真相
俺は第一志望の高校に合格した。
中学の卒業式も終え、違う学校に行く友達と遊んで春休みをすごし、高校の入学式を向えた。
クラスには中学時代のクラスメイトも数人いて、新たな友達もできた。
父さんと健吾さんからのプレゼントとして、店で入学祝いもしてもらった。
中学ほど規則も厳しくなく、部活動も中学より多かったが俺は特に入部することなく、友達との時間を優先することにした。
いろいろ忙しく過ごしていると、いつのまにか夏休みをすぎ、10月になった。
「21日、健吾の店にこれるか?」
10月に入ってすぐのころ、父さんが真剣な表情で聞いた。
普通の平日なので、学校が終わればと俺が言うと、父さんは事務所で待ってるとつげた。
この一年、俺から菜々穂さんのことを聞くことはしなかった。
父さんはきっと話してくれると信じていたから。そして、それが俺の誕生日なんだろう。
俺は机の上においたカレンダーに印をつけた。
21日、学校が終わり俺はまっすぐ店に向かった。
事務所の前で一度深呼吸をし、扉をノックする。返事はすぐに返ってきた。
俺はゆっくりとドアをあけた。
入ると父さんと健吾さんがソファーに座るよううながした。
俺が座ると健吾さんはコーヒーを差し出してくれ、部屋を出ようとした。それを父さんが止めた。
「健吾、悪いけど付き合ってもらえないか?」
緊張が伝わる声で父さんが言う。健吾さんは素直にうなずき、ソファーに座り直した。
父さんはタバコをくわえライターで火をつけた。すいこんだあと、ゆっくりと煙を吐きだし、灰皿にタバコを押し付けた。
「ハルキ、この2年近く菜々穂のことを聞かなかったのはなんでた?」
まっすぐみつめて父さんが聞いた。
「父さんは話してくれるって信じてたから。」
一瞬、父さんの顔が泣きそうになったように見えた。
父さんは懺悔しるようにぽつりぽつりと話しはじめた。
「この話しを聞いたら、お前は俺を憎むかもしれない、いや、憎むと思う。でも、もう隠してはいられない…」
俺は黙って父さんを見つめた。
「セツナイキモチは読んだか?」
俺は黙ってうなずいた。
父さんは何から話せばいいのかわからないように目線をコーヒーカップに向けた。
健吾さんは何も言わずに黙って父さんを見つめていた。
「あの本の菜々穂さんは、俺の知ってる菜々穂さんだよね?」
俺が聞くと父さんは黙ってうなずいた。
「あれは作者の一条ハルキが彼女に贈った本だ。一条ハルキは…」
「知ってる、もういない人だよね。」
俺が父さんの言葉をさえぎると、父さんも健吾さんも少し驚いた表情を見せた。でも、それにとくにふれずに父さんは先を話した。
「あの本は一般的には謎になってるが、全部事実が書かれている。」
俺は父さんを見つめた。
「だから、菜々穂が苦しい恋をしていたのも本当だ。」
まっすぐ俺を見る目はいろんな想いがまじっていた。
懐かしさ、後悔、くやしさ
父さんはゆっくり口を開いた。