起[4]
「カノジョとの結婚おめでとう」
そんな言葉で祝福されたのは何時だったか。
確か大討伐の依頼を受け、難なく攻略した後の、都へ帰る途中に寄った町の出来事だったろうか。
その日、オレはカノジョと一緒に今夜泊まる予定の宿を見付けた後、夜の帳が降りる前に外で食事を済ませようと決めていた。
雰囲気の良さ気な食事処を探しに長く連なる露店を練り歩く。
その途中で、偶然にも知り合いと出会ったのだ。
「お前は?」
と、尋ねると。
「いやー、全然ダメだ。 良い相手がいねぇさ」
まぁ、オレ達はまだ24歳になったばかりだ。
こんな世の中とは言え、焦りすぎるのも良くないかもしれない。 そんなことをオレは言う。
挨拶をそこそこに別れ、オレはカノジョと手を繋ぎながら再び食事処を探すため、足を運ぶ。
率直に言えば、24歳での結婚は早くはない。
なにせ命の危険が何処にいてもあるのだ。
ならば、一粒の子種を残すという意味でも。
短い人生を共に過ごす伴侶を見つけるというのも悪くはない。
都合よく、カノジョもまた冒険者である。
どれだけの苦難でもカノジョと一緒であれば、乗り越えられるとも思ってもいる。
カノジョの為ならば、オレはいくらでも強くなろう。 なってみせるという覚悟は既に出来ていた。