起[3]
「オレ」は物心付いた時には既に剣を携えていた。
果たしてオレの手にしている剣は一体誰が作ったのか? どこから購入したのか、すら記憶にない。
ともすれば記憶喪失と言ってもおかしくない状況なのではあるが、オレは気づいたら一振りの剣をもっていた。
そもそも、オレの出自というのがはっきりしないのだ。
いや、深く思い出そうとすれば薄らと思い出すことは出来る。
オレの両親は共に、「冒険家」と呼ばれる職業に就いた人達だ。
あぁ、そうだ。
冒険家であった。
その両親も今はいなく、一人となったオレは、当ても無く旅に出ている途中だ。
勿論、完全に無計画というわけではない。
村から村へ、町から町へと移動する合間に、その住民から困りごとの依頼を受けては達成し、金品などの報酬を受ける。
その報酬でオレは生活をしていた。
そう一般的な冒険者という生業を、オレは両親がかつてしていたのと同じく、オレもまた冒険者として活動していた。
もしかしたら、オレの一振りの剣は両親から受け継いだものなのかもしれない。
そう考えるのが極々自然だ。
さて、物思いに耽る時間はそう多くない。
朝はやる事が多い。
何せ食事のあとはオレが今、滞在している村。
名前はなんといったか。
まぁ、その村の長から仕事の依頼を請けたのだ。
それを達成すべく、行動を起こさないといけない。
内容は、モンスターの討伐。
村の畑の作物を荒らされていたらしく、村民で調べた結果、どうやらモンスターの仕業だと判明した。
弱いモンスターならば、それこそ大人が複数人で鍬や斧といった道具を用いて討伐するといったことも別段おかしくはない。
だが、今回のモンスターは村民の手に余る、凶暴なモンスターとオレには知らされていた。
「身の丈は大人3人分ほどあった」
とか。
「炎を吐き出していた」
など。
「奴は空を飛んで、うちの村の畑さ入ってるみたいだで」
なるほど。
冒険者として生活している以上、モンスターの討伐自体は然程珍しくはない。
オレも独り立ちしてから、空を駆けるモンスターを幾度と無く倒してきた。
地を這う巨大な蛇、それこそ家さえ丸呑みしてしまいそうな程の大きさの。――を討伐したことすらある。
今回もまた大丈夫だろう。
なにせオレは「最強」なのだから。