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6.3 スルー in教室
その日は突然やってきた。
その日って言うのは、彼女に俺の存在が知られる日だ。
いつものように子供を送って来た彼女を見ていた。
今日は髪を下ろしてる。紺のとろんと滑らかそうな生地のマキシスカートに白のTシャツ。好い感じだ。可愛い。
そんなことを思っていると、子供の手を引いて車から降ろそうとしていた彼女が、ふと顔を上げた。
今まで斜め上からしか見ることのなかった彼女の顔が、真正面に見えている。
しかも、彼女を見ている俺とがっつり目が合った。。
心臓が飛び出そうにバクバクした。が、彼女はその視線をあっさり俺からはずした。
無視された。
いや、無視というか気付かない振りをされたというかスルーされたというか。
落ち着け。俺だって知らない奴と一度目が合ったって、そいつが俺を見ていたなんて思わない。
たまたま、偶然、その瞬間だけ視線が交わったんだと思ってスルーするはずだ。
問題は、明日からだ。
毎日見ていると知られるわけにはいかない。それじゃどう考えてもストーカーだ。気持ち悪がられるに決まってる。
よし、明日からは見ないようにするぞ。そう心に決めた。




