好で立っていたって、ネクタイは迎えにきてくれない。

節約のしすぎだよ、さしずめフールビズというところだ。

ネクタイだって、いくらしめてもらえるとはいえフールビズを彩るなんてごめんこうむるといったとこだろう。

そりゃ、今日からへびだと言い出してまるまったりもするさ。


ビニールハウスの方からは、今朝もにわとりが、クケクックー。

にわとりは毎朝ご苦労なことだな、はたらきものだ。

ネクタイはにわとりにこそ相応しい。

ぼくはネクタイをひろうと、にわとりにしめてあげました。


次の日から、おじさんのかわりにスリムなにわとりがタクシーを待つようになったけど、知らない。


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