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起[7]

 オレの人生を振り返ってみると、多くの思い出の中、一つ感慨深い出来事にぶつかる。

 それはとある依頼で、大討伐に出掛けたことの話だ。

 歳は15の頃。

 その頃のオレは、まだ駆け出しに毛が生えた程度でリーダー経験というのはそう多くはなかった。

 改めて説明するまでもないが、大討伐というのはクエストにおいての花形で、冒険者の中で腕自慢が集う。

 当然、成功報酬も破格だ。

 その中での、リーダー決めというのは今後の活躍の中で名を馳せるのに絶好の機会だ。

 結論を言うと、オレ自身は結果的に武勇を残せた事になった。

 ただ、それに至るまでの道は決して平坦なものではなかった。


 酒場で、各パーティのリーダーを決めるため集められたその日。

 オレを中心とする低位ランクのメンバーが五名集まった。

 決まった後は、陣形や役割分担などの打ち合わせをしていたはずだ。

 酒が程よく回り始めた頃。

「誰か、こいつらを入れてくれるパーティはないか?」

 と、今回の元締めが言う。

 こいつらというのは、女戦士風の二人組だ。

 当然、他パーティの連中は既に構成が終わり、枠が無い状況である。

 基本パーティは多くても五名。

 それ以上は、前衛と後衛のバランスが良くない。

 更に言えば、狭い通路においての戦闘でも十分なスペースを確保しづらいというのもある。

 オレ達のパーティも例外に漏れず前衛三、後衛二と崩したくない状況だ。

 それに応えるパーティは皆無であった。

 また理由の一つに、その二人は悪名で評判を落としているというのも拍車がかかる。

 ギルドに所属しながらも、単独行動を良しとするする性格。 これが何よりも不味い。

 更にはそれが原因でパーティが壊滅したという噂までもある。

 だが、それ以上に彼女らの武勇は有名であった。

 正直な話を言うと、俺達のパーティが単独の一人と戦っても負けるかもしれない。 

 それほどの高難易度のクエストを単独でいくつも攻略していた二人だ。

 だからこそだろう。

「こいつらを外すには率直に言って惜しい。 かと言って単独で行動させるのは大討伐においてはご法度だ」

 結果的にはであるが、暫定的にリーダーのような立場に居たオレは、元締めを中心とする各リーダーが集まる席に着かされた。

「改めて聞くが、立候補するパーティはないか?」

 さて、確認するまでもないが各パーティにおいても役割は分担される。

 当然実績のあるメンバーが集まったパーティはより危険で、だが報酬もより高額になるようなエリアに配置される。

 そして、実績も、実力もまだ二流とも言えないオレ達のパーティはそこそこの場所に配置される予定だ。

 そう、予定であった。

 結果的に言うならば、上位のパーティは既に戦力は過剰であったのだ。

 ならば、中位レベルはどうなのか。 実を言うと、この大討伐。 パーティ自体のレベル上げという側面も持っていた。

 だからこそ、下手に過剰の戦力を入れるとパーティ参加者自体の役に立たない。

 そうなると、実力も名声も、大討伐の参加ギリギリのメンバーが集まったオレ達のパーティに加入させるというのが合理的、らしい。

「お前らのパーティは初参加が大多数だろ。 こいつらをお前らの先導役としてみたら【戦力】においては安心できる」

 嫌なイントネーションが響き渡る。

 確かに戦力だけを見たら、安心は出来る。

 もしかしたらそれだけ活躍の場が増えるかもしれない。

 だが、待ってくれ。

 この二人は単独行動が好きなのだろう?

 それに、オレ達の担当エリアに過剰戦力である彼女らは、その……納得しないだろう?

 報酬面とかでもさ。

「それでもだ。 悪いが条件を飲んでくれ。 命の危険が付き纏う商売だ。 お前らにとっても損ばかりではないはずだ」

 オレの説明も虚しく、どうやら既に決まったらしい。

「ということだ、二人ともそれでいいな? 新人どもの目付け役と考えれば、特別な手当を出すのも前例がないわけでもない。 報酬は上乗せしよう」

 さて、どうしたものか。

 いや、どうしたもこうもないのだ。

 決まったことにおいて、拒否をするのもただ徒に自分の評判を落とすだけだ。

「遠巻きから様子を見ていただろうから、結果はわかっているとは思うけど、報告をする」

 パーティメンバーと、その新たに加わった二人を交えて発言をする。

「で、だ。 オレ達と比べて貴方達は高ランクの冒険者だ。 当然リーダーはどちらかがやってくれると理解をしても宜しいか?」

 答えは否。

 と言うのは、やはりパーティ自体のレベルアップという側面が理由である。

 どういう経緯であれ、リーダー経験というのは身になるものだと尤もらしく説明された上で。

「面倒くさい」

 とのこと。

 頭が痛くなるばかりだ。


 さて、大討伐が決行されたその日。

 人生で最悪な日とも言えるような自体がオレの身に起きた。

 思い出したくもない出来事なので箇条書きとさせてもらう。

 高ランクエリアによるパーティの致命的壊滅。

 それは、未確認による超々大型モンスターの出現によるものだった。

 また、防波堤の役割をしていた高ランクパーティの壊滅によって、中位・下位エリアに高ランクモンスターが流出。

 大討伐参加者の多くは再起不能となった。

 オレ達のパーティもまた死者を四名出すほどの状況となった。

 それほどの絶望的な状況。

 後の情報開示によると参加者、千名強。

 生存者、わずか二十四名。

 被害中心地から五村、十四町が壊滅。

 一都市が致命的被害。

 犠牲者は八十万人を超えた。

 

 後に、奇しくも超緊急クエスト。クエスト参加者の生存が劇的に危ぶまれる程の最高難易度。また、高ランク冒険者は討伐義務を命ぜられた。

 ――として、初めて登録されたモンスターの出現だった。


「ありがとう」

 命からがらに、助けられた二人に一度しかお礼を言えなかった。

 超緊急クエストに招集された二人とはそれ以来会う事はなかった。



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