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二ページ目:精鋭部隊結成!

野生の男の娘が現れた!ギルディアは意識を失った!


「一体何者だ、ガルシアの者じゃねぇな?」


ごくり、とゼストが息を呑む。まさかこいつガルシア領土の人間全員の顔を覚えてるのか!?とサリナが静かに戦慄していたりした。取って付けたような黒い猫耳に黒のボブショート、黒い半袖タキシードの下にピンクフリルの衣装を纏い、あの位置だと多分ギルディアはパンツを見納めて気絶したと思われるほどの短いスカートのくせにこれでもかというほどフリッフリである。しかも何故か裸足。この場、でなくともかなりのアンバランスな存在。というか属性が多すぎてどこから対処すればいいのかわからなさすぎる。

とりあえず顔面踏まれるとかご褒、もといピンポイントに顔面を両足で踏み潰した彼?彼女?はトン、と軽い調子で大地に足を伸ばした。


「そうだね、俺はガルシアの人間じゃない。あ、一応言っておくとビヒュリアの人間でもないからそこんとこよろしくね」


「な、なんだってー!?」


「明らかな棒読みしてまでリアクション取らなくてもいいよ〜、俺が恥ずかしいだけだから」


にゃはははは、と楽しそうに笑う男の娘。よくわからないがとても楽しそうだった。

そんな楽しそうな男の娘にゼストは大鎌を向ける。首にセッティングした大鎌は少しでも動かせば白い男の娘の首など、ちょっとした力で跳ね飛ばしてしまえそうだ。


「おろ!」


「質問に答えろ。お前は何者だ?」


「ん〜、そうだね、どういうべきなのかな。何せまだここに来たばかりで自分を表す固有名詞、及び記号なんて考えもしなかったからね」


大鎌に怯む様子もなく男の娘は一人でぶつぶつと小言で悩み始めた。しかし、それもまた楽しげに見えた。やがて、男の娘は言葉を紡ぐ。


「そうだね、とりあえずは宇宙人って名前にしておこう」


「.....宇宙人、お前は一体どこから来た?」


ゼストはツッコミを入れることなくそのまま話を進めた。まぁ、ツッコミたい気持ちもわかるけど、一々反応してたら宇宙人の思うツボになってしまうとも考えたのだろう。そういうお年頃なのだろうと勝手に納得することにした。


「そんなことよりもさ、君さっきから俺にこんなことしていいと思ってんの?」


「何が言いたい?」


「俺がその気になればこんな世界簡単に終わらせることができるって意味だよ。俺が一度手を叩けば認識できないままに世界が終わり、もう一度手を叩けば元通りになる」


.....こいつ何言ってるの?ゼストもどうやら同じ考え、まぁ普通であればそうだろう。宇宙人はスカートの裾を持って挨拶するような上品な仕草を取っている。首元に大鎌はまだ添えられたままだ。


「−−−じゃ、試しにやってみるか」


パン、宇宙人が手を叩く。パン、さらに追加で手を叩く音が聞こえてきた。


「はい!今ので世界一回終わったよー!ふっふーん!俺ってば天才じゃね、凄くね!」


「「.....認識できないんだったら確かめる術がないってことじゃ」」


「.................」


「.................」


「.................」


「.................そ、それは言わないお約束だろー!」


結論!何も起こらなかった!☆

宇宙人が涙目で抗議、というか駄々をこね始めた。

ひたすら言いたい放題言った数分後には膝と両手を大地に付けて酷く落ち込んだ様子をしていた。突然すぎることにサリナとゼストはお互いが敵であることを思い出す。とりあえずサリナは罵られた、ではなく話し合いを持ちかけることにしてみた。ダメ元で。


「べ、別に罵倒とか期待してるわけじゃないんだからね!」


「今すぐその首、刎れないんだったよ!ていうか、その前にお前の体は一体どうなってるんだよ!?」


結局、サリナのことは有耶無耶にされたまま話は進められた。ギルディアと宇宙人はしばらく再起動できそうもない。ブルーシートを広げて持参したお弁当と冷えた水の入った水筒を用意してよっこいせ、と腰を下ろす。


「何!?つまりサリナちゃんはあのシオン様の実の姉なのか!」


「そうだよ、もしかして何も聞いてなかったとかそういうオチ?」


「そういうオチだよ、とにかくあんたらをガルシア領土に入れるなとだけ−−−」


「あぁ、やっぱり反抗期だ」


サリナにダメージが入る。誤解が解けて何とかなると思ったのだが、シオンの権力は予想以上に凄まじいもののようだ。


「−−−だが、王の姉ならば待遇を変えないといけないな」


「え?」


「俺があんたをシオン様の元に連れて行く。許可を取ろうと連絡しても答えはわかりきってるしな」


「.....いいの?」


「あぁ、俺の勝手な独断だ。だけど、あんたら姉弟の問題に介入するのも間違ってるかもしれない、俺のお節介だと思ってくれればいい」


ゼストが立ち上がりガルシア王国の方向に目を向ける。組織に所属する者として勝手な行動は処罰の対象である。それでも独断を行えることはゼストがガルシア十三人衆という位置についているのか、はたまた罠なのか。後者の線が強いが、サリナはむしろウェルカムだった。ヒロインがピンチに陥らずに誰がピンチに陥るというのだろうか?あんなことや、こんなことが待ち受けてると考えるとサリナは体を激しく擦らせる。ゼストは引いた。




男の娘、もとい宇宙人はショックを受けていた。調和の間と呼ばれる世界の理を保ち、調停者、この世界でいわゆる神様的なポジションである者が管理する世界の人間に一蹴されたのだ。宇宙人はまだまだ未熟である。この世界に舞い降りたのも興味本位、世界を崩壊させてしまったことの始末書だけが残ってしまう結果となった。


あー、残念!あの世界崩壊の素晴らしき景色が他人に見せられないなんて!!

世界が修復する様も見られないなんて、下界の人間は色んな意味で損してると心の中で嘲笑い鼻くそを飛ばす。


しかし、このまま舐められたままなのも癪である。この調子でサリナ達と別れてしまえば、馬鹿みたいな印象しかあいつらに残らないだろう。プライドがズタズタ、というよりも面子もクソもない。メンタルリセットをして回復した宇宙人はブルーシートを広げて楽しそうにピクニック(?)をしているサリナとゼストの元へと向かう。


「お前ら!聞け!!」


「なんだ、元気になったなチビ」


「チビ言うな!まだ成長期だからこれからどんどん伸びるし!」


ゼストがカラカラと笑う。宇宙人は両腕を回転させながらゼストに突っ込むが片手で阻止される、無様なり。


(こいつらにはまだまだ俺の実力を見せてやらないとな!帰っても始末書が待ってるだけだし、しばらくは下界の愚民と旅をするのも悪くない!)


「じゃあ、サリナちゃん。あのおっちゃんが目覚ましたら出発しよう」


「ごめんね、ギルディアさん一応お供として王様に命じられたから置いていくわけにいかなくて」


「いいよいいよ、焦ることもないし」


実際れーざー☆びーむが放たれるまでのタイムリミットがあるのだが、サリナもそのことはすっかりと忘れてしまっているためゼストには伝わってない。ちなみにゼストもまさか主であるシオン(正確にはゼストと同格のセラフィール)が禁忌兵器を持ち出してるなんてことは夢にも思うまい。あくまでもセラフィールの独断行動の様子だった。


「で、君はどうするの?」


「−−−俺も連れてってください!」


神、及び調停者がプライドを捨ててそれは見事なDO☆GE☆ZAの状態を保ちつつ、KE☆I☆GOを発した瞬間であった。


死神と男の娘が仲間になった。




その頃、ビヒュリア王国。

王座の間にてグラン・ラギュウスと騎士団長カトレア・フォン・ソシャーレアの二人が向き合っていた。騎士団長としてビヒュリア王国を救う最終兵器であるサリナ・コバルトのアパートを訪れ、連行した自身の行動に間違いはないと思っている。王の命令なのだから間違いはない。なのに、何故か王はご立腹だった。自分からサリナを出発させといて、しかもお供にギルディアまでも連れて行かせておいて今更という様子でカトレアは溜息を吐く。


「国王様、一体いかがなさったのですか?先程からご機嫌が優れない様子ですが?」


「仕方ないじゃん、ギルディアいないんだもん」


−−−あ、ダメだこの人。入っちゃいけないスイッチ入ってる。普段厳格な態度で民を圧倒し、交流ある他国の王からは「もう少し愛想良くしたらどうなの?」とか「そんなんだから彼女できねーんだよ!」とか言われたい放題である。実際未だに妻はいない。王族存続に関わるため早めに解決したい問題だが、今は国の一大事なのだ。


「はぁ、思いきってあんなこと言うんじゃなかった」


「全く、しっかりしてくださいよ。あなたがしっかりしなくてどうするのですか?」


「うん、わし頑張る」


グランは思った。目の前にいる美青年にも見える真面目で規律にうるさい女性カトレアの前では絶対に言えない。ギルディアがいなくなって猥談相手がいなくなってしまったということを、一緒に徹夜でソーシャルゲームのイベント周回ができなくなってしまったことを悔いていることなど。

そんなことポロリと一言でも口にしてしまえば、オカンのように怒り狂い何をされるかわかったものじゃない。説教も長い。正座は疲れる。


「では、私はそろそろ鍛錬に行きますので失礼します」


「そろそろカトレアも彼氏作ったら?」


「−−−ブラッディフェスティバルをお望みでしょうか?」


−−−カトレア・フォン・ソシャーレア、28歳独身!貧乳!彼氏募集中!!


悪ふざけで仕返したら怒られた。まだ斬られなかっただけマシだと思うことにしよう。

カトレアが部屋を出たのを確認し、グランはポケットに忍ばせておいたタブレット型携帯を取り出し、ソーシャルゲームのイベント周回へと向かった。そろそろ課金のために経費落とさなきゃな、そんなことを思った昼下がりだった。

余談だが、二日後にビヒュリア王国の税金が15%に上がったとか。




ギルディアが目覚めた、ゼストと和解した。


「ま、ガルシア王国に到着するまでだけどな。変な行動見せるようだったらあんたを真っ先に殺すからよろしく」


「わかった」


まぁ、物騒な雰囲気は消えないが気がつけばパーティは完成していた。

サリナとゼストがブルーシートやら弁当やらを片付け、宇宙人が空を見上げながら何をするでもなく手を数回パンパン叩いており、ギルディアはゼストのことから目を離さなかった。


「.....これが恋?」


「アホか!」


残念、と宇宙人が呟く。片付けが終わり、一行はガルシア王国目指して歩き始める。

全ての荷物をサリナが持ち、その後ろに宇宙人が続き左翼にギルディア右翼にゼストという陣形で進む。勿論、センターであるサリナは自ら名乗り出た。心なしか嬉しそうである。

森を抜け、山を越え、海を渡り、ドラゴンを撃退し、イベント周回で絆を育み、立ち寄った村では農作を手伝い、魔神達との正面戦闘と大冒険に次ぐ大冒険!!


−−−彼らの冒険はまだ始まったばかりである!!

物語の続きは二週間後の世界が綴られる。

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