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スピンメモリーズ  作者: 陽向妃夏
第1章
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第1話 招集―invitation―

一年越しの更新です(苦笑)

苦手な冒頭部分を書き終えたので元気いっぱいの私ですが、ストックなんてありません

慣れない砂場に足を取られつつ、ひたすらに歩き続ける隊商があった。

暑くなってきた――それもそのはず、一行はこのムソロディア大陸の南の果てにある【商業都市アリアスザ】へと向かって、照り返る日差しの中、砂漠を横断しているところであった。


「あづいぃぃぃぃぃ……どうしてこんなに遠いのよ!?」


汗を流しながらいらいらと呟いたのは灰色の髪をした少女【セシリア・アドヴィス】である。暑い暑いと愚痴を溢しながらもなんだかんだ足を進めるのを見る限り、まだ余裕はあるようだ。


事の発端はつい先日のことであった。



*


圧巻されるなぁ…。


此処、グレシオーネの西の果てにあるカルティナ領の領主【アグネス・ギルバート】卿の屋敷前にて、見慣れない光景を前に少女は呆然としていた。

第一級魔導師の証である深緑のローブを身に纏い、この辺りではあまり目にすることがない銀髪と似て似つかぬ灰色のストレートの長い髪を風に揺らしている少女……セシリアだ。

一見、場違いな町娘にも見えるが今回はそうではない。他でもないギルバート卿に招かれたのであった。


「本日は如何様な御用件でしょうか?つかぬことをお聞きいたしますが、招待状か何か証明できるものをお願いします」


いざ気を引き締め直し足を進めようとするが、槍を持った厳つい門番に引き止められる。彼のその表情は笑顔であるが、怪しい物と見なされたか目が笑っていない。

そんな門番におそるおそると証明証の変わりを果たすであろう本人の印とサイン入りの手紙を差し出す。


正直、セシリア自身もこれがいたずらではないかと疑っていた。自分の様なまだ16歳に達したばかりの少女に、領主直々から招集がかかると言うことはにわかには信じがたいことである。

これが伝書鳩にて届けられた日には何度も何度も夢ではないかと自分の頬を抓っては見直し抓っては見直しを繰り返したものだ。


が、それは杞憂であったということが直ぐに証明された。


「む…これは失礼いたしました!!確かに我が主の物で御座います」


先ほどの怪しむような笑顔が消えるといそいそと門を開け、少女を中へと招きいれた。態度の急変振りを見ると、一種の愉悦と似たような感覚を覚えた。また、それは招集されたことがいたずらではなかったことへの安堵も含まれているだろう。

初めて訪れる場所への冒険心が揺れ動くが、無事に何事もなくギルバート卿自らセシリアを出迎えた。


「これはこれはアドヴィス嬢。よくぞ来て下さったな」


これまた想像通り、清潔に保たれまるでキラキラと輝いて見える衣服、ほどよくたくわえられた髭、いかにもな威厳あふれる壮年男性であった。彼は女性(・・)をエスコートするかの如く紳士的に礼をすると笑顔で対応する。


「あ、その、ギルバート様ですか!?遅くなってしまい申し訳ございませっ…っ……」


セシリアもそれに遅れて少しあたふたとしながらも膝をつき、頭を下げようとするのだが…あまり慣れない言い方をしたせいか舌を噛んでしまってじんわりと涙を浮かべる。


「はっはっは!無理をして敬語を使う必要はない。礼儀、授業態度はあまり良くないが、勉学・武術の成績は常にトップ。魔法の扱いもムソロディア魔法連盟の試験を見事にクリアし、史上最年少で第一級魔導師号が与えられた…君の事は事前に充分調べさせてもらったからね」


その様子にさも可笑しそうに声をあげ、頬を緩ませながらも言葉を続ける。


「は、はぁ…。違いないですけど、それで私に何の用でしょうか」


――この人はどこまで私のことを知っているのだろう

などと訝しげな視線を送ってしまいつつも本題を聞きに入る。


「まあ、他でもない君にだ。我々が住む国、グレシオーネの国王陛下から、とあるキャラバンの守護の命が与えられた。積荷については私も詳しく教えられていないが、勿論受けてくれるな?」


彼は唐突にセシリアの肩をがっしりと掴むと、真剣な眼差しで最後の部分を強調している、何度も何度も。


「え、え?あ、その…?わ、わかりましたからその手を離してください…」



この時点でノーと言えるほどセシリアの心は強くはなかった…。


*


あの日からかれこれ2週間。馬車に揺られ雨に濡れ、と言ってもその程度で他は特に何事もなく無事順調に進んでいるのだが…だが……


「あいたっ!?……もーなんなのよ!?」


疲労が溜まっているのかいないのか、砂に足を取られ少女がすっころんでしまう。

それに見かねたのか哀れんだのか…目の前を歩く金髪の青年が手を差し伸べる。


「それで何度目だよ…いい加減、気を付けろよな…」


名は【レイン・トラスト】。身長が高く、引き締まった体躯の青年である。セシリアと同じように招集され、彼女とこの2週間を共にしている仲間の一人である。

呆れた表情のレインだが、優しく彼女を支え起こすと……再び彼女を優しく突き倒した。


「ありが…とおっ!?…いつつ……レイン、あんたって奴は……!!!」


間の抜けた声を上げて再び地面へとダイブしてしまう。

そして、次はゆっくりと自らの力で立ち上がるとひくひくと怒りで顔を引き攣らせ。


「へっ、そんな何もない場所ですっころぶ方が悪いんだよ!口を動かす余力があるなら黙って着いて来い!」


「言ったわねっ!?一発殴ってやるからそこを動かないでよ!?」



無邪気(?)においかけっこする二人のそんな様子を見て、若いというのは少々羨ましいな…と微笑ましく見守るキャラバンの大人たちであった。

後書きでは、お話の中で説明しきれなかった用語の補足を書かせて頂きます。


商業都市アリアスザ :ムソロディア大陸の南に位置する砂漠のオアシス都市。


アグネス・ギルバート :カルティナ領を収めているのはこの人。あまり姿を表に出さないことで有名だが…


第一級魔導師:難解な試練を突破した物のみ名乗ることを許された魔導師の階級のひとつ。魔導師に与えられる実質上の最高階級とされているが、その上には更なる力を持つ物が属されてると言うが…?


ムソロディア魔法連盟 :大陸に存在する5つの大国間で築き上げられた、魔導師達の組織。各級の昇格試験や魔導師号を持つ人を名簿にまとめ、管理している。


まだ明かされていない事も多いですが、今語れるのはこんなものです。次回を御楽しみに!

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