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あ、じゃああれは?


次の約束をしていなかったことと、朝に彼女を見つけられなかったことで、幼稚園に行くタイミングを逃した。

本調子になるまでばあちゃんに送り迎えを頼んだのかもしれないし、そうじゃ無いかも知れない。

約束してても連絡貰えなかったくらいだ。約束もしてないのに、現状報告の連絡なんかある訳がない。

そしてそのまま、学校は盆休みに入ってしまった。


お袋情報で、幼稚園にも働く親のための時間外保育制度があったり、同じ敷地内に保育園が併設されていたりすることもあるのだと知ったが、盆は休みなんだろうか。彼女の仕事はどうなんだろう。

なんか会えないなあ。声だけでも聞きたいけど電話していいもんかな。でも用件がないのになんて言って電話すりゃいいんだ。

太朗が、ひこうきしゅるーってかけてきてくれればいいんだけどな。

連日そんなことを考えていたら、自分が今までかなり受身だったんだと気付いた。

うーん。どうすりゃいいんだろうな。

太朗と遊びたいって言えば良いのか?でも電話して、わざわざ休みの日に呼び出してまで太朗と遊びたいって訳じゃないし。



「 それは、彼女に会いたいって正直に言えば良いんじゃないの?子供をだしにしようとするから変な感じになって電話かけづらいんじゃない?」 

世間の盆真っ最中、政木の号令でマックに集っていた。3人とも特に盆行事に縁がないらしい。暇なのだ。


斉藤の言葉を反芻した。

「 そうか?まあ確かに太朗をだしにするのは嫌だな。でも会いたいなんて簡単に言えねえだろ?」 

斉藤は眼鏡の奥の目を丸くし、きょとんとした。

「 なんで?彼女独身だったんだし、何も問題なくなったじゃない」 

「 そりゃまあそうだけど。問題はなくても簡単には言えねえよ」 

「 そうなの?それなら俺分かんないや。経験ないもの」 

あっさり投げ出してしまった斉藤がばくばくポテトを食っていた政木に視線を向け、それを受けて政木が俺を見た。

「 デートに誘いたいってことだな」 

「 いや、デートしたいって訳じゃない。会ってちょっと話せれば良いだけ」

政木がポテトから手を離し、身体を起こして馬鹿にした顔をした。

「 ちょっと?出来れば長く一緒にいて、今より仲良くなって、あわよくばまたキスしたいんだろ?」 

まあ、その通りだな。無視することにした。

「 デートしたいんだね」 

「 だな」 

「 じゃあどうやって誘えば良いのか教えろよ。俺だって経験なんてねえ」 

不貞腐れてそう呟くと、ふたりに呆れた顔を返された。

「 開き直って威張ってんじゃねえよ。教えてください、だろ?」 

「 ふん」 

「 ふん、じゃねえだろ。盆休みのデートねえ。もう誘うの遅い気もすっけどな。定番は花火大会とか祭りだろうな、やっぱ」 

ふーん。

「 へーえ、お祭りとかってそういう時に使うんだ。何が楽しくてあんな人ごみにわざわざ行くのかと思ってたよ。下心のイベントなんだね」 

斉藤よ。同感だ。

「 ああでも、子供付いてくるよな」 

「 ああ、もれなく付いてくるって言ってた」 

政木が腕を組んで考え込んだ。

「 うーん、じゃあ花火は怖がるかもな。姉ちゃんの子供が大泣きしてた。祭りもあんまり混むやつは子連れじゃ危ねえしな」 

斉藤がふと気付いたって感じで声を上げた。

「 あ、じゃああれは?」 



斉藤が知っていたのは、今開催されている、近所の動物園のイベントだった。

斉藤がこのことを知っていたのは、期間中にロボットのイベントが行われるからだった。

子供祭りっていう名前がついているだけあって、子供が喜びそうな出し物やゲームが準備されているようだった。しかも動物園だし。

最終日には通常の閉園時間を少し延長し、子供用の短めで小規模の打ち上げ花火が行われるらしい。

ホームページで祭りの詳細を確認していると、親父が覗き込んできた。

「 お、これに行くのか?親子と」 

モニターに目を向けたまま答えた。

「 まだ誘ってない」 

「 はあ?明後日までって書いてあるぞ?早く電話しろ」 

「 ああ、分かってるけど、予定あるかもしれねえし、行きたくないかもしれねえし、すでに誰かとこれに行ってるかも」 

後ろから頭をばんと叩かれた。

「 なんだよ、痛えなあ」 

振り返ると親父が呆れた顔で俺を見ていた。

「 恋してるなあ、へたれ少年よ。とっとと電話しろ。聞いてみなきゃ何も分からんだろうが。今回行けなきゃ、また次に他のなんかに誘えば良いだけだろ。あ、俺が子供が好きそうなイベント探してやるよ。代われ」 

親父が勝手にウキウキしだして、俺をパソコンの前から押し出した。

「 ほら、さっさと行け。すぐ電話しろよ。肩車もしたことねえ子供が、もしかしたら暇なのに、せっかくのイベント行けずに終わるかもしれねえぞ」

その場にあった俺の携帯まで投げてきて追いやられた。

これはデートの後押しじゃねえな。太朗を遊びに連れて行けってことだな。 

まあ、俺もそう思おう。それなら電話できるかも。太朗を動物園に連れて行く。よし。結局太朗が口実だな。すまん太朗、許してくれ。






いつも読んで頂いてありがとうございます。嬉しいです。

また3人でお出かけ予定です。二人の関係にもまた変化が有ります。

7月15日前後や8月初めにお盆を行う地域も有るようですが、現在一般的と言うことで8月15日前後の話です。


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