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発信履歴

「 へえ、宮本先生と同級生だったんだ?」 

週明け早速、朝一で斉藤に報告中だ。


週末部活以外の時間は殆ど、彼女から受け取った俺の携帯を眺めては、彼女と交わした言葉や仕草を思い返してのた打ち回っていた。

「 詳しくは聞いてないけど、そんな感じだった」 

「 何で来るって教えてくれなかったんだよー」 

さっきから政木がしつこく文句を言っている。

「 だから、教えたらついてくるからだって言ってんだろ、何回も」

「 それで?」 

斉藤が政木を流し始めた。

「 宮本が携帯教えろってしつこく言ってたけど、拒否られてたし、めちゃくちゃ雑魚扱いされてた」 

「 マージデー!俺見たかった!超見たかった!雑魚宮本見たかった!」

政木煩い。

「 そうなんだ。君たちもだけど、人って見かけじゃ分からないもんだね。宮本先生もててたっぽいのにね」 

「 何だと斉藤。それは俺が実はもてないと言ってるのか?」 

煩い政木に、斉藤が苦笑しながら答えた。

「 違うよ、もててるのは知ってるよ」

政木は阿呆面にはてなを浮かべた。

「 それで、君はその人と上手く話せたの?宮本先生が登場する前」 

「 ああ、緊張したけど普通にしゃべれた。可愛かった」 

斉藤が今度は俺に苦笑した。

「 そう。良かったね。携帯も無事戻ったんだね」 

「 あ、涼、お前携帯番号手に入れたのか?いや待てよ、人妻だったな。番号聞いても意味ねえか」 

「 そうだよ人妻だよ。番号聞いたってかけられるわけないだろ」

聞けなかった。大体なんて言って聞けばいいんだ。宮本みたいに簡単に食事に誘うことも出来ないのに。

でも彼女とこれからも繋がる唯一のチャンスだったのに。

また一切の繋がりが無くなってしまう。 

「 お前懲りてねえなあ。諦める気全くねえじゃねえかよ。略奪するつもりか?」

政木にはっきり言われて本気でへこんだ。

「 そんな事出来る訳ないだろ。でも今すぐ諦めるのは無理だ。もう手遅れだった」

そう言った俺を、二人が気の毒そうな顔で見た。

居た堪れなくて机に突っ伏した。



部活から戻り、いつものごとく慌ただしく晩飯と風呂を済ませると、携帯を持ってベッドに寝転んだ。

思わぬハプニングで彼女と接近することが出来た。

しかしもうすでに彼女なしの平常に戻ってしまっている。これからは彼女と接する機会など皆無だ。

席替えのせいで姿を見ることさえ出来ない。

部活をサボって幼稚園前に立っていれば会うことは出来るだろうが、何と言い訳するんだ?

部活終わって今帰りなんです。バス停に行く途中で? 今まで会わなかったのに急に部活からの帰り道になるのか?どう考えたってストーカーだろ。

このまま姿さえ見ることも出来なくなって、この思いもだんだん薄れるのだろうか。

どこにもやり場のないもやもやした気持ちに、胸が締め付けられるようだった。

気分を切り替えたくて、何気なく手にしていた携帯を開いた。

これを彼女の車に落としたからもう一度会えたんだよな。またなんか車の中に落としとけば良かった。馬鹿な考えが浮かぶ。

無意識に親指が押しなれたボタンを操作し、着信履歴の画面が現れた。

登録されていない番号が一番上に表示されていた。これは俺が斉藤の携帯でかけたやつだな。

斉藤の番号登録しとこう。あいつ携帯持ってたんだな。4月に同じクラスになった時すぐに聞いとけば良かった。


登録完了し、着信履歴で斉藤の名前が表示されているか確認しようとした。

あれ、数字のままだ。でも、これさっきの番号と違う気がする。・・・・・え、嘘。

心臓がどん、と跳ねた。これは、もしかして。もしかすると。

着信履歴だと思っていたそれは、発信履歴だった。

これ、もしかして、彼女の番号か?ふるえる指で着信履歴を確認すると、ちゃんと登録された斉藤の名前があった。

日付と時間を確認する。昨日の午後だ。きっと彼女だ。俺の携帯で彼女の携帯探したって言ってたじゃん!なんで今まで気付かなかった俺!

仕事中のどんな状況で携帯が行方不明になるのか理解できないが、彼女の大雑把な性格のおかげで叫びだしたいくらい嬉しかった。

部屋で叫ぶと病院に連れて行かれかねないので、布団に顔を埋めて唸ることで何とかその衝動を耐えた。












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