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(第26話) 目覚めのときは すぐそこに

 主人公 レンの心にも、ようやく淡い変化が……。

  都内 某所。

  高級マンションの一室が、ゆず子の 東京での 《城》だった。


「さーあ、レン。 何があったのか、報告しなさい?」


  《尋問する気》 満々の彼女を前に、逃げることは不可能だろう。


「別に、何も ……」

「この私に、そんなウソが通用すると思ってるのかしら~?」

「ウソってわけじゃ ……」


  風呂を済ませ、あとは寝るだけ――― パジャマ姿のまま ベッドの上に拘束されて、じりじりと詰め寄る友人。

「…… この構図、おかしくない?」

「いいの、大丈夫。 何も問題ないわよ?」

「絶対、変だと思うけど……」


  相変わらず、ゆず子のスキンシップは 度を越えている気がする。

  今に始まったことではないので、言うだけムダなのだが。


「雅くんと、何があったのよ?」

「それは ……」

  何て、説明すればいいのだろう。

  自分でも、よく わからないから 困っていた。


「からかわれている だけかもしれないし、だいたい 男の子って よくわからないし……」

「あー もう、まどっろっこしいわね! いいから、最初から全部、説明しなさいって!」

「えー ………」


  最初からって、いったい どこからなのだろう。


  会社のビルを出たら、外に 雅がいて ―――

  自分は確か、新規プロジェクトの件で、《デート》について考えていたのに、少しもピンとはこなくて。

「ダメだな~ ってぼやいてたら、後ろから ――――」


  ……… 抱き締められた、で 合っているのであろうか。

  まともな経験が無いから、いまいち よくわからない。

「キャー、やるじゃない、雅くん! さすが、海外の学生ね、積極的だわ!」



  『――― あんまり僕を 煽らないで』


  確か、そう言われた気がするが、意味がよく わからない。

「だって …… 私、何もしてないのに ……」

  何か、彼を刺激するようなことを、自分はしただろうか。


「レーン? 雅くんは、前から あんたのこと《可愛い》って、言ってくれてたでしょ?」

「だって …… そんなの ―――」

「それに、結構、ベタベタと 触れてたように見えたわよ?」

  確かに、スキンシップは 激しかったが、そういう子なのかと思っていた。


「思っていた ――― ってことは、違うと思うことが、何かあったのね?」

「うーん ……」

  長年の友人は、さすがに鋭い。


「お部屋がね ……」

「部屋?」

「想像していたのと、すごく違っていてね……」


  自分よりも年下なのに、ずっと大人っぽくて、落ち着いた空間だったのだ。

「背だって、そんなに変わらないと思ってたのに、こんなに大きかったかなぁ …… とか」

「うん、うん?」

「…… 手とかも、なんだか 《男の子》っていうか ……」

  ――――― いや、違う。


「なんか、変な言い方だけど …… 《男の人》みたいな」

「ふん、ふん?」

  十歳も 年下のはずなのに、何だか 恥ずかしいくらい、緊張して。

  いつの間にか、視線も捕えられたまま、動けなくなって。


「ちょっと …… 怖かったの ……」


  自分の知らない世界が、その先に あるような、予感というべきか。

  それ以上 進んだら、もう後戻りができなくなると、本能的に 悟ってしまうほど。

「会って まだ間もないし、そんなに 親しくなれたとは思ってはいないけど ……」

  雅が、まるで 知らない人のように 見えた。

  あの空間は、明らかに 彼が 《支配》していて。


「あんな 《色気》、どうしたら身に付くんだろ ……」

「そりゃ、《経験》でしょう」

「経験?」

「お子様なレンとは違って、向こうは 女なんか 《珍しくもない》って感じじゃない?」

「…… 確かにね ……」

  あのルックスで、モテないわけがない。


「…… やっぱり、からかわれているんだよね」

「どうかしら?」

「だって、他に 考えようがないじゃん」

「やーね。 自分が 《好かれている》とは思わないの?」

「そんな恐ろしいこと、どうやったら 思えるんだか……」

「ほら、レンの悪いクセよ? すーぐ、後ろ向きに考えるんだから」


  そんな事を言われても、では どうしろというのか。

  図々しくも、《わぁ、私ってモテてる?》とか、喜べって?

「――― いや、それは ムリでしょう」

「もー、あんた、その せまーい考え方のせいで、すっごく損をしてるって 気付きなさいよ」

「損なんか ……」

「してます、絶対。 …… もっと積極的に 行動してたら、今頃は 南の島なんかに《逆ハーレム》とか作って、有意義に過ごせたのに」

「…… 何 それ」

  どこを どう考えたら、そのような突拍子もないことを 思いつくのだろう。


「いいえ、まだ大丈夫。 彼らとは出会ったばかりだもの。 今からでも 充分、遅くはないわ!」

「あのー …… もしもし?」


  なんだか、妙な方向に話がそれてきている。

  放っておくと、この友人は 《何か》をやらかしかねない危険性を持っていた。

「あのね、ゆずちゃん?」

「――― やっぱり、最初は 《デート》からよね!」

「……………… はい?」

「いーい? デートっていうのはね、世の中 あんたが思っているほど、《特別》なものじゃないのよ?」

「…… どういうこと?」

  特別でなければ、なんだというのか。


「親しくないからこそ、相手を知るために デートする ――― ってのも、アリなんだから」

「…… 話には 聞くけどさぁ」

「ぐだぐだ言ってないで、実践あるのみよ!」

「実践って ……」

  ほら、まーた 変なことを言い出したよ、この人は。


「うふふっ、雅くんが 《男》に見えたって 言ったでしょ?」

「それは ……」

「いい傾向ではあるわね。 少しは 異性に関して 《敏感》になってきたかしら?」

「そういうわけじゃ ……」

「経験してみなくちゃ 何も言えないでしょ? いい機会じゃない。 どうせ、仕事でも デートについて 何か案を出さなくちゃいけないんだから、いっそのこと、雅くんと どう?」

「どうって ……」

「別に、デートしたからって、お付き合いするわけではないし、問題ないじゃない」

「…… 問題ありますー」


  長年の友人だからこそ、ゆず子は知っているはずだ。

  もともと、自分は 人見知りが激しくて、誰かと 一対一で面と向かって話すことが、いまだに苦手だということを。

「…… あんたの心の平穏のためには、いきなり一対一よりも、気楽なグループデートの方がいいのかもしれないけど、それじゃ意味ないわ」

「やだよ、ゆずちゃん以外で、誰かと 二人きりだなんて」

「だーかーらー、行ってみなさいよ。 いいんじゃない? 相手は年下だし、いきなり 仁科さんとか、一ノ瀬さんとかじゃ、ちょっと荷が重いだろうけど」


  …… 荷が重いとかの話ではなく、あの二人とは、出かけてはいけない気がする。

  そもそも、二人きりになってはいけない。

  いろいろな意味で、無事に帰ってこられる保証は ないだろうから。


「そういえば、奈央くんとは 結構ふつうに会話してたわよね」

「あー …… 奈央くんは 話しやすいかな。 あと、慣れれば 瑛太くんも平気になってきたよ」

「そっか。 最初は 年下クンの方が、あんたも身構えないでいいのかもしれないわね」

「だからって、何も デートするなんて、一言も 言ってない ―――」

「夏の予定、聞かれたのに?」

「!」

「もー、デートに誘われるうちが 花なんだから! おとなしく、誘われときなさいよ」

「…… い・や・だ」


  ゆず子に背を向けて、強制的に 会話を終了させようと試みた。

  これ以上 会話を続けても、自分にイイことなんて 無いような気がしたからだ。


「レーン? 何で 背中を向けるのよ~」

「だって、デート デートって、ひつこいんだもん」

「あんたのためを思って 言ってるだけじゃない」

「絶対、ウソだ。 だって、目が笑ってるもん。 遊んでるもん」


  だいたい、人に デートだなんだと すすめるくせに、自分はどうなのだ。

「…… ゆずちゃん? 私、ゆずちゃんがデートしたって話、一度も聞いたことないんだけど」

「何よ、私のことは どうでもいいじゃない」

「よくないよ。 ゆずちゃんこそ、どうなの?」


  記憶が確かならば、この友人とは、学生時代から ずっと一緒だった。

  どこへ行くにも、何をするにも一緒だから、誰かと お付き合いしていれば、すぐに気付いたはずだ。

「……… ゆずちゃん?」

「――――― 本当に、いいの。 私には 《レン》がいれば、それで いいのよ」

「何それ ……」

  明らかに、何かを ごまかしていると思うのだが。


  まあ、本人が言いたくないなら、仕方がない。

  無理に聞きださなくても、必要なことなら、とっくに知っているから。


「私はねー、あんたには幸せになってほしいのよ」

「…… 今だって、けっこう幸せはあるよ?」

「だめよ、だーめ。 女としての 《幸せ》は別でしょう?」

「………」


  そうは言われても、答えようが無いのが事実だ。

「私って …… やっぱり、どこか 《問題》だよねぇ……」

「違うわよ。 あんたの場合、いろんな事があり過ぎて、考える 《余裕》が無くなっているだけよ」

「…… 何で、そんな風に言えるの?」

「だーって、あんた 《ベタ甘》のラブストーリー、好きでしょ?」

「それは ……」


  確かに、甘々な展開のものが好みだし、憧れではあるが。

「好きだけど、それは あくまでも 《作り物の世界》の話だし、そんな事が 現実には起きないだろうし、私には ―――――」

「ストップ! その 《単語》、今から一切、禁止よ!」

「え?」

「いーい? 何度も言うけど、あんたは《可愛い》の!」


  出会ってから、ずっと ゆず子だけは そう言い続けてくれるが。

  学生時代に、いろいろと 言われてきた過去があるから、そう思うのは難しい。

「バカね、本心は 可愛いって思ってても、《ブス》とか言っちゃうのが、《男子》ってもんでしょうが」

「…… それだけじゃないと思うけど ……」 

「もー、この私が 《ちゅーしたい》ってくらいなんだから、いいかげん 自覚しなさい!」


  相変わらず、理由づけが 滅茶苦茶な友人である。


「…… あんたは、可愛いの。 見た目もそうだし、中身だって ―――――― 知れば、構い倒したくなるんだから」

  嫌がられたり 逃げ出されたって、追いかけて、追いつめて、最終的には 閉じ込めて。

  自分だけのモノにして、誰の目にも触れさせずに、自分のことだけ 見てほしい。


「レン …… あんたってば、周囲に そう思わせる子なのよ?」

「………… ウソだぁ ……」

「ほ・ん・と・で・す! 今は もう子供じゃないんだから、いい加減 《自覚》して、今日みたいに 男の部屋に簡単に付いて行ってはダメよ?」

「…… はーい ……」

  その件に関しては、自分でも反省していたから、返事は素直に出てきた。


「ねぇ、レン? 焦って、慌てて 《相手》を見つけろって言ってんじゃないのよ」

  ゆず子は、ベッドの上で 再び抱きしめてきた。

「あんたには、あんたに ピッタリな 《王子様》が、絶対いるから。 あんたが好きな、ベタベタに一途で、甘々に 甘やかして、可愛がってくれる人を待ってなさい」

「…… いるのかなぁ、そんな人」


  基本的に、自分は どこか冷めていて、ひねくれ者だ。

  でも、心の奥で ずっと、自分だけを見てくれる、素敵な王子様の存在を、願わなかったわけではない。

  どこまでいっても、根は 《甘えたがり》なのだ。

  甘やかして、いいこ いいこ されたら、きっと おとなしく腕の中で じっとしているだろう。


「あんたは、根本的に《仔猫》気質なのよ」

  尽くすよりも、尽くされて 守られて、《愛される側》の人間。

「…… 数ある 《出会い》の中から、本当に安心して、自分を任せられる男は誰なのか。 選ぶ時が 今に来るわ」

「…… どうだろ」



  こんな自分に 《興味》を持ち、さらに 《恋》をしてくれる人が、いるのだろうか。

  おとぎ話と、理想と、現実と。


  三つが交わる地点は、どうやって探せばいいのか―――。

  この時に自分には さっぱりわからなかったのである。

 お待たせ致しました!


 忙しいのと、心に余裕が無いのとで、バタバタしていた水乃でございます。

 しばらくは更新のペースが 落ちますが、執筆意欲が落ちたわけではありませんので、悪しからず。 時間が上手く調節できるようになれば、またバリバリ 連続更新などしますので、それまでは 気長にお待ちくださいませ。

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