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起[6]

 恋愛ってのは当事者じゃなくても面白いものだ。

 恋バナって奴だ。 もう死語になりつつあるのか?

 そんなことはどうでも良かったな。

 中学生時代、お前らの周りではどんな奴がモテた?

 俺の所では、よく言われる「足が早い奴」がモテていた。

 まぁ、足が早い奴ってのは運動神経が大抵良くってな。

 外で遊んでるから色黒だし、体育の授業でもエースって奴だ。

 頼りになるんだから、そりゃモテルだろうよ。

 そんな奴とそいつの彼女と俺との話をしたい。


 そいつは特に足が早くってな。

 先の話ではあるが、うちの中学では陸上部なんてものが無かったが百メートルだか三千キロメートルの中学生の陸上競技会に選出されるほどの奴だった。

 顔も所謂ジャニーズ系という奴で、勉強もそれなりに出来ていたんだろう。

 高校では進学校に進んでいたからな。

 そんな奴はどうなるか。

 当然モテルわけだ。

 バレンタインなんて何もしなくてもチョコレートを貰えるんだ。

 誤解を無く言うが、俺も貰っていたんだぜ?

 女子全員に強請っていたが。

 ちなみに、そのチョコレートはわざと冷蔵庫に入れておいて。

「これどうしたの?」

 と親に聞かれて、事も無げに。

「ん、貰った」

 と自慢気にしていたのが昔の俺だった。


 おっと、話が逸れたな。

 で、続きなんだが。

 昔テレビで、屋上に立って好きな異性に告白すると言う番組が流行った。

 御多分に漏れず、俺の学校でもそういう非日常的イベントが流行ったのだ。

 学校祭だかで、クラスメイト全員の他にも、全学年の生徒が体育館に集合してな。

 2階にあるギャラリーの所で女子が叫びながら告白をしたんだわ。

 あれって、何が凄いのって断り辛さなんだろうな。

 ほぼ百パーセント成功するんだ。

 その中で、うちのクラスの女子が一人上がって、告白を始めたんだ。

 その時点でまずざわめく。

 まさかそんな恥ずかしい行動をクラスの一人から現れるなんて、ってな。

「出席番号30番代のー」

 ざわめいたね。

 三十番台っていや、うちのクラスは三十七名だ。

 となると、男子なんか既に片手の指以下の人数に絞られる。

 思わず俺は言ったね。

「俺かー!!」

「ちがーう!!」


 閑話休題。

 

 その女子の告白は成功したわけだ。

 相手は驚くべき事に、クラス一の伊達男。 さっきから説明していた男子だ。

 晴れて、初めてのカップルがうちのクラスから誕生した。

 でも、あれってどうなんだろうね。

 高校になったら確かにイチャつく奴らが出てくるのは後の実生活で分かったが、まだ思春期を迎えたばかりの、中学生だった俺らのクラスはそういうのとはまた違ったんだ。

 だって、誰と誰が付き合っているのか丸わかりなんだ。

 それも、クラス一のモテル男がだ。

 女子の嫉妬なんて凄かったんじゃないか?

 実際、良く話をする女子に詳しく聞いたら不穏な空気が女子に流れていたというわけだ。

 男子は男子で、こっそりと。

「あんな女子とよく付き合えるな」

 みたいな風にな。

 まぁそれは嫉妬もあったんじゃないかと今なら思えるが、俺の耳にも伝わっていたわけだ。

 となるとどうなるか。

 上手くいくわけがないんだよな。

 生憎とそのモテ男と告白女との共通の知り合いが俺だったわけで。

 ぶっちゃけると、告白するという情報も直接その女子から聞いていた。

 だから俺なりのパフォーマンスで緊張をほぐしてやったわけだが。

 

 まぁ、一ヶ月もしないうちにお互いに喧嘩別れしたわけだ。

 それでも女の方は、まだ男のことが好きだったみたいでよく相談にも乗った。

 俺含め、二人とも家が近所でな。

 俺をメッセンジャーとして、日に10往復とお互いに言い分を伝えてやったこともあった。

 ちなみに、あの時ほど互いを殴りたくなったのはなかったな。


 結局、卒業間近までその二人はクラスでほとんど会話をしなくなってしまった。

 そんなある日だ。

 俺が放課後、女子3人の、うち一人は告白女もいたんだがな。

 4人で漫画の話をしていたんだ。

 当時俺は、話の切欠になればいいと思って漫画をクラスメイトに良く貸していたんだ。

 ジャンルは様々で、女子コミックすらもっていた。

 ちなみに購入しているのは兄だ。

 で、何々が面白いと話をしていたが当然、話題が途切れる事もある。

 そんなときに。

「実は私、こいつの事が好きだったんだよね」

 みたいな風に笑いながら言うわけだ。

 諸君。良かったな。

 俺ははっきり言ってジャニーズ系ではない。 むしろ吉本系だと言われていた。

 なんとも夢がある話じゃないか。 でもな。

 その中には最悪な事に、俺の初恋の子もいたわけだ。

 挙句の果てに俺のとった行動は。

「またまたー」

 と誤魔化して、足早に教室から逃げたわけだ。


 ガキだった。

 付き合うつもりはなくても、きちんと断ることが出来なかった。

 これは自分自身のトラウマにもなるから、留意しておくといい。


 まぁ、そんなわけで今度は俺の周りの関係が崩れ去るのかと、戦々恐々と登校した翌日。

 実に。 何もなかった。

 普段通りに話しかけてくる告白女。

 結局の所、どういう意図で告白したのか今でも分からない。

 分からないまま、不完全燃焼のまま時を過ごす。


 いやー、これも淡い思い出っちゃ思い出だが、スッキリしない。

 あれだけ、モテ男のが好き好きと言っていたのは何だったのか?

 俺のことを好きになったのは何時なのか?

 それが分からんうちは俺には恋愛事ってのは面倒だと結論づいた時でもあった。



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