5.20 頑張って考えて斎藤 in教室
「 お前保育園だった?幼稚園だった?」
政木に聞くと窓から見える可愛い人関係だとばれそうなので、噂話などに無縁の斉藤に尋ねることにした。
こいつなら特に口止めなんてしなくても、他の奴に会話の内容が漏れることもない。
「 はあ?」
流石の斉藤も怪訝な顔だ。
俺だっていきなり誰かにこんなこと聞かれたら、同じ反応を返す。
「 幼稚園だったけど」
斉藤は怪訝な顔のまま答えた。しつこく追求してこないところもこいつの良いところだ。
「 ああそう。あの、幼稚園のバスに乗ってるのは何?なんでバスの子とそうじゃないのがいんの?」
なんで彼女は園児が群れで帰って行く時間に見つからんの?
「 親の希望じゃないの?うちの場合は車が1台しかなくて、それを父親が通勤に使ってたから俺がバスだったみたいだけど」
「 へえ。じゃあ車があるとこはバス乗んないんだ」
「 いや、そうとは限らないと思うけど。まあやっぱ親の都合じゃない?車だけじゃなくて色々」
「 都合って?」
斉藤が困った顔で俺を見た。俺も困ってる、頑張って考えて斉藤。
俺の気持ちが伝わったのか、斉藤が椅子にもたれ腕を組んで答えを捻りだし始めた。
「 うーん。えーと、ああ、下の子が赤ちゃんで、送り迎えが大変だからバスに乗せてるって人が近所にいるな。大体そんな感じなんじゃないの?送り迎えが面倒だとか。後は、バス使いたいけど使えないってとこもあるかな。バスが家の近くまで来ないとか。うーん。後はー、迎えの時間が遅いとことかもバス使えないし」
「 そうなのか?」
「 母親が仕事してたりするところは、バスが出る時間より遅くまで残ってるからね」
「 ふーん。そうなんだ」
とすると、彼女が子供を迎えに来る姿を見つけられないのは、他の子供達が帰る時間とずれているからなのだろうか。
「 行きは家の車で、帰りはバスとかも有りなの?」
「 いや、それは知らない。園によるんじゃないの?」
うーん。じゃあ、帰りはバスに乗せて迎えに来てない可能性も有りか。
斉藤は最後まで怪訝な顔を崩さなかったが、何でそんなこと聞くのかとは言わなかった。
「 さんきゅー斉藤。助かったよ」
俺は何をやってんだろう。
子持ち人妻の彼女を、わざわざ斉藤に不審がられてまで、更に見ようとしてんの?
見てどうすんの?