(第3話) 年下に 口説かれる?
年下クンに続いて、新たに登場する イケメンにもご注目ください。
突然 目の前に現れた少年・雅と、流されるまま 会話を始めて、かなりの時間が経過していた。
高校生らしからぬ、話題の豊富さと、知識の深さに、初めは驚かされるばかりであったが。
時間が 経つにつれ、楽しいと思っている自分がいるのだから、どうしようもない。
「…… そういえば、今更だけど。 雅くん、バイト中なんだよね?」
「あ~ うん、そうと言えば そうなんだけどー」
なんだか、はっきりしない 言い方だ。
「どちらかというと、ボランティアというか、勝手に 参加してるだけだから…… 気にしないで!」
「…… 気になるよ、思いっきり」
「も~、レンちゃんてば、真面目だなー」
名前は、と聞かれて。
隠すこともないからと、『月城レン』だと 素直に名乗った。
名乗ってみたら…… 《ちゃん付け》されてしまったのだ――― 十歳も 年下の、男の子から!
「ねぇ、パーティーも もうすぐお開きだし…… 終ったら、僕と 遊びに行かない?」
「…… 遊びに?」
「うん、そう」
屈託なく 笑う顔は、高校生というよりも、小学生を連想させるような あどけない表情だったのだが。
すぐさま、雅の雰囲気が 変化する。
「ねぇ…… 僕と、デートしてくれない?」
――― できれば、朝まで。
「!!!」
…… 前言撤回だ。
こんな 危険な小学生、日本中 どこを探したって いやしない。
高校生と考えたって、いき過ぎている。
「僕、レンちゃんのこと 気に入っちゃったな。 ねぇ、お願い。 僕と 朝まで、ずっと 一緒にいて?」
…… うーわー。 ダメだ、この子は。
こんな 色気のあるセリフを、いったい どこで 覚えてきたのであろう。
「こら」
ぺちんと、おでこを 叩いてやる。
「そういう セリフは…… ちゃんと、好きになった女の子に 言ってあげなさい」
「…… え?」
まさか、こちらが そういう態度に出ると予想しなかったのか――― 雅は、一瞬 きょとんとして。
そして。
「……………」
何故だか、顔を 真っ赤にしてしまった。
…… あれ? こうしていれば、可愛いじゃないの。
元々 美少年なのだから、歳 相応の顔をすれば、それだけで 充分なのだ。
「あ…… あのね、レンちゃん。 僕……」
真っ赤になりながら、どこか 必死に 何かを伝えようとしていたところに、雅の名前を呼ぶ 男性の声が聞こえた。
「ほら、雅くん、呼ばれてるよ?」
ちょうど、そろそろ パーティーがお開きだと、主催者の挨拶が マイクを通して 流れてくる。
「えっ…… あの、僕……」
「今日は、お話してくれて ありがとう。 おかげで、退屈せずに 過ごせたよ。 楽しかった」
楽しかったのは 事実だから、自然と 笑顔がこぼれる。
「…… レンちゃん」
「じゃあ、私は そろそろ帰るね」
なんとなく、本能的に、これ以上 この場にいてはいけない気がして、素早く 向きを変えて 入口へと向かった。
「あっ…… ちょっと待ってよ、レンちゃん!」
背後から 雅の声が聞こえたが、振り返らずに 会場から 出ていく。
この会場に いるということは、雅も 《それなりの家》の 子息なのだろう。
正規に バイトとして雇われているのではなく、遊び感覚での 行動から、そう推測できる。
ゆず子の代理として、一度だけ出た パーティーで出会った、ちょっと おませな美少年。
楽しい 思い出として、しまっておくのが 得策というものだ。
「はぁ…… お腹空いたから…… 帰ろっと」
普段では 絶対に履かない、十三センチの ピンヒールで、颯爽と ホテルの廊下を歩いていたとき。
「お願いですから…… やめてください……」
弱々しい 女性の声を、うっかりと 拾ってしまったのだ。
※ ※ ※
一、逃げる
二、聞かなかったことにする
三、無視をする
四、その場を 確かめに行く
「あ~ …… やだなぁ」
その 四つの選択肢なら、四しか 選べない。
どう考えても、厄介事だろう。 聞かなかったことにしたいが、そうできるほど、人間 落ちぶれてもいない。
とりあえず、自分一人で 対処できなければ、誰かに 通報すればいいのだ。
幸い、ここは ホテルで、従業員は 大勢いるし、パーティーの招待客だって、わんさかいる。
少し 大声でも出せば、必ず 誰かしら 気付いてくれるはずだ。
腹をくくって、声のした方向に 近付いていくと―――。
一人の 若い女性に、まさに 迫ろうとしている男の背中が見えた。
あーあー、セレブの集まりといえど、思いつくことは どこでも一緒なのね~。
冷めきった目で そういう見方をしてしまうのには、それなりの わけがある。
まあ、自分のことは さておき、目の前の乙女のことを なんとかしなければ。
瞬時に 判断して、一番 当たり障りのない 《友達作戦》を決行することにした。
「も~ こんな所にいたの? なかなか戻ってこないから、心配したんだよ~」
あたかも 親しい友人のような顔をして、さりげなく 男と 女性の間に 入り込む。
「え……」
「誰なんだ、君は?」
「彼女の 友人ですよ~」
男が うろたえた隙に、素早く 女性の腕を掴んで、人がいそうな方向へと 向かおうとするが……。
「…… 待ちたまえ」
すんなりと、うまくはいかないのが、世の常だ。
今度は、あろうことか 自分が 男に掴まれてしまう番だった。
「申し訳ないけど、私たち 急いでいるので、失礼します」
ニッコリと 笑ってみるが、男は 険しい顔をしたまま、手を放さない。
これは…… マズイ、かも?
借金取りのような 粗暴さはないが、相手は れっきとした男性であり、チカラでは とうてい敵わない。
いざとなったら、ピンヒールで蹴り飛ばすことも 視野に入れて、身構えたとき。
掴まれていたはずの手が、あっさりと 放れていった。
「お久しぶりです、田嶋さん。 こんな所で お会いするとは」
穏やかに語る、第三の人物。
「に…… 仁科先生……」
「はい、仁科です」
――― 誰だ、この 無駄にキラキラとした イケメンは。
思わず、誰かに ツッコミを入れたくなるような、そんな男性の登場である。
「す…… すまないが、急用を思い出したので、これで失礼するよ」
仁科という 男性を見て、男は 慌てて きびすを返した。
何か 弱みでも握られているのか、その様子は 尋常ではない。
「それは残念です。 また お会いしましょうね」
仁科が言い終わる前に、男は 姿を消していた。
「なんなの、あれ……」
「…… 怪我はなかったかな、勇敢な お嬢さん?」
キラキラとした 笑顔で、仁科というイケメンが 自分に対して言っているのだと。
そう 気付くまでに、何秒か かかってしまったのは、仕方がないことと いえよう。
《お嬢さん》なんて、間違っても 自分のキャラでは ないのだから……。
本命となる 紳士が登場するまでに、数人の 《素敵な殿方たち》が 登場する予定です。
さて、皆様の好む男性は、いるのでしょうか。
次回も お楽しみに。