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5月某日 プロローグの様に 教室から
「 おい涼。何見てんだよ」
窓際の自分の机に頬杖をつき、冷たい朝の風が入ってくる窓から外を見下ろしていると、政木が圧し掛かって来た。
「 んー」
彼女が風にふかれる髪を片手で押さえた。膝丈のスカートがばたばたとはためく。
「 可愛い人がいるんだよなー」
政木が俺の頭の上から外を覗き込んだ。
「 どれ」
「 もう車に乗った」
「 なんだよー。見たかったじゃんかよー」
がっかりした声で文句を言う政木を無視し、ウインカーを点滅させ車道に出て行く彼女の車を眺める。
政木、お前に見せるために彼女を見ている訳じゃないんだよ。
彼女を見つけたのは俺だ。