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まあそこに座れ in 家

本話、次話、彼女出てきません。


俺は考えていた。昨夜は当然興奮で悶々とし眠れず、朝方まで彼女の事を考えて、少し寝てから部活に出た。そして部活から戻った今も、相変わらず彼女の事を考えていた。


何で気付かなかったんだ俺。肩車、父の日、虫、分かりやすい伏線が何度もあった。

彼女が俺を気軽に車に乗せるのも、誘うのも、今思えば独身だったからこそなのだろう。

宮本に結婚を否定しなかったのは牽制のため。俺には家族の日に何か言いたげだった。俺がそれを聞かなかったのだ。

俺の自業自得だな。

あれだけ人妻に恋してしまったと悩んだのだ。早く言ってくれればと彼女を責めたい気持ちになるかと思ったが、そうでもなかった。

とにかく彼女に旦那が居ないという事実が嬉しいばかりだった。

とは言え、彼女は高校生の俺を恋人候補としては考えられないようだったが。


昨夜は、俺じゃ駄目なのは年のせいだけだろと彼女を責めたが、一度寝て落ち着くと簡単に分かった。

年じゃない。生活力がないからだ。彼女には太朗がついてくると言っていた。あれもそう言うことなのだと思う。

昨日多分、嫌がってはいなかった。彼女が子供もいないただの独身女性なら、俺と恋愛関係になることに障害はないはずだ。あれ、でも。

このままじゃ彼女が犯罪者になるって言ってたな。どうして彼女が犯罪者なんだ?

いつもは聞き流すばかりの、出会い系なんかで知り合った未成年者と関係を持って逮捕される奴らのニュースが脳裏に浮かんだ。

もしかして、大人が高校生とそういう行為をするのは犯罪なのだろうか。


気になっていても立ってもいられなくなった。

取り敢えず調べてみようと思い立ったが、携帯で検索するのは苛々するに決まっている。手っ取り早く済ますためにリビングに降りると、親父が家族共有のノートパソコンでオンラインゲームをしていた。

「 替わってよ。調べもんがあるんだよ」 

と言うか自分のでやれよ。何台も持ってんだろ。

「 ちょっと待て」 

そう言うが、一度やり始めると大抵は母ちゃんが怒鳴り始めるまで数時間座っている。

「 いつになるんだよ。一回落ちろよ」 

「 お前の調べもんがすぐ終わるんならそうすっけど?」 

確かに終わらないかもしれないけど、親父のゲームより息子の学業が優先だろ、と思うが学業の調べ物ではない。

まあ良いか。調べるもの面倒だし、手近の大人に聞くか。

「 なあ、大人が高校生とやったら犯罪なの?」 

親父がゲーム画面を放って俺を見た。やらないでいいんなら交替出来ただろ。

俺の視線に気付いた親父が無言でパソコンを畳んだ。


「 まあそこに座れ」 

ローテーブルを前に床に胡坐をかいていた親父の向かいに座れと言われたが、床が嫌だったのでソファにどさりと腰を下ろした。

「 それは何のための調べもんだ。授業か?それともお前か?」 

親父が珍しく神妙な顔で言った。珍妙だ。

「 俺だな」 

親父が一度がっくりと肩を落とし、それから顔をあげて言った。

「 お前が高校生なんだから、相手が大人な訳だな」 

「 当然だろ。それよりさっさと答えを教えてよ」

「 大人っていくつだ。何歳上なんだ」 

「 知らん。10はいかねえくらいじゃねえ?」 

「 ああ、ついにこの日が来たか。心配はしてたがまさか高校生のうちに・・・」 

「 何言ってんだよ?」

呆然と俺を見ていた親父が奇妙な顔で呟いた。

「 俺に似ていることを喜ぶべきか、似てしまったことを悲しむべきか」 

「 だから何言ってんの?」 

「 お前が年上の女を好きになったからって俺にとやかく言う権利はないな。でもお前苦労するぞ。せめて3,4歳上くらいの子に出来ないのか」

「 彼女が若返ればそれでも良いけど」 

出来ないだろ?

親父が溜息を吐いた。


「 まあそりゃそうだよな。で、何処の誰だ」

「関係ないだろ。俺が聞きたいのは犯罪なのかどうかだよ」

「関係なくねえ。親も認めてて絶対結婚するって決まってるぐらいの関係じゃなきゃダメなんだよ。親が訴え出りゃ犯罪なんだぞ」

「え、マジで。 自分に都合の良い様に言ってるだけじゃないのか?」

「何の為に刑罰があると思ってんだ。自分で判断できねえお前らを守る為だろ」

呆れた様な親父の顔を眺めながら、しばらく考えて、一応納得した。

騙されてんのかそうじゃないのか、俺が自分で判断できないってことだな。

自分で出来てると思ってても信用されないってことか。

やっぱり世の中が高校生は子供だって思ってるってことだな。まあ、事実そうなんだろう。

「まあ、お前はなんかあれだな。おっさんみたいだし、2つ3つしか変わらん成人に判断能力が劣るかっつったら分かんねえけどな」

「 ふーん。じゃあ、俺が好きになった人なら、父ちゃんと母ちゃんが反対じゃなかったら良いってこと?」 

「 ああ、うーん?まあ、そうなるかな。いや、どうかな」 

「 どうすんの?」

親父が仰け反った。

「 え!?」 

「 え、じゃなくて。彼女が父ちゃん達のせいで逮捕されるなんて嫌だろ」

「 嫌なら我慢しろよ。それが一番だろ?相手にも迷惑かけるぞ」

親父が俺を説得するような調子になっている。なんかムカつくな。









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