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(第5話) 自己紹介・合戦

 あと二人、素敵な殿方が登場の予定ですが、とりあえず 前半三人の、おおまかな 紹介を…… という話です。

「隠していても、俺には わかるね。 …… お前、Mが入ってるよな?」



  キラキラ王子・仁科にしな。 美少年・みやび。 そして 平凡な自分。

  なんとも 滑稽な スリーショットで、高級ソファーに座っていたところに 現れた、《第三の男》。


  羨ましいくらいの、ツヤのある黒髪が美しい、これまた かなりの 美形の登場だった。

  美形は 美形だが―――。

  仁科とは 違った意味で、危険なカオリが ぷんぷんする。


「えーと…… どういう意味でしょうか」

「だから、そういう顔を見ると、イジメたくなるって言ってるの」

「…… はぁ!?」


  なんだ、この男は。

  初対面で、いきなり 『イジメたい』なんて言われたのは、人生 初だ。

  今まで、この 《気の強さ》が災いして、男性諸君は 皆、こぞって 逃げていくというのに。

「私…… 弱そうに見えますか?」


  何を根拠に、イジメたいと思ったのか…… そっちが気になって、素直に 尋ねてみる。

「弱そうには、見えない。 でも、それは 突っ張っているだけに思えるな」

「…… どうして、そんなことを……」

「あー、もう、ともくんまで! みんな、レンちゃんから 離れてよ!」


  近付いてきた男から かばうように、再び 雅が 間に割り込んだ。


「なんだ、雅? いつになく 必死じゃないか?」

「そうだよ、本気なんだから、邪魔しないでよね!」

「冗談だろ、お前が 本気だなんて…… どうせ また、いつもの 《お遊び》が……」

「ちょっと、レンちゃんの前で 変なことを言わないでよね!」


  男 相手に、ぎゃーぎゃー怒る 雅の顔は、幼くて 可愛いのだが。

  雅が 男に向き合ってしまうと、当然、もう一人は 自由になる…… というわけで。


「レンさん…… て、名前で 呼んでもいいかな?」

  キラキラ王子・仁科を、誰か 止めてくれ。


「紹介が 遅れたけど、僕は 仁科にしな春輝はるき。 僕のことも 名前で呼んでくれたら嬉しいな」

「…… ぜひ、名字でお願いします」

  名前の 呼び方 云々よりも、もう 二度と、この部屋を出たら 会うこともない連中だろう。

「その、冷たい 切り返し…… クセになりそうだね。 僕は ますます 君に惹かれてしまうよ」

「いえいえ、ご冗談を……」

「冗談では、こんなことは 言わないよ。 僕は これでも、真実を大切にする 《弁護士》をしているんだよ」

「仁科さんは…… 弁護士さん、なんですか……」


  どうりで、口が達者なわけだ。 妙に 納得してしまう。

「春輝と、名前で呼んでくれないかな?」


  キラキラの 《王子スマイル》を向けられて、正気でいられた自分を 褒めてあげたい。

  …… ん? 待てよ、『仁科 春輝』って、どこかで……。

「あっ、思い出した、この間 テレビで……」


  最近 話題の、若手・イケメン弁護士。

  確か、大手 弁護士ファームに所属していて、ルックスもさることながら、能力面でも 高く評価されているという 注目の 弁護士だ、と コメンテーターが騒いでいたはずだ。


  …… あれ? それだけでは ない気がする。


  イジメたいと 言ってきた、この男。

  確か、以前 テレビの 《医療特集》で見たことがある。

  しかも、今更 思い出したのだが。

  美少年・雅に関しても、多分 テレビで紹介されていたような……。


「あ…… あの。 もしかして、皆さん全員、テレビに出ていませんでしたか?」

「あれ、僕――― まだ ちゃんと 自己紹介していなかったっけ?」

「うん、まだ……」

「ごめん、レンちゃん! じゃあ、僕から順番に、自己紹介していくね!」


  そうして、なんだか おかしな 《自己紹介・合戦》が 始まってしまったのである。


※ ※ ※


「僕は、高遠たかとおみやび。 高校は飛び級で卒業しちゃって、今は アメリカの大学に在学中なんだ。 でも、《仕事》が 忙しくて、わりと 日本に帰ってきてることが多いんだよ」

  だから、デートは たくさんしたいな~。

「……」

  飛び級に、アメリカの大学。

  スゴすぎて、どこから つっこんでいいのか、わからないではないか。

「仕事って、何をしているのか 聞いてもいい?」

「あのね、不動産とか扱ったり、株とかもやるよ。 だから、僕 こう見えても けっこう お金持ってるからね?」

  …… 不動産に、株。 確かに、儲けていそうな 組み合わせではある。


「遊園地とか、アクティブ系も好きだし、美術館とか 静かなコースも 僕はオッケーだよ! レンちゃんは、どんな所に 行きたい?」


  にこにこと、人懐っこく くっついてくる態度は、ものすごく可愛い。

  可愛いのだが。

「こら」

  気を抜くと、すぐに 抱きついてこようとするのは、アメリカの影響なのだろうか。

  どちらにせよ、子供というには 育ち過ぎているので、伸ばされた手を ぺちんと叩いておく。

「え~…… 僕、レンちゃんと、もっと くっつきたーい」


  そんな、甘えた声を かき消すように、仁科の 自己紹介が続く。

「じゃあ、次は 僕の番かな? 名前は、さっき言った通り、仁科 春輝。 職業は 弁護士だよ。 困ったことがあったら、いつでも、ここに 連絡してきてほしいな」

「あー…… そうですね、それは 心強いかも……」

  渡された名刺を、仕方なく 受け取りながら、半笑いで 答える。


「でも、困ったことがなくても 電話をかけてほしいな。 君の 可愛らしい声を聞けたら、毎日が とても 幸せに過ごせるだろうし」

「あはははー」

  もう、ダメだ。

  仁科が 相手では、笑うしかない。


「気を付けろよ、レン。 ハルさんは、なかなか 腹黒いからな」

  いつの間にか、自分を 呼び捨てにしてくる、黒髪の 男。


「君には 言われたくないセリフだね、トモ

「何でよ? 俺は ハルさんみたいに、隠しごと しないよ。 いつでも オープンだから」

「智くんの場合、オープンすぎて、逆に 女の子は 引くと思うけどー」


  雅と 仁科に、二人から 言われていても、トモという男は 平然としていた。

「俺は、一ノ瀬 智也ともや。 まあ…… 医者だよ。 専門は、《内科》と 《精神科》ね」

「やっぱり……」


  自分も 医療関係に勤めているし、兄のこともあってからは、以前よりも 医療特集を見るようになっていた。

  そこで、彼の顔を 見たことがある。

  今は、ニヤリと意地悪く笑っているが――― テレビの中の、仕事中の 一ノ瀬は。


  他の 誰よりも、《医者》という仕事に プライドを持ち、患者と向き合っている姿が とても印象深かった。


  思わず、じーっと 一ノ瀬の顔を 見つめた状態になっていると。

「…… 何? 俺に ヒドイことされたくなった?」

  するりと、一ノ瀬の手が 頬に触れる。

「わっ……」

  馴染みのない、自分の手とは 大きく違う、大人の男の手。

  普段、兄以外の 男性との接触など 皆無なので、予想以上に 過剰反応をしてしまった。


  すると、その場にいた 男三人は、三人とも 目を見開いて――― そして。


「レンちゃん、今の反応 すっごく可愛い!」

  ぬいぐるみ扱いなのか、雅は 素早く ぎゅーっと抱きしめてくる。

「ちょっ……」

  年下であろうと、雅は れっきとした 男の子なのだ。

  さすがに、これは 許容範囲をえている。


「こら、雅。 …… 女性に対して、むやみに触れてはいけないよ」

  雅の腕をはずし、助けてくれたのは 仁科だったのだが。


「ハルさんこそ、腰に手を回して 引き寄せてるじゃないの」

「ん? 気のせいじゃないかな?」

「…… 気のせいじゃありません!」


  まったく、弁護士のくせに 油断も隙も あったもんじゃない。

  結局 最終的に、一ノ瀬の隣に 落ち着くことになる。


  ――― いったい…… 何なの、この人達。

  時間的には、十分程度のことなのに、ぐったりしているのは 何故なのか。

  『待っていてほしい』と言った お嬢様には 申し訳ないが、これ以上 ここにいたら、帰る気力が 根こそぎ奪われそうだ。 今すぐ 退散するのが望ましい。


「あの…… 私、これ以上 遅くなるとマズイので、帰ります」


  ドレス姿では さすがに電車には乗れないので、着替えなければいけないし、家の状態も 気になっていた。

「え~、レンちゃん 帰っちゃうの? もっと、僕と ここにいてよー」

「ご…… ごめんね、家が心配だから……」

「帰るのなら、ぜひ 僕に送らせてほしいな」

「…… 仁科さん、お気持ちだけで 充分です」


  キラキラ王子を かわしつつ、部屋の入口へと 逃げるように進んでいると。

  開けようと思っていた扉が、急に 音もなく 開いた。


「えっ……」

  扉の 取っ手を掴もうとしていた手が、空を切る。



「レンちゃん!」

「レンさん!」

「レン!」


  三人の 切羽詰まった声を背後に受けながら。

  バランスを崩した 自分の体が、床に向かって 倒れていくのを 感じていた―――。

 早くも、お気に入り登録をして下さった方。

 ありがとうございます。


 プロローグの 甘い雰囲気から一転、第1話に入ると 冷めた主人公の登場で、ガッカリされた方も 多いかと思いますが。

 恋のレベル・1から スタートして、恋人になるまでの流れを、のんびり 見守って頂けると 嬉しいです。


 次回は、新しい 殿方登場の予定。お楽しみに。

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